2023年(令和5年) 11月15日(水)付紙面より
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鶴岡田川地区を中心にした庄内地域の文芸愛好者でつくる「らくがき倶楽部」(佐々木秀子会長)の第53回らくがき文学賞と、大泉散士賞・郷土出版記念賞の授賞式が12日、鶴岡市の新茶屋で開かれた。出羽三山信仰に根差した地元の文化を記録し続け、「出羽三山絵日記」などの著書がある庄内民俗学会会員の渡辺幸任(ゆきと)さん(74)=鶴岡市本町二丁目=に文学賞を贈り、散士賞1点、出版記念賞3点を表彰した。
渡辺さんは熊本県栖本町(現天草市)出身。1993年から出羽三山にあった「掛け小屋」の写真収集と小屋の生活の取材を始め、翌94年4月から荘内日報に「出羽三山絵日記」のタイトルで投稿。これまでの本数は291編に上る。投稿の原稿をまとめた「出羽三山絵日記」のほか、「出羽三山信仰と月山筍」を出版している。らくがき倶楽部会員。
前年度に出版されたさまざまな分野の郷土の作品から選ぶ、「大泉散士賞」は半澤活(たつき)さん(63)=鶴岡市羽黒町十文字=の「いのちのシナリオ―『あのよびと』と私の不思議な12の物語」、郷土出版記念賞は酒井天美さん(78)=同市家中新町=の歌集「四季の恵」、島田高志さん(66)=同市上畑町=のフォト俳句小景集「庄内彷徨」、櫻井田絵子さん(65)=同市大山二丁目=のエッセー集「月のような山 あの頃に戻る時間」に贈られた。大泉散士賞(鶴岡書店組合賞)は同倶楽部創立期メンバーで、庄内地域の出版文化の礎を築いた大泉散士さん(本名・阿部整一)の功績をたたえて2年前に創設。半澤さんには鶴岡書店組合の阿部等組合長から賞状が手渡された。
授賞式に先立ち、同倶楽部創設メンバーの一人で初代会長を務め、先月亡くなった畠山弘氏に出席者全員で黙とうをささげた。佐々木会長はあいさつで、各受賞者の功績と出版の労をたたえた後、畠山氏の功績にも触れ、「ご遺族と相談した上で畠山先生をしのぶ会を開き、功績を後世に伝えるため、先生の名を冠した賞の創設も考えたい。倶楽部は来年に創立60周年を迎える。倶楽部の発展のためにも会員拡大を図っていきたい」と述べた。
来賓代表で荘内日報社の橋本政之社長がお祝いの言葉を述べ、各受賞者がスピーチ。渡辺さんは「さまざまな人々との縁があって30年にわたって取材、執筆ができている。荘内日報掲載の紙面が名刺代わりとなって、不審者と間違えられずに取材でき、助かった」と述べた。
らくがき文学賞は、同倶楽部が1970(昭和45)年に制定し翌71年から表彰を行っている。荘内日報に掲載された随想や随筆、紀行文、紙面で紹介された出版物などの中から最も優れていると認められた作品に贈られており、これまでの受賞者は36人(うち1人は特別賞)。授賞式には受賞者と関係者、倶楽部メンバーら約20人が出席し、式後には祝賀会を開き、受賞者を囲んで歓談した。