2024年(令和6年) 2月8日(木)付紙面より
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鶴岡市の鶴岡アートフォーラムで「漆芸と黒柿細工~近代工芸の粋」展が開かれ、竹塗りや蒔絵(まきえ)、今回初めてとなる黒柿細工の工芸品が来館者の目を楽しませている。
郷土の芸術文化史をたどりながら、庄内にゆかりのある作家や作品を紹介する企画展覧会「庄内の美術家たち」シリーズの19回目。同企画展ではこれまで、幕末から明治、大正、昭和時代に活躍した郷土の洋画家、日本画家、書家などを紹介。今回は地元に伝わる漆芸や黒柿細工の工芸家に焦点を当てている。
白眉は「黒柿細工」。鈴木林治(初代、1845―1930)、中山秀邦(1899―1977)、小松文一(1925―2016)らの技を凝らした逸品は思わず息をのむほどの美しさ。黒柿材は貴重な材木で、斑紋の美しさと堅牢精細な質感は他材の追随を許さない。品種は大宝寺柿、万年橋柿、木ざわし柿などの豆柿から取れるといわれ、それも樹齢100年前後の古木に熟さないと中心部は黒く変色しない。万分の1の確率でしか現れない現象の上、古木を切ってみないと外からは判別できないため、庄内を代表する逸品として珍重され、江戸時代の参勤交代時の藩の献上品だったといわれる。
黒柿の中でも「水玉」や「流れ」と呼ばれる斑紋は特に貴重とされ、「鶉杢(うずらもく)」(ウズラの首元のような流れる斑紋)に至っては、斑紋の現れた黒柿数百本に1本といわれ、超一流の材木とされる。
かつての庄内地域は、他所に比べ黒柿が出やすい土地といわれたが、柿の品種の変遷に伴い現在ではもう産出しない。飾り棚や文箱、硯箱、煙草(たばこ)盆、三段重箱など珍しい紋様の作品が並ぶ。
竹塗は、漆を塗り重ねて竹の風情を表現する全国的にも珍しい漆芸。庄内藩お抱えの武具塗装職人・阿部竹翁(1839―1912)が創始した。竹翁による「竹塗五段重箱」を間近で見ることができる。他に、飯塚竹真(初代、1870―1934)や八幡玉清(1890―1951)の作品なども。展示は来月3日(日)まで。今月11日(日)、25日(日)には学芸員によるギャラリートークも予定されている。問い合わせなどは同館=電0235(29)0260=へ。