2024年(令和6年) 1月27日(土)付紙面より
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遊佐町沖の洋上風力発電計画について、経済産業省と国土交通省は発電事業者の公募を開始した。公募期間は7月19日まで。両省が事業計画などの審査や評価をした上、今年12月に事業者を決定する。遊佐沖の海域は再エネ海域利用法に基づく「促進区域」となっていた。洋上風力発電の導入は秋田県で先行している。今回、青森県沖でも事業者公募が始まり、東北の日本海側は洋上風力発電に適していることになる。
遊佐沖での事業者公募開始に、遊佐町などは新規事業、雇用の創出などに期待を寄せている。一方、事業に反対する住民もいる。そうした異論に対して丁寧に説明し、理解を得ることが事業推進の上で欠かせないことだ。
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全国的な洋上風力発電導入機運の高まりから、県は2018年「県地域協調型洋上風力発電研究・検討会議」と「遊佐沿岸域検討部会(遊佐部会)」を設立、20年に両省から事業開始に必要な3段階のうち最初の段階となる「一定の準備段階に進んでいる区域」の選定を受け、さらに2段階目の「有望な区域」、最終段階の「促進区域」に指定されていた。
世界のエネルギー事情は依然として石油や石炭などの化石燃料に頼っている。二酸化炭素(CO2)排出で地球の気温が上昇し「地球温暖化」から「地球沸騰化」の時代と語られ、主要7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合は50年までに化石燃料を段階的に廃止することで合意している。カギを握るのは自然の力を有効利用する再生可能エネルギーの導入とされている。
遊佐沖で予定されている導入海域は南北約8・3キロ、沖合5キロ。海岸線から1カイリ(約1・8キロ)沖までは漁業などへの配慮から風車を設置しない。着床式の風車で約45万キロワットを発電する。事業者には最長30年間の海域占有が認められる。遊佐町の海岸では既に風車が稼働しているが、新たな事業によって海域の景観が大きく変わるだけでなく、漁業への影響に不安を抱く町民も少なくない。
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四方を海に囲まれた日本は洋上風力発電の潜在力は高い。再エネの弱点は天候に左右されて発電量が不安定になることだが、秋田県は将来的に洋上風力を柱にした再エネで、全県内のエネルギーを賄うことを目指しているという。山形県も原発1基分に相当する約100万キロワットの再エネ導入を計画している。再エネへの期待は高い。
事業者公募開始で事業化に大きく前進する。風力発電についてはエネルギー事情や地元の雇用拡大への期待も含め、社会の受容性は深まりつつあるようだ。しかし事業推進で最も肝心なことは異論を持つ人々に説明を尽くして理解を得、総意で事業を進めること。それによって遊佐のまちづくりにつながることを願いたい。