2024年(令和6年) 3月16日(土)付紙面より
ツイート
鶴岡市は津波対策での避難指示の基準を改める。津波注意報の発表と同時に市災害対策本部を設置、海岸では堤防よりも海側にいる漁業関係者や観光客などに速やかに避難指示を出すことを明文化する。避難の遅れで犠牲者が出ることを防ぐと同時に、避難所での寒さ対策なども今後検討する。
災害時の避難対策では、市自治振興会連絡協議会が1月、1次避難場所と2次避難所の整備に関する要望書を市に要望している。湯野浜、加茂、由良など沿岸5地区の会議で、避難所への暖房機器、簡易ベッド設置などを求めた。災害対策では行政の支援はもちろんのこと、住民の素早い行動が被害を防ぐことになる。
◇ ◇
能登半島地震で、庄内沿岸地域でも避難所が開設された。しかし、遊佐町では津波警報が解除される前に避難所を閉鎖したことが問題視された。避難住民が早々に帰宅してしまったことが背景にある。鶴岡市でも同様で、津波警報が出されたのを受けて7カ所の避難所に約2600人が避難したものの、津波注意報に切り替わる前に、住民の帰宅が始まったという。
地震発生から時間の経過とともに「もう大丈夫だろう」という住民間の判断がそうさせたようだ。津波は2波、3波と繰り返す。日本海の津波は大陸との間を反復するためリスクは大きいと専門家は指摘している。となれば津波注意報が出ている間は、避難所に留まるのが命を守ることになる。
鶴岡市が見直す地域防災計画は、津波注意報の発表時も警報と同様に災害対策本部を設置、地域住民に避難指示を出す。ただし、注意報級では既存の「海岸堤防」より陸側には影響はないとして、避難指示の対象は堤防より海側にいる漁業者や海水浴客などに限定する。津波注意報は波高が20センチ~1メートルで発表される。しかし、弱くても長い時間ゆっくりした揺れを感じたら注意報が出されていなくても、まず海岸から離れることは避難の鉄則だ。
◇ ◇
能登半島地震では土砂崩れ、家屋や電柱の倒壊で自治体が定めていた避難路などが寸断されて避難が妨げられた。地震と津波を想定した避難路までふさがれてしまったことを考えると、想定を超える次善の策、1次避難場所から2次避難所への移動経路などの再点検も必要となるのではないか。
災害発生時の避難で大きな課題となるのが、自力での避難が困難な要支援者への対応。2019年6月の山形県沖地震でも体が不自由として避難をためらった住民もいた。沿岸地域では高齢化が進んでいる。後期高齢者、要介護認定者の避難をどうするか。地域を支援するマンパワーも求められる。災害は不意に襲ってくる。いざの時にどのように行動するか。行政に頼るところは多いが、住民が「まず逃げる」ことを心に刻んでおきたい。