2023年(令和5年) 11月10日(金)付紙面より
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羽黒山スギ並木保全とまちづくり協議会(会長・阿部良一出羽三山神社宮司、委員9人)は7日、鶴岡市の羽黒山スギ並木(国指定特別天然記念物)で最新システムを使った危険木のデモ調査を行った。阿部宮司や勝木正人手向地区自治振興会会長ら協議会のメンバーが参加。レーザーを照射してスギの正確な位置を確かめたり、音波で幹内部の密度を調べる測定方法を見学した。協議会では近くスギ並木全体の図面作成に向けた検討に入る。
デモ調査には樹木医の梅津勘一さん(66)=遊佐町吹浦=と松沢春伸さん(40)=山形市六日町、認定森林施業プランナーの塩谷政人さん(46)=酒田市市条=の3人を講師に招いた。
最新システムの一つ「地上レーザー測量」はレーザーを照射してスギの高さや太さ、正確な位置が確認できる。クロマツ林(砂防林)の松くい虫調査にも使われているもので、スギ並木全体を立体的に映像化する。危険木調査の結果を▽良好・緑▽注意・黄色▽危険・赤―といった色で示し、データを積み重ねて更新することも可能だ。
一方、「精密診断機器」は幹の回りにセンサーを取り付け、音波の伝達速度で樹木内部の密度をパソコン画面に映し出す。腐朽空洞率が50%を超えると倒木や幹折れのリスクが高まるという。今回、羽黒山国宝五重塔近くのスギを対象にした測定では空洞率が66%を示した。測定した映像は出羽三山神社社務所でプロジェクターに投影し塩谷さんと松沢さんが解説した。
塩谷さんは「スギ並木全体を『見える化』して管理できるのが地上レーザー測量の大きな特徴。1本ずつの情報が一目で分かる。10日間ぐらいの現地測量で映像化できると思う」と話した。
この日は、羽黒山スギ並木のGPS調査を手掛けてきた梅津さんが危険木の状態について説明した。梅津さんは「現在、スギ並木の生きているスギは540本あるが、腐食が進みいつ倒れてもおかしくない木もある。参拝者の安全を守るためにスギの健康状態を調べてカルテを作ることが重要。お金、人手、時間がかかるという課題はあるが優先順位を決めて保全管理を進めていくことが大切だと思う」とアドバイスした。