2023年(令和5年) 6月21日(水)付紙面より
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東北公益文科大学(酒田市)による地域連携シンポジウムの番外編「北前船の街・酒田を歩き、土門拳の画角で庄内の未来を撮影する会」が19日、同市の舞娘(まいこ)茶屋「相馬樓」をメイン会場に開かれた。スマートフォンを手にした参加者が日和山・台町かいわいを撮影して回り、北前船の往来で栄えた酒田の街について再認識したほか、有識者による座談会で文化・芸術といった人を引き付ける街の魅力について考察した。
有識者座談会 文化・芸術意見交わし考察
経済・産業界との連携を深め、これからの地域産業の姿をデザインするとともに、その実現に必要なものを探ろうと公益大が今年2月からシリーズで開催しているシンポジウム。これまで3回にわたって「カーボンニュートラルを軸にした地域デザイン」を共通テーマにパネル討議を実施してきた。今回はその番外編と位置付け、「身をもって体感するセミナー」として参加者から街の文化・歴史を知ってもらい、芸術的要素を見る目を養ってもらおうと、スマホで写真を撮りながらの街歩き、座談会の2本立てで行った。
この日は、公益大の学生や一般市民ら計約30人が参加。街歩きを前に、小林剛也県総務部長が今回のシンポジウムの趣旨を説明したほか、土門拳記念館の王憶冰学芸員が同市出身の世界的写真家・故土門拳さんの作品の特徴、温井亨公益大教授(風景計画、まちづくりなど)が酒田の街のつくりと歴史に関し、それぞれ解説した。
参加者はかいわいを歩きながら、光丘神社本殿裏手にある「官軍墓地」、小幡楼から望む酒田港、ひっそりとたたずむ旧光丘文庫とあずまや、山王くらぶで開催中の傘福展、下日枝神社随神門など思い思いにスマホのカメラ機能で撮影。相馬樓に戻って写真を披露し合い、酒田の街の魅力について意見を交わした。
酒田舞娘の演舞に引き続き小林部長の進行で藤原弘道国土交通省酒田港湾事務所長、芸妓の小鈴さん、王学芸員、温井教授による座談会が行われた。藤原所長は「酒田港を盛り上げ、街を元気にするための仕事をしている」と述べ、酒田港におけるクルーズ船の寄港状況、カーボンニュートラルポートなど脱炭素化に向けた取り組みを解説。小鈴さんは「相馬樓楼主を務める新田嘉一平田牧場グループ会長は『文化を残せない民族はいずれ滅びる』と口にする。次代を担う子どもたちに伝統文化を伝えていきたい」と話し、相馬樓を舞台にした歌舞伎の18代目中村勘三郎さん(故人)と新田会長のエピソードを紹介した。
王学芸員は全国的に写真店が減少している現状を憂い、「記念館が市民らを対象に公募している『私のこの一枚』の出品数も年々減っている。写真、土門さんの作品、土門拳記念館に若い世代からもっと興味を持ってもらいたい」と。温井教授は以前、酒田商工会議所などと共に企画・運営していた市内を歩いて探索する「ぶら探酒田」に触れ、「今回のシンポジウムの先駆けのようなもので、文字通り『探検』。多い時には200人も参加した。街の魅力再発見には歩いて回るのが一番」と語った。
公益大によると、座談会の模様はオンラインでも配信し、15人が参加したという。
2023年(令和5年) 6月21日(水)付紙面より
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バレーボールVリーグ女子1部(V1女子)に昇格した酒田市のプレステージ・インターナショナルアランマーレの県スポーツ特別賞授与式が19日、県庁で行われた。吉村美栄子知事は「県民に元気を与える活躍を見せてくれた」とたたえ、木村友里主将が「ファンの皆さんと共にチームを築き上げてきた中で、一つの大きな形になった」と振り返った。
授与式にはアランマーレの西尾博樹ゼネラルマネージャー、北原勉監督、木村友里主将、草島華穂副主将、伊藤摩耶選手、菅原里奈選手、オケケアル・メソマチ選手が出席。吉村知事からトロフィーなどを受け取り、V1昇格を報告した。
アランマーレは2022―23V2女子で初優勝。4月に行われたV1下位との入れ替え戦を制し、初の昇格を決めた。
9期目を迎える北原監督は「創部時から『地元に愛されるチーム』を掲げて頑張ってきたので、大変うれしい」と受賞を喜んだ。木村主将は「より頑張らなければと思った。来季は今まで以上に厳しい戦いになるが、チーム一体となって臨みたい」と意気込んだ。
県スポーツ特別賞は、県内のスポーツ振興に貢献した個人、団体に贈られる。モンテディオ山形(08年)、プロ野球・ソフトバンクの長谷川勇也さん(13年)と阪神の中野拓夢選手(22年)に続き4例目。
2023年(令和5年) 6月21日(水)付紙面より
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景観・歴史遺産・自然環境・エネルギー創出・地域活性化など、多方面の問題が絡む難しい問題だ。一方は悠久の時を経て築かれ、もう一方は将来の社会にどうしても確保しなければならない。どの問題も人々の暮らしと関わる事柄であることから、意見の相違も生じる。どちらの考え方の比重が重いかとの判断は、安易にはできない。解決を模索するいい道筋はないものだろうか。
鶴岡市加茂地区の風力発電事業計画のこと。市が事業者に計画の中止を申し入れると、加茂の住民は市議会に「中止申し入れ撤回と調査の継続を求める請願」を出した。計画に反対する市民団体も署名活動をしている。動きは三者三様だが、収拾に向けた市の調整力が求められるところだ。
◇ ◇
風力発電は、東京の民間会社が計画。加茂地区南側の山中に高さ140?180メートルの風車を最大8基建設する。ところが、計画地北東側の大山上池・下池は、国際的に重要な湿地を保全する「ラムサール条約」の登録地。開発による土砂流出、景観、騒音、野鳥への影響を不安視する声もある。
市に中止申し入れ撤回を求める加茂の住民は「少子化で小学校がなくなり、高齢化が進むばかり。風車建設で林道が整備され、地域の活性化にプラス効果が生まれるのではないか」と期待を寄せた。だが、加茂地区の住民が「市が中止申し入れを発表したのは、寝耳に水だった」と請願に記していることは、市が地元に十分な説明をし、理解を得ないで中止申し入れをしたという事ではないだろうか。
計画に反対する市民団体が14日、皆川治市長に「施設設置に関する市のガイドライン(指針・指標)見直し」と併せ、「市側が加茂地区の住民にしっかり説明してほしい」との要望もした。加茂地区住民も15日、事業者から「事業計画の検討状況とスケジュール」などを聞いたが、事業者は環境影響評価など、綿密な調査をして地元に丁寧な説明をする考えを示している。
◇ ◇
反対を訴える市民団体が県内外から約9000人の署名を集め、市に詳しい説明を求める加茂地区への住民も2023人の署名を集めた。加茂地区の説明について皆川市長は「(事業中止を求めた)市の考えはホームページにも掲載している。(賛否の)意見が分かれ、衝突をあおりかねないので、慎重に考えたい」との姿勢だ。
計画に賛否が分かれれば、接点を見つけづらいこともあるが、同じ市内で意見が割れることは好ましいことではない。市長は16日の市議会一般質問で「市との対話を望む方がいれば、真摯(しんし)に対応する」と答弁した。「(中止申し入れ理由は)ホームページにも掲載した」ではなく、加茂地区の人たちが風力発電にどのような希望を抱いているのか、じっくり意見を聞いてみるべきではないだろうか。
2023年(令和5年) 6月21日(水)付紙面より
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ロサンゼルスでNBA(北米プロバスケットボールリーグ)の有名選手らの料理を手掛けている創作シェフ・マットローネックさん(29)が19日、鶴岡市立加茂水族館の魚匠ダイニング沖海月を訪れ、須田剛史料理長(47)からタイの神経締めや、すしの握り方を教わった。
日本料理を学ぼうと鶴岡食の名誉大使・須田料理長の元を訪ねた。テーマは鮮魚の扱い方。いけすで蓄養しているマダイをたもですくい、鮮度を保つ神経締めにチャレンジした後、三枚おろしにして刺し身やすしに仕上げた。
須田料理長の繊細で鮮やかな包丁さばきを間近に見たマットさんは「アメージング」「アンビリーバボー」を連呼。タイの皮を素早やくきれいに剥いたり、刺し身の切り方を変えるだけで味に違いが出ることを知った。
マットさんは「アメリカでは日本のように細かな手順を踏んで魚を扱うことをしない。今日はとても勉強になった。また来月ここに来て、もっといろんなことを学びたい気持ち」と笑顔を見せた。
須田料理長は「食材に感謝し、大切に扱うことが和食料理人としての心得。日本の料理文化に興味と関心を持っていただき、とてもうれしい。今日の出会いを大切にしたい」と話した。
マットさんによると、ロサンゼルスでは日本食がブーム。帰国後は今回学んだことを創作料理に生かしたいという。
20日は羽黒山頂の出羽三山神社・斎館で精進料理を食べ、食材を生かす和食文化に触れた。
2023年(令和5年) 6月21日(水)付紙面より
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飽海三名瀑に数えられる酒田市北俣の「十二滝」に覆いかぶさるように倒れた大木を撤去し景観を取り戻そうと、NPO法人「ひらた里山の会」(同市、佐藤忠智代表理事)が19日、倒木の撤去作業を行った。
十二滝は▽水汲み滝▽南滝▽九の滝▽てんつき滝▽抱き帰りの滝▽天狗滝▽火揚滝▽芯の滝▽白紙垂の滝▽蛇の滝▽河原滝▽合格滝―の大小12段で構成される。変化に富んだ美しい情景は「日本の滝100選」にも選ばれ、夏場に多くの人が訪れる観光スポットとなっている。佐藤代表によると、今年3月初旬、雪や雨の影響で周囲の地盤が緩み、「河原滝」右上の一部などで土砂崩れが起きたという。同会による観察の際、ケヤキの大木が「河原滝」と「芯の滝」の前に横倒しになっており、観光客が増えてくる時期を前に市から整備委託依頼を受け今回、撤去作業に当たった。
この日は午前8時から会員ら6人が集まり、ケヤキの切断、撤去作業を行った。木をチェーンソーで小分けし、ワイヤなどを使って河川敷に運んだ。土砂が流れ出し滝つぼ近くの川幅も狭く変形しており、土砂崩れの影響が少なくないことが見て取れる。
佐藤代表は「自然に起こることは止められないが、見に来てくれる人のためにも、景観は維持していきたい」と話した。
撤去したケヤキは今後再利用し、滝が見える位置にベンチとして川岸に設置するという。