2024年11月28日 木曜日

文字サイズ変更



  • プリント用表示
  • 通常画面表示

荘内日報ニュース


日付の新しい記事へページを移動する日付の古い記事へ
  • ニューストップ
  • 最新記事
  • 戻る

2023年(令和5年) 11月12日(日)付紙面より

ツイート

考 国の財源は青天井ではない

 「金は天から降ってくる」はずもなく、「泉のように湧き出る」ものでもない。国の予算は「国民の血税」で賄われる。ところが、国民に金を配るのが政治家の仕事―とでも勘違いしているような大盤振る舞いである。岸田文雄首相が打ち出した経済対策の予算規模は13兆円余になる。

 2022年度の税収が伸びた。「30年ぶりの明るい兆し。税収増分を物価高に苦しむ国民に減税や定額給付で還元し、賃上げにつなげる」というが、多くを国債に頼る。低所得者層への支援は必要だが、高所得者層まで一律とはどうだろうか。

     ■

 3月末の国債や借入金を合わせた政府の債務、いわゆる“国の借金”は約1270兆円。国民1人当たりの換算で1000万円を超し、23年度予算114兆円余の11年分に当たる。

 家庭なら「入るを量りて出ずるを為す」のように、収入に見合った支出をし、借金をしないで家計を維持しようとする。還元は金が余っているので返すもの。しかし政府は「屋上屋を架す」ごとく、借金を積み重ねることをいとわない。税収増分を還元すれば財政赤字は減らず、将来世代が苦しむことになる。

 新潟県長岡市に「米百俵」の逸話が残る。北越戊辰戦争に敗れた長岡藩は食料に窮した。他藩からの見舞いの米百俵を、藩は「食べてしまえばなくなる。教育こそが地域を繁栄させ、人々の生活をよくする」と、米を売って学校設立資金の一部に充てた。金や物は後世に生きる使い方をしなければならない。

 ばらまきのはしりは「ふるさと創生一億円事業」。竹下登内閣が「自ら考える地域づくり事業を」と、全市区町村に使い道自由の1億円を配った。しかし成功例はまれで、意味のない無駄遣いで終わったケースが多い。

 西郷隆盛は「南洲翁遺訓」で、「会計出納は国家制度の基礎。時勢にまかせてルーズに会計を運用しては、結局は国民の重税につながり、国力は疲弊する」と述べている。

     ■

 物価高が収束しない。暮らしが楽でない高齢者世帯、単身での子育て世帯などへの支援は要る。給付金について街では「助かる」「すぐなくなる額」「この政策では将来がより不安になる」―などとの声が聞かれる。

 経済対策は負の財政を生み、今の子どもが大人になってから支払うことになる。そんな政策では子どもの将来が不安になり、若い世代が子どもを産み育てる気持ちになれるだろうか。

 選挙対策とも語られる「我田引水」的な経済対策である。将来世代に負担を付け回しするのは心苦しいという心を、為政者は持ち合わせていないようだ。

論説委員 粕谷 昭二



日付の新しい記事へページを移動する日付の古い記事へ

記事の検索

■ 発行月による検索
年  月 

※年・月を指定し移動ボタンをクリックしてください。
※2005年4月分より検索可能です。

  ■ キーワードによる検索
   

※お探しのキーワードを入力し「検索」ボタンをクリックしてください。
※複数のキーワードを指定する場合は半角スペースを空けてください。

  • ニューストップ
  • 最新記事
  • 戻る
ページの先頭へ

ニッポー広場メニュー
お口の健康そこが知りたい
気になるお口の健康について、歯科医の先生方が分かりやすく解説します
鶴岡・致道博物館 記念特別展 徳川四天王筆頭 酒井忠次
酒井家庄内入部400年を記念し、徳川家康の重臣として活躍した酒井家初代・忠次公の逸話を交え事績をたどる。
致道博物館 記念特別展 第2部 中興の祖 酒井忠徳と庄内藩校致道館
酒井家庄内入部400年を記念し、庄内藩中興の祖と称された酒井家9代・忠徳公の業績と生涯をたどる。
致道博物館 記念特別展 第3部 民衆のチカラ 三方領知替え阻止運動
江戸幕府が3大名に命じた転封令。幕命撤回に至る、庄内全域で巻き起こった阻止運動をたどる。
致道博物館 記念特別展 第4部 藩祖 酒井 忠勝
酒井家3代で初代藩主として、庄内と酒井家400年の基盤を整えた忠勝公の事績をたどる。
致道博物館 記念特別展 第5部 「酒井家の明治維新 戊辰戦争と松ケ岡開墾」
幕末~明治・大正の激動期の庄内藩と明治維新後も鶴岡に住み続けた酒井家の事績をたどる。
酒井家庄内入部400年
酒井家が藩主として庄内に入部し400年を迎えます。東北公益文科大学の門松秀樹さんがその歴史を紹介します。
続教育の本質
教育現場に身を置く筆者による提言の続編です。
教育の本質
子どもたちを取り巻く環境は日々変化しています。長らく教育現場に身を置く筆者が教育をテーマに提言しています。
柏戸の真実
鶴岡市櫛引地域出身の大相撲の元横綱・柏戸の土俵人生に迫ります。本人の歩み、努力を温かく見守った家族・親族や関係者の視点も多く交えて振り返ります。
藤沢周平の魅力 海坂かわら版
藤沢周平作品の魅力を研究者などの視点から紹介しています
郷土の先人・先覚
世界あるいは全国で活躍し、各分野で礎を築いた庄内出身の先人・先覚たちを紹介しています
美食同元
旬の食べ物を使った、おいしくて簡単、栄養満点の食事のポイントを学んでいきましょう
庄内海の幸山の幸
庄内の「うまいもの」を関係者のお話などを交えながら解説しています

株式会社 荘内日報社   本社:〒997-0035 山形県鶴岡市馬場町8-29  (私書箱専用〒997-8691) TEL 0235-22-1480
System construction by S-Field