2024年11月28日 木曜日

文字サイズ変更



  • プリント用表示
  • 通常画面表示

荘内日報ニュース


日付の新しい記事へページを移動する日付の古い記事へ
  • ニューストップ
  • 最新記事
  • 戻る

2024年(令和6年) 2月7日(水)付紙面より

ツイート

笹巻は庄内が誇る伝統の食文化

 庄内は食の宝庫で、しかも多彩さの中に歴史も息づいていることを裏付けるようである。端午の節句になくてはならない食の「笹巻」。その「笹巻製造技術」を登録無形民俗文化財とするよう、国の文化審議会が文部科学大臣に答申した。2021年に新設された同民俗文化財に登録されれば東北地方で初となり、新しい庄内が誇る食文化になる。

 笹巻は草木の「灰汁(あく)」で煮て作るという独特な郷土食。灰の防腐効果や笹の殺菌性から戊辰戦争をきっかけに保存食にもなったとされる。そうした「発見・気づき」には、先人たちが経験則から学んだものであろう。笹巻はさまざまな笹の巻き方があり、芸術性も持ち合わせている。

     ◇       ◇

 笹巻は水に浸したもち米を水切りした後、笹の葉で包んでゆで上げる。同じ笹巻でありながら地域によって包み方の形状が異なる。「三角巻き」には、平たい巻き方や、三角すい形の「こぶし巻き(げんこつ巻きとも)」があり、遊佐町などでは月山筍を連想させる細長い円すい形の「たけのこ巻き」がある。灰汁で煮た鶴岡・田川の笹巻は黄色であめ色をしている。

 笹巻には、子どもの七つ祝いの際に特別に作られる大きな「祝巻き」もある。普通の笹巻では2枚ほど使う笹を、祝巻きは約40枚も使い、笹の葉を着物の襟を交互に重ね合わせるようにして巻く。三角すいだが、十二単を連想させるような豪華な作り。今では作られることはまれになったとされるが、昔はお祝いに来た客に、紅白の餅と一緒に持たせる習わしがあった。

 それにしても煮汁に灰汁を使うのは、独特の食文化なのであろうか。栃の実のあく抜きには、現在は苛性ソーダを用いることもあるが、庄内では灰汁を使うことが多い。自然の恵みから得た木灰を使うという、半ば原始的とも思えるところに昔からの知恵があり、伝統的な食文化を支えてきたことになる。「灰汁文化」とでも言うか、将来に大事に受け継いでいかなければならない。

     ◇       ◇

 以前、遊佐町で「笹巻きサミット」が開かれた。笹巻の伝統食を通して地元の食・産品の活用を図ろうとの狙いがあった。黒蜜やきな粉をかけて食べるのは素朴にも思えるが、それこそが郷土の味。

 笹巻は庄内の大事な郷土料理であり食文化。端午の節句の頃に作られる季節性に加え、高齢化や手作りの面倒さから存在感が薄れてきているのではないかと危惧されている。産直施設などで季節を問わず販売されているが、人々が多く買い求めることで郷土の食文化伝承を後押ししたい。そのためにも、ぜひ登録無形民俗文化財の指定を待ちたい。併せて、庄内が誇る伝統食を子どもの世代から将来へと伝えてもらうため、「笹巻給食があってもいいのでないか」とは、飛躍し過ぎた考えだろうか。

画像(JPEG)



日付の新しい記事へページを移動する日付の古い記事へ

記事の検索

■ 発行月による検索
年  月 

※年・月を指定し移動ボタンをクリックしてください。
※2005年4月分より検索可能です。

  ■ キーワードによる検索
   

※お探しのキーワードを入力し「検索」ボタンをクリックしてください。
※複数のキーワードを指定する場合は半角スペースを空けてください。

  • ニューストップ
  • 最新記事
  • 戻る
ページの先頭へ

ニッポー広場メニュー
お口の健康そこが知りたい
気になるお口の健康について、歯科医の先生方が分かりやすく解説します
鶴岡・致道博物館 記念特別展 徳川四天王筆頭 酒井忠次
酒井家庄内入部400年を記念し、徳川家康の重臣として活躍した酒井家初代・忠次公の逸話を交え事績をたどる。
致道博物館 記念特別展 第2部 中興の祖 酒井忠徳と庄内藩校致道館
酒井家庄内入部400年を記念し、庄内藩中興の祖と称された酒井家9代・忠徳公の業績と生涯をたどる。
致道博物館 記念特別展 第3部 民衆のチカラ 三方領知替え阻止運動
江戸幕府が3大名に命じた転封令。幕命撤回に至る、庄内全域で巻き起こった阻止運動をたどる。
致道博物館 記念特別展 第4部 藩祖 酒井 忠勝
酒井家3代で初代藩主として、庄内と酒井家400年の基盤を整えた忠勝公の事績をたどる。
致道博物館 記念特別展 第5部 「酒井家の明治維新 戊辰戦争と松ケ岡開墾」
幕末~明治・大正の激動期の庄内藩と明治維新後も鶴岡に住み続けた酒井家の事績をたどる。
酒井家庄内入部400年
酒井家が藩主として庄内に入部し400年を迎えます。東北公益文科大学の門松秀樹さんがその歴史を紹介します。
続教育の本質
教育現場に身を置く筆者による提言の続編です。
教育の本質
子どもたちを取り巻く環境は日々変化しています。長らく教育現場に身を置く筆者が教育をテーマに提言しています。
柏戸の真実
鶴岡市櫛引地域出身の大相撲の元横綱・柏戸の土俵人生に迫ります。本人の歩み、努力を温かく見守った家族・親族や関係者の視点も多く交えて振り返ります。
藤沢周平の魅力 海坂かわら版
藤沢周平作品の魅力を研究者などの視点から紹介しています
郷土の先人・先覚
世界あるいは全国で活躍し、各分野で礎を築いた庄内出身の先人・先覚たちを紹介しています
美食同元
旬の食べ物を使った、おいしくて簡単、栄養満点の食事のポイントを学んでいきましょう
庄内海の幸山の幸
庄内の「うまいもの」を関係者のお話などを交えながら解説しています

株式会社 荘内日報社   本社:〒997-0035 山形県鶴岡市馬場町8-29  (私書箱専用〒997-8691) TEL 0235-22-1480
System construction by S-Field