2023年(令和5年) 12月2日(土)付紙面より
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鶴岡市西目で2人が犠牲になった土砂崩れ災害で、市は先月28日、避難世帯への避難指示を解除した。災害発生から11カ月、土砂崩れ現場の危険な斜面を切り崩し、地滑り観測機器と警報装置を設置して監視体制を整備したことでの解除。避難している4世帯13人のうち、3世帯が年内に自宅に戻る意向を示し、1世帯は考慮中という。
避難指示は解除されたが、復旧対策工事の進み具合はまだ途中段階。現場付近の県道、市道の通行止めは、道路を埋めているがれきなどの撤去が年末まで続く見通しだ。避難住民は日常の生活を奪われ、1年近く不便をかこってきたが、ようやく住み慣れた家での生活再建が始まる。
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土砂崩れは平地にこんもりと盛り上がった円形の山の南斜面が、山頂から高さ20~30メートル、幅100メートルにわたって崩落した。周辺の住民は「まさかこの場所で」「今まで災害が起きたことがない」などと語っている。その言葉からすれば、災害はいつどこで発生するか予測できず、しかも突然襲ってくる。庄内にはそのような土砂災害の危険性のある急傾斜地が多い。
現地のボーリング調査などの結果、地質の風化に加え、雨水や雪解け水の地下浸透で地盤が緩くなったことなどで崩落につながったとみられている。対策工事は、地質がもろくなっている斜面を切り崩し、土砂崩れの原因につながったとみられる地下水を抜くため、横ボーリングによって穴を開け、集水管を挿入して排水する対策を施した。
一方、避難指示の解除は、今後災害発生の心配がなくなるということとは異なるのではないか。現地に設置された地滑りの観測機器と警報装置の観測精度に信頼がおけるとしても、住民にも日常生活の中で、細心の注意と観察力が求められるのではないか。土砂崩れには「崖や急傾斜地に割れ目が見えたり、水が湧き出る」などの前兆がある。普段見ている景色に慣れてしまうことなく、周辺のわずかの変化を見落とさない観察力を持ちたい。
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庄内は県内でも土砂災害が発生しやすい急傾斜地が多い。県が今年春調査した県内671地点のうち、庄内は324カ所で48%を占める。中でも鶴岡市が210カ所と多いのは、広域合併で広大な中山間地域を持つ市域となったため。危険な地域で生活している市民が多いことになる。
普段見慣れていて「何でもない」と感じている場所にも危険が潜んでいるかもしれない。自然は人知を超える力を秘めている。自分が住んでいる地域のハザードマップを見れば、何が危険であるか、一通り知ることができる。危険度、避難路と避難場所を確認するなど、ハザードマップを読み解く力を備えることも、わが身を守ることにつながる。