2024年(令和6年) 1月21日(日)付紙面より
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国の文化審議会は19日、「庄内の笹巻製造技術」を登録無形民俗文化財とするよう、文部科学大臣に答申した。ササで巻いた形が地域で異なるなど多様で、灰汁(あく)を使った独特の製法も伝承されている特色が評価された。無形民俗文化財の登録制度は2021年に文化財保護法改正で新設され、これまでに4件が登録されている。答申通り登録されれば、東北地方で初となる。地元関係者らは、伝統的な食文化の継承や全国への発信につながると期待している。
庄内地方の笹巻は、ちまきの一種。ササの葉で包んだ餅米を煮て作り、黒蜜やきな粉をかけて食べる。鶴岡市など庄内南部では灰汁に浸した餅米を使い、煮汁にも灰汁を加えるのが特徴。灰汁の作用で葉の色素が餅米に移って黄色くゼリー状となり、独特な色と風味が生まれる。酒田市など庄内北部は灰汁を用いず、白い笹巻が一般的。形状や巻き方も三角形や四面体、タケノコ形など地域によってさまざまある。
江戸時代1788年の鶴岡の様子を記した文献に灰汁を使った製造法の記録が残り、「鶴岡の笹巻」は昨年3月、文化庁の「100年フード」にも認定されている。端午の節句や七つ祝いなどの儀礼や年中行事の際に各家庭で作って食べられてきたが、現在は産直施設などで季節を問わず販売されている。
昨年3月に鶴岡市が作成した笹巻に関する報告書で、調査・執筆を担当した山形大農学部の江頭宏昌教授は「庄内の狭い地域の中で多様な形状が伝承されていることや、歴史性が評価された」と話す。灰汁を使った笹巻の由来については諸説あるが、鹿児島や熊本など南九州地方に似た製法の「あくまき」が伝わることから、江頭教授は江戸時代初めの加藤忠廣公(加藤清正公の嫡男)の庄内配流との関連性にも注目する。灰汁を使った黄色の笹巻は、ポリフェノールによる健康機能性も期待できるという。
産直あさひ・グーや学校給食向けに笹巻を作っている鶴岡市の伊藤ます子さん(74)は「答申は誇らしく、うれしく思っている。最近は家庭で親が作らないため、子どもも食べる機会が少なくなった。自分たちが受け継いでいかなければと、責任の重みも感じている」と話した。
鶴岡市は2月10日(土)、JR鶴岡駅前のフーデバーで、笹巻作りの体験会(500円、予約制)や笹巻の振る舞いなど文化財答申記念イベントを開催する。問い合わせは市食文化創造都市推進課=電0235(35)1185=へ。
2024年(令和6年) 1月21日(日)付紙面より
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洋上風力発電の導入に向けた検討が進み、再エネ海域利用法に基づく「促進区域」となっている遊佐町沖について経済産業省と国土交通省は19日、占有指針を定め発電事業者の公募を開始したと発表した。受け付けは今年7月19日(金)までで、両省によると、審査や評価を経て選定結果の公表は同12月になるという。
全国的な洋上風力発電導入機運の高まりを受けて県は2018年、「県地域協調型洋上風力発電研究・検討会議」と「遊佐沿岸域検討部会(遊佐部会)」を設立して議論を開始。「海洋再生可能エネルギー発電設備整備促進区域指定ガイドライン」に基づき両省は20年7月、事業開始に必要な3段階のうち最初の段階となる「一定の準備段階に進んでいる区域」に遊佐町沖を選定した。
21年9月に具体的な検討を進める2段階目の「有望な区域」の指定を受け翌22年1月、国や県、町、漁業関係者らによる法定協議会を設置。協議を進め昨年10月、「促進区域」となった。想定海域は、鳥海国定公園区域を除いた上、沿岸漁業に配慮し、海岸線から1カイリ(約1・8キロ)離れており、南北約8・3キロ、沖合約5キロに広がる。着床式で発電出力は45万キロワットを見込む。
事業者は▽事業計画の迅速性▽電力の安定供給▽関係行政機関の長との調整能力▽周辺航路、漁業などとの協調・共生▽地域経済波及効果―などを総合的に評価して選定。事業者は同法に基づき最長30年間の海域占有が認められる。
本県ではこのほか、酒田市沖が昨年10月に「有望な区域」の指定を受け、さらにエネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)による洋上風力発電の基本設計に必要な風況や海底地盤に関する調査の対象区域にも選定。県は、港湾法に基づく酒田港の「海洋再生可能エネルギー発電等拠点港湾(基地港湾)」指定に向けた取り組みを進めている。
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国指定重要文化財「旧西田川郡役所」の再開に向けた鶴岡市の致道博物館(酒井忠順館長)のクラウドファンディング(CF)が19日、目標額1000万円を達成した。20日午前10時現在の支援総額は1052万円(支援者253人)となっており、目標額を引き上げる「ネクストゴール」へ向け、今月31日まで支援を募っている。第1目標達成に酒井館長は「地元をはじめ全国各地から幅広い支援を頂き感謝しかありません」と話している。再開は4月下旬を予定する。
旧西田川郡役所は1881(明治14)年に創建された擬洋風建築の建物。現在の鶴岡商工会議所会館の場所にあったもので、1972(昭和47)年に同博物館敷地内に移築された。山形県沖地震で被害を受け、災害復旧の応急耐震補強・修理工事のため2021年6月から公開を中止していた。復旧工事は昨年5月まで続いた。
再開に向けた展示などに自己資金で少なくとも1500万円ほどが必要なため、先月からCFに挑戦。調達資金は、日本を代表するドールハウス作家の故・礒貝吉紀さんから寄贈された作品や極小雛(ひな)道具研究家・川内由美子さんから寄贈された欧州のアンティークミニチュア洋食器、庄内の歴史を伝える各種考古資料などの展示、被雷して壊れた建物上部の時計台にある大時計(直径90センチ、電気式)の修理に活用する。
今回のCFは設定した第1目標額に届かない場合は、支援金が手元に入らない「オールオアナッシング」方式で挑んでいる。全国からの応援メッセージとともに、100万円、50万円、30万円など高額の支援も寄せられており、酒井館長は「止まったままの大時計と旧西田川郡役所の展示が再始動するというテーマに、多くの方々から共感を頂いた。期待に応えられるよう再開の準備を進めたい」と話した。同博物館は来月から準備を本格化させる。
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鶴岡市立加茂水族館魚匠ダイニング沖海月は2月1日からフグづくしのお膳「万福(まんぷく)御膳」の提供を始める。3月いっぱいまでの期間限定。珍しいフグの白子や3年以上熟成させた卵巣のお茶漬けが味わえる。
旬を迎えたフグ料理を楽しんでもらおうと沖海月の須田剛史料理長(48)が2月9日の「ふぐの日」に合わせて豪華なお膳を考案した。内容は庄内浜の天然トラフグを使った「てっさ」「から揚げ」「手まり寿司」「フグの口の蒸し物」「フグひれと身が入った土瓶蒸し」「フグ汁」など10品以上。特に今回は塩漬けした後、さらに酒かすに漬けて完全に毒を取り除いた卵巣(ゴマフグ)をアクセントにしたお茶漬けに、白子の酢の物をラインナップに加えたのが須田料理長の「イチオシ」だ。これまで3万尾以上のフグをさばき、社団法人新日本調理師会の「ふぐ調理日本の名工」に選ばれた須田料理長がなせる技といえる。
フグの白子は弾力がある食感と濃厚な味が口の中に広がる。卵巣をご飯にのせたお茶漬けは金沢名物というが、県内の飲食店では見られない逸品。庄内産ボラのからすみを入れて「コラボ感覚」も楽しめる。お膳は前日の予約で税込み5000円。平均的に飲食店で「てっさ」は3000円、土瓶蒸しだけで1500円するだけに、かなりお得な価格設定だ。須田料理長は「旬のこの時期に幸せを呼ぶフグ料理を満喫していただければ」と話している。
「万福御膳」のほかに沖海月では「ふぐの日」の2月9日から12日までの4日間、「ワンコインてっさ」(税込み500円)と受験生の志望校合格を願った「招福合格御膳」(同2000円)、テイクアウトの「とらふぐてっさ」を通常3000円を2000円にして販売する。問い合わせは沖海月=電0235(64)8356=へ。
2024年(令和6年) 1月21日(日)付紙面より
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酒田市の太鼓団体「酒田北前太鼓振興会」(小松勝会長)のメンバーが19日、同市の県立酒田特別支援学校(五十嵐仁校長、幼児・児童・生徒97人)を訪れ、一緒に太鼓を打ち鳴らすなど交流した。
幼児・児童・生徒から酒田の伝統文化に触れてもらうとともに、太鼓の響きやリズムを楽しんでもらおうと、同振興会と酒田ライオンズクラブ(井上義裕会長)の協力で開いている。コロナ禍では中止が続いており、開催は4年ぶり。
この日は同振興会の小松会長らメンバー4人が太鼓を持参して同校を訪問。中学部を皮切りに、高等部、小学部低学年、聴覚部・小学部高学年と4回に分けて交流した。このうち、中学部の交流には生徒約20人が参加。はじめに同振興会が、港に船が入ってくるのを歓迎する楽曲『入船祝い』を披露。続いて、生徒たちがばちを握り、同振興会メンバーの指導で和太鼓演奏にチャレンジするなど和やかに交流した。2年生の塚形理央さんは「迫力があってすごかった。楽しかった」と話していた。