2024年(令和6年) 2月21日(水)付紙面より
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西郷南洲(隆盛)翁と菅臥牛(実秀)翁の人徳をたたえる「先賢を偲(しの)ぶ会」が18日、鶴岡市の致道博物館にある旧鶴岡警察署庁舎(国指定重要文化財)で行われた。旧庄内藩主酒井家18代当主の酒井忠久・同館名誉館長が、読師(どくじ)(司会役)の大役を務めた先月19日に皇居・宮殿松の間で行われた「宮中歌会始」について講話し、「(和歌を記された)両陛下をはじめ皇族方の御書は本当に素晴らしかった」と述べ、読師ならではの経験を紹介した。
読師は声を出さず、目配せなど所作で歌会の進行をつかさどり、両陛下の歌を拝受する重要な役どころ。忠久さんは昨年の歌会始で読師控(ひかえ)として参列し、所作を確認した。この時の印象について「歌を読み上げられる披講の方々の声が凛(りん)として素晴らしく、まるでライブハウスにでもいるような感覚だった」と紹介した。
本番となった今年の歌会始では、読師が着席する披講席で皇族方の歌や入選歌が記された懐紙を1枚ずつめくるのに緊張したと話し、「2枚めくると進行が乱れるのでかなり注意した」と述べた。終了後には天皇皇后両陛下からねぎらいのお言葉があり、この際に天皇陛下が「『えびすくい』の酒井さんですね」と話されたエピソードを披露。酒井さんは「陛下も大河ドラマ『どうする家康』をご覧になっていたようだが、まさかそうしたお話がでるとは思わなかったので驚いた」と感想を率直に話し、「さまざまなご縁を頂いて読師を無事に務め上げることができ、大変光栄なことだったと思っている。来年のお題は『夢』。皆さんも詠進してみてください」と呼び掛けた。
偲ぶ会は(旧西郷・菅先生を偲ぶの会)は両翁の人徳に学び感謝の心をささげようと、旧庄内藩主酒井家を中心に1888(明治21)年に始まり、戦後は致道博物館に引き継がれ、菅翁の命日(2月17日)に合わせて毎年開催。この日は約40人が出席。初めに両翁の肖像と、南洲翁の書を掲げ、酒井名誉館長を先頭に拝礼した後、講話が行われた。