2023年(令和5年) 12月1日(金)付紙面より
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鶴岡市内の若手料理人を対象とし、在来作物や郷土料理の再認識をテーマとした「次世代ガストロノミーコンペティション」の最終審査が28日行われ、「芋ごぼたもち」を使った料理で臨んだグランドエル・サンの佐藤渚さん(26)がグランプリに輝いた。
国内唯一のユネスコ食文化創造都市・鶴岡をアピールする人材発掘につなげようと、鶴岡食文化創造都市推進協議会(会長・皆川治鶴岡市長)が2019年度、21年度に行った「鶴岡No.1次世代料理人決定戦」に続いて開催。3回目の今回は、ユネスコ食文化創造都市認定から来年で10周年を迎えるのを前に、料理人の技術向上や創造性に加え、在来作物や郷土料理に視点を置き、食材の生産者や郷土料理を継承する人を指南役としてチームでの審査とした。
コンペティションには8チームが参加。1次、2次の審査を通過した5チームが最終審査に臨んだ。当日は同市遠賀原のアル・ケッチァーノアカデミーで、同店オーナーシェフの奥田政行さんや山形大学農学部の江頭宏昌教授、鶴岡市出身の料理研究家・荻原和歌さん、料理王国副編集長の奥紀栄さんら9人の審査員が調理・実食審査。夕方からは同市錦町のエスモールで市内の小学4―6年生10人が特別審査員となり、試食して一番おいしいと思う料理に投票した。
午後6時45分から東京第一ホテルで行われた表彰式にはファイナリストのほか、文化庁参事官付専門官の寺澤百花さんら来賓、料理人の同僚や家族、食文化に興味のある市民ら約100人が参加。グランプリを受賞した佐藤さん、準グランプリの齋藤翔太さん(40)=庄内ざっこ、審査員特別賞(3位)の水口拓哉さん(43)=すたんど割烹(かっぽう)みなぐち=に賞状とメダル、副賞が手渡された。
グランプリを受賞した佐藤さんは、同僚で郷土料理に詳しい佐藤八重さんを指南役に同市羽黒町松ケ岡地区に伝わる郷土料理「芋ごぼたもち」を使った「いもごぼたもち切り株見立て~荘内藩士開墾の歴史と庄内の景色を残して~」を出品。米とサトイモを炊いて一緒につぶしたものを、味付けした豚肉や庄内麩で巻いたものと、シルクジュレで絹産業の里、白じょうゆに漬けた卵黄で庄内の夕日を表現するなど、一皿に庄内の歴史と文化が落とし込まれていることが高く評価された。佐藤さんは「料理だけでなく、人への思いやりを教えてくれた上司が定年になるのに、食で恩返ししたいと参加を決めた。いろいろな人の助けや協力に感謝する」とし、特別審査員の小学生に向けて「年齢や経験、性別などは関係なく、思い続けていれば必ず報われる日が来るので、目標に向かい頑張ってほしい」と語りかけていた。
1―3位の料理人は、これから2年間、鶴岡「食のアンバサダー」に任命されるほか、グランプリの佐藤さんはユネスコ食文化創造都市の大分県臼杵市への研修旅行が贈られる。また、参加した全8チームに大会特別賞が贈られた。
一番おいしいのは… 小学生が特別審査員
3回目となった「次世代ガストロノミーコンペティション」では、初めて小学生が試食審査を行った。食に精通した大人だけでなく、どの世代にも受け入れられる味を選出しようというもので、市内の小学4―6年生から公募した。
審査は、料理の見本を展示した上で、料理を載せて番号を付けたレンゲから味わい、一番おいしいと思った番号を投票した。
大山小6年の伊藤泰良君は「どれも初めての味わいだった。自分の好みの味を選んだ」と話し、朝暘四小6年の瀬尾燕君は「歯応えのある食感の良いもの」を、同小4年の熊田唯七さんは「全ておいしかったが、子どもでも食べやすいもの」をそれぞれ選んだと話した。