2023年(令和5年) 11月17日(金)付紙面より
ツイート
耐震補強と併せて大規模な修復工事のため2020年10月から休館している酒田市中町一丁目の国指定史跡「旧鐙屋(あぶみや)」で23日(木)、小学生と保護者を対象にしたワークショップ「旧鐙屋を作ろう」が開かれる。施工に従事している大工の技術を間近で見学するとともに、組み立て作業を体験するもので市が初めて企画。広く参加者を募集している。
鐙屋は江戸初期の1608年、山形藩主・最上義光から屋号を与えられ、寛永年間(1624―44年)には酒田町年寄役となり、酒田三十六人衆の筆頭にも数えられた。その繁栄ぶりは、井原西鶴「日本永代蔵」に「北の国一番の米の買入れ、惣左衛門といふ名をしらざるはなし」と紹介された。
現在の建物は1845年4月の「甘鯛火事」で被災後、再建されたもの。野地板の上に杉皮を敷き、それを石で押さえた「石置杉皮杉葺屋根」は風が強い風土に根差した、酒田の典型的な町屋造りとされる。1984年5月に国史跡に指定された。86年には所有者の鐙谷家から市が土地・建物を取得し、翌年から一般公開。日本遺産「荒波を越えた男たちの夢が紡いだ異空間~北前船寄港地・船主集落」のストーリー構成文化財の一つに名を連ねる。
90年度から8カ年をかけて建物全体の大規模改修を実施。前回の改修から20年余が経過し、専門家から震度5以上の地震で倒壊する可能性が指摘されている上、2019年6月の本県沖地震では柱や"梁(はり)に亀裂が入った。今回の大規模改修では、傷みが激しい屋根全面約700平方メートルをふき替え。さらに屋根の軽量化、土壁の一部構造用合板置き換え、基礎の新設、柱の折損防止措置といった耐震補強を施している。工事の完了は25年度末を予定。修復の状況と今後の工程について広く市民から理解してもらおうと、市は昨年10月に特別公開を実施。市職員のガイドで市民らが町家造りについて理解を深め、往時の繁栄ぶりに思いをはせた。
今回のワークショップは工事見学と体験会の2本立て。午前9時半にスタートし、いずれも地元の仲條建設(門田)とモトタテ(宮海)の社員たちが講師となり、参加者は修復技術の解説を聞きながら実演を見学するほか、カンナとのこぎりを使って組み立てに挑戦する。募集は小学生と保護者5組。費用は1人100円(保険料)。申し込みは20日(月)までに市文化政策課文化財係=電0234(24)2994、または電子メール=bunkazai@city.sakata.lg.jp=へ。