2024年(令和6年) 2月8日(木)付紙面より
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鶴岡市は7日、旧庄内藩主酒井家18代当主で公益財団法人致道博物館名誉館長の酒井忠久氏(77)=鶴岡市家中新町=に、名誉市民の称号を贈ると発表した。同日開かれた市議会臨時会の同意を得て決まった。名誉市民称号の推戴式は今後決定する。市町村合併前を含め同市の名誉市民は30人目。酒井氏の父親の17代当主・忠明(ただあきら)氏(故人)も1999年に推戴されており、親子2代にわたっての名誉市民となる。
酒井氏は鶴岡市生まれ。成蹊大政治経済学部を卒業後、1969年に松岡製糸所(現・松岡)入社。80年に致道博物館理事、92年に代表理事・館長となり、昨年6月まで31年間にわたって務めた。2004年に忠明氏の死去に伴い酒井家18代当主、地縁団体松ケ岡開墾場総長に就いた。16年に公益財団法人日本美術刀剣保存協会(東京)の会長に就任。昨年6月から致道博物館名誉館長。
致道博物館長として庄内地域の考古・歴史・民俗資料の保存収集、国指定重要文化財群の維持管理に努め、公開を通して郷土の文化財保護と継承に尽力。1983年には松ケ岡開墾と養蚕の歴史資料を紹介する「松ケ岡開墾記念館」を開館し、蚕室の保存や来訪者受け入れのための整備を進め、開墾場の国史跡の指定(89年)に寄与。2016年に天皇、皇后両陛下(現・上皇、上皇后両陛下)が開墾場をご視察された際には案内役を務めた。17年には開墾場を中核とした「サムライゆかりのシルク」が日本遺産に認定されている。
「少年少女古典素読教室」「論語書道展」などに取り組むなど地元の関係団体と連携して庄内藩校致道館の教学の精神の継承にも尽くしている。2007年に鶴岡市で開催された「全国藩校サミット」で実行委員長を務め、全国に致道館の歴史的、精神的な価値を広めた。先月19日に皇居で行われた歌会始の儀では、司会役の「読師(どくじ)」の重要な役どころを担った。致道博物館は1995年、荘内日報社制定の第9回「荘日賞」で文化賞を受賞している。
名誉市民の推戴は市条例に基づくもので、先月の有識者らによる選考審査会の答申を踏まえ、皆川治市長が市議会に提案した。昨年7月には前慶應義塾大先端生命科学研究所長の冨田勝氏が推戴されている。