2024年(令和6年) 2月3日(土)付紙面より
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通常国会が開会した。会期は6月23日まで。通常なら召集日(26日)に行われる岸田文雄首相の施政方針演説が30日になる異例の開会になった。自民党派閥の政治資金裏金事件を巡り、衆参予算委員会で「政治と金」の全容解明のための集中審議が開かれたためだ。
首相は「国民の信頼を損ねた」と陳謝した。速やかに政治と金の透明化と再発防止策を国民に示し、本来の国会審議に移らなければならない。「総裁任期中の憲法改正」や「最大の戦略として人口減少対策に取り組む」などとも語った。112兆円超の2024年度当初予算案、能登半島地震の被災者支援、復旧・復興策など、今国会では重要案件山積みだ。
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首相は能登半島地震に触れた際「能登はやさしや土までも」という言葉を使って、外に優しく内に強靭(きょうじん)な能登の人々の底力に敬意を表した。そうした能登の人の気遣いと人情味は、被災者や支援に携わる人の忍耐ある整然とした行動と絆となり、だんだん落ち着きを取り戻しつつあることに感謝した。被災者が悲しみをこらえ、必死で頑張っているときに、国会が政治と金の問題で混乱していては示しがつかない。
政治と金の問題で、多くの派閥が解散した。首相は「派閥が金絡みと人事の集団であったと見られても仕方ない」と認め「金と人事から決別する」とした。ただ解消する派閥と、新たな政策集団とではどこがどう違うのか、看板を変えただけでは根本の政治の正常化とはならない。政治資金規正法改正に関し、首相は連座制の適用などについては「各党と真摯(しんし)に議論する」などと、答弁は具体性に欠けている。首相が言う「政治は国民のものという原点に立ち戻る」ための、本当の覚悟を先頭に立って示し、党挙げて臨まねばならない。
物価高から国民を守る保護策と併せ、少子化対策を最大の戦略と掲げた。子ども1人当たりの家計支出は大きく、児童扶養手当の拡充など、子育て世代などへの追加給付にスピード感を持って当たるという。それらの財源の裏付けを急ぐため、実りある国会審議をしなければならない。
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外交と安全保障問題では「わが国が戦後最も厳しい環境にあり、同盟国との連携と防衛力の強化が喫緊の課題」としたのは、防衛予算の大幅増額と関わる。また、「総裁任期中に改正したい」と、憲法改正に意欲を示したが、何をどのように改正したいのか、国民への説明はまだ十分でない。
「地方が支える農業は国の基。地方創生無くして日本の発展はあり得ない」と述べた。食料安全確保のためスマート農業の推進などで国内の生産基盤を維持し、地方の成長を後押しするという。しかし、地方の人口減少が止まらない。人口対策も含め、掲げた意気込みを「現実のもの」にすることを首相の責務にしてもらいたい。