2024年(令和6年) 3月2日(土)付紙面より
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衆院政治倫理審査会が29日、岸田文雄首相が自ら公開での審査に応じる形で開催された。2024年度予算案審議などを控え、手詰まり状態の突破口を開くことで、公開の審査を渋っていたほかの5人の派閥事務総長経験者も、公開審査に応じざるを得なかった。首相が指導力を発揮したと見られ、政倫審は初日に首相と二階派幹部の2人、3月1日には安倍派幹部の4人が出席した。
現職首相が政倫審に出席するのは初めて。首相は冒頭「なぜ議員は罰せられないのか、議員に特権意識があるとすれば抜本的に改める」と弁明、連座制導入に含みをもたせた。しかし、出席者が国民が抱いている数多い疑惑に明確に答えたかとなると、依然として疑問が残る。
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「法の隙間ぬって政治家が丸々太っていく。そんなことで国家が成り立つのだろうか」―は、全国紙の読者欄に出ていた国民の声。政治家の特権、法を巧みに潜り抜けていることを厳しく批判した意見だ。政倫審でのやりとりで、国民が「なるほど、そういうことだったのか」と納得できたかどうかはともかく、国会議員は疑義を持たれたら公の場で潔く説明する。その意味では「原則非公開」の政倫審が公開で開かれたことで、ほかの政治家も身を正さなければならなくなったことは確かだ。
政倫審はテレビで中継された。言葉は良くないと言われそうだが、国民が公開を求めたのは“見せしめ”にしようなどと考えたわけではない。議員の立場を利用して隠し通そうとしていた事実を、議員本人から「ナマ」の声で説明を聞きたかったからだ。首相も公開の政倫審は、悪質な会計処理を防ぐ抑止力になるなどと語った。
初日に弁明した二階派の事務総長、武田良太元総務大臣は「派閥の会計について、私も二階俊博会長も会計責任者から一切報告を受けていない。いつ頃から裏金があったかも知らないし、裏金を作ろうとの意識は毛頭なく、指示したこともない」などと答えた。「これでは裏金の金額が大きかった二階氏に政倫審に出席してもらうしかない」と野党が迫ったのは当然だった。
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今回の裏金問題は身を律する立場の議員が法を作ることで、会計責任者に責任を負わせ、議員は責任を免れるような資金管理の抜け道が作られていたことに原因があった。政治資金パーティー券販売のノルマ超過分を不記載にして裏金とすることが、いつ頃から、誰の指示で始まったのかなどは、政倫審の質疑ではっきりしない。
政倫審には疑惑を持たれた大勢の議員が出席していない。「法的責任は問われなかったとしても、道義的責任がある」との野党の質問に、首相は「議員に責任を問う事は重要だ。党として責任の取り方を議論する」と述べている。政治と金の問題は、なによりも透明性がなければならない。