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2024年(令和6年) 3月31日(日)付紙面より

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自給率向上や地域振興 県産小麦育成へ品種選抜 山形大農学部 中華麺やパン用付加価値高める

 鶴岡市の山形大農学部(村山秀樹学部長)は29日、県産小麦品種の育成に向けた農研機構との共同研究について発表した。県内での栽培に適した中華麺やパン用の小麦品種の育成に向け、担当教員と学生が付属農園で大元となる品種の選抜を進めている。同学部は「小麦の生産振興による県内自給率向上や、県産小麦を使用したラーメンによる地域資源の付加価値を高めて地域振興につなげたい」としている。

 発表は同学部で行われ、植物遺伝育種学分野で小麦の研究実績がある笹沼恒男准教授と、地域循環型農業の研究に取り組んでいる中坪あゆみ助教が説明した。笹沼准教授は「新品種育成は2018年ごろから構想しており、20年に農研機構(北海道農業研究センター、東北農業研究センター)と共同研究契約を締結した」と話した。

 今回発表に至った経緯として「昨年、酒田市の酒田ラーメンが日本ご当地ラーメン総選挙で全国1位になり、山形市が世帯当たりの外食ラーメン年間支出額2年連続日本一になるなど、本県は“ラーメン県”として盛り上がっている。この機会に県民から農学部の取り組みを知ってもらいたい」と述べた。

 同学部は契約締結後から笹沼准教授と学生が、鶴岡市の高坂農場で同機構から提供を受けた小麦の雑種集団の栽培を開始。年間約1000本を播種し、本県の環境に適応する早生系統の絞り込みを進めている。

 笹沼准教授によると日本は小麦の生産量が少なく自給率は平均15%程度。東北地方の生産量は全体の2%弱で、本県は東北地方全体の2%を切っている。「本県は小麦の需要と生産に大きなギャップがある。ラーメン店や製粉所など県内の実需者からは、県産小麦を使用したラーメン作りに対する期待の声も上がっている」(笹沼准教授)という。

 本県での小麦栽培で課題となるのが積雪など冬期の環境だ。二年草の小麦は9―10月ごろに播種し、冬を越して翌年5―6月ごろに収穫となる。小麦が雪に埋もれると湿度が上がり病気の原因となる。そのため本県で栽培する小麦には高い耐雪性が求められる。また、梅雨時期に小麦が雨水を受けると発芽することがある。発芽はエネルギーを大きく消費するため品質低下につながることから「穂発芽耐性」も求められる。

 北海道で栽培されている既存の品種は高い耐雪性を有しているものの地域適性の影響で、県内で栽培すると小麦に含まれるたんぱく質(グルテン)が低下するという。

 こうした課題を踏まえ、笹沼准教授は「本県の栽培環境に適した小麦の品種育成が必要。耐雪性と穂発芽耐性があり、可能な限り梅雨時期にかからないよう収穫できる早生種で、高いたんぱく質を含有する新品種が求められる」と指摘する。

 品種系統の絞り込みは順調に進んでおり、今年は数十種類の系統からさらに優れた品種を選別していく予定。新品種の誕生まで明確な期限は設けていないものの、「10年内にある程度のめどをつけたい」という。

 笹沼准教授と中坪助教は「新品種が誕生すれば本県の小麦生産振興の起爆剤となり得る。自給率向上だけでなく、『県産小麦を使用したラーメン』として地域資源の付加価値を高めることもできる。農学部発の地域貢献をぜひ実現させたい」と意欲を高めている。

山形大農学部付属高坂農場で育成されている小麦=笹沼准教授提供
山形大農学部付属高坂農場で育成されている小麦=笹沼准教授提供

笹沼准教授(左)と中坪助教が本県の栽培環境に適した小麦の新品種育成について説明した
笹沼准教授(左)と中坪助教が本県の栽培環境に適した小麦の新品種育成について説明した



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