2023年(令和5年) 12月2日(土)付紙面より
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開館40周年を迎えた酒田市の土門拳記念館で、市名誉市民で世界的写真家の故土門拳さんの足跡をたどった回顧展「土門拳 肉眼を超えたレンズ」が開かれ、リアリズムにこだわった報道写真のほか、「異色」といわれた前衛作品などが並び、多くの来館者が引き込まれている。
記念館は日本初の写真専門美術館として1983年10月に開館。回顧展は、全国4つの美術館で昨年開催された巡回展の作品群を再構成した上、巡回展には含まれなかった作品を合わせ計約150点を年代順に紹介している。
11部門に分けて展示。報道写真家として活動を始めた「山女(やまめ)釣り 伊豆」などの伊豆の人々を撮影した作品に始まり、「出征 歓送風景」「飛行少年団少女部員 少女たちの訓練」といった戦時下の報道写真、20世紀の日本を代表するドキュメンタリー「ヒロシマ」「筑豊の子どもたち」が続く。主要展示室中央には1940年代に発表し、異色な作例といわれた前衛作品「肉体に関する八章」「皮膚に関する八章」が並び、リアリズム作品の中で強い印象を放っている。
代表作「古寺巡礼」の中から「浄瑠璃寺本堂吉祥天立像」「平等院鳳凰堂夕焼け」なども展示。来館者たちはひとつひとつの作品を食い入るように見つめていた。
展示は来年1月14日まで。企画展示室2では第42回土門拳賞を受賞した船尾修さんの作品展「満州国の近代建築遺産」も同時開催している。