2023年(令和5年) 11月26日(日)付紙面より
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画家でアートプロデューサーの鈴木掌(つかさ)さん(37)の特別企画展が鶴岡市黒川の「黒川能の里 王祇会館」で開かれている。ライオンなどアフリカの動物をテーマに描いた色彩豊かなアクリル画作品の数々とともに、鈴木さんの原点となるアフリカの子どもたちが描いた絵画が展示されている。
鈴木さんは茨城県つくばみらい市出身。幼いころから芸術分野、音楽、ダンス、ファッションなどさまざまな分野に興味を持ち、ファッションの専門学校に進んだ。卒業後、2011年から青年海外協力隊として、13年から外務省の日本NGO連携無償資金協力事業の一環でルワンダに滞在。現地で服作りを志す若者たちにボランティアで洋裁を指導し、15年まで200人以上のテーラー(仕立屋)を育てた。
スキルを獲得した若者たちが貧困から脱出する姿を見て、鈴木さんは「ルワンダの人たちをプロデュースして世界中とつなげたい」と考えるようになった。16年に帰国した後、絵画制作を本格的に開始。アフリカの動物や人々、東アジアの龍、鳳凰などをテーマにした作品で注目されている。
そうした中、ルワンダの子どもたちに絵画を指導する教育プログラム「heART」(ヒーアート、heartとARTを合わせた造語)を立ち上げた。優秀な作品は日本や米国で販売し、売り上げを子どもたちに還元している。
鈴木さんはこれまで黒川能最大の祭り・王祇祭など黒川地区を2回訪れており、鶴岡市のプロジェクト・マネジメント会社「青」の後藤和彦代表の紹介で今回、庄内地域での初の個展を開催した。
会場には鈴木さんが描いたライオンやサイなどアフリカの動物や、以前羽黒地域を訪れた際に描いた出羽三山神社の開山にまつわる八咫烏(ヤタガラス)など70点余りが展示された。ライオンの絵は一つ一つ表情が異なり、たてがみが太陽のように広がっているものなど独特の世界観に引き付けられる。
また、ルワンダの子どもたちが描いた作品約35点も同時に展示された。1点だけが額装されており、鈴木さんは「デビットという少年の作品で、彼は生まれつき重病を背負っていた。短い生涯をもう閉じてしまったが、彼の絵はパワーがある。自分もかつて絵に救われた経験があり、プログラムが少しでも現地の子どもたちの救いとなればと思って続けている」と話した。
展示は来月3日(日)まで(水曜定休)。展示時間は午前9時から午後4時半まで。入場無料。