2024年(令和6年) 1月26日(金)付紙面より
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元東北経済産業局長で政策研究大学院大教授の根井寿規さんを招いた講演会が21日、鶴岡市の東京第一ホテル鶴岡で開かれ、世界のエネルギー情勢や気候変動対策に基づくクリーンエネルギー技術の商業化などについて解説した。
地元経済人による「JIMOTO研究会」(代表・青木政樹青木建材社長)が、「勉強会」として企画。地元の企業経営者ら約50人が参加した。根井さんは1981(昭和56)年に東京大理学部卒、旧通産省(現経済産業省)入省。資源エネルギー庁石油精製備蓄課長、東北経済産業局長、内閣審議官、石油天然ガス・金属鉱物資源機構理事などを歴任し、2014年6月から現職。
ロシアによるウクライナ侵攻が続く中でのエネルギーを巡る最近の情勢について、根井さんは「ロシアは戦費が増大する一方、ヨーロッパの市場を失い収入が減少している。価格が下がったロシア産原油を買い支えているのはインドであり、中国も表には見えないがロシア産が入っている。ただ、ロシア国内の石油生産能力は投資が回らない関係から、今後5年ほどで急激に落ちていく」と見通し、「ヨーロッパはロシアからの天然ガス供給停止で、ロシアに代わる調達先の確保に引き続き苦しんでいる。脱原発を遂げたドイツは今後もこのままやっていけるかどうかだ」と述べた。イスラエルとパレスチナを巡る動きによる石油価格への影響は、「今のところ小さい」とした。
一方、気候変動対策に伴う温室効果ガス排出抑制では近年、農業部門からの抑制に注目が高まっているとした。国際エネルギー機関(IEA)はエネルギー分野を中心にしているため農業部門への関心は低いものの、マイクロソフトの創業者として知られるビル・ゲイツ氏が主唱して設立された組織は、農業が温室効果ガス排出の2割ほどを占めているとして重視していることと、戦略的な取り組みとして牛によるメタンガス排出抑制のためのワクチン開発などの動きを紹介した。
クリーンエネルギーについては、エネルギー関連企業が集積する米国テキサス州での商業化に向けた動向を紹介。産学連携によるイノベーション創出活動によってベンチャー育成が活発化し、再生可能エネルギーや炭素リサイクル技術、バッテリーなどエネルギー貯蔵関連の投資額が増えている現状を報告した。また米国では民間企業による核融合炉の商業運転開始に向けた動きが具体化している事例も紹介した。