2024年(令和6年) 6月8日(土)付紙面より
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「酒田まつり」「鶴岡天神祭」「大山犬祭り」の庄内三大祭りが終わった。今年は3つの祭りとも神事の中に華やかさを演出するイベントもあった。大勢の子どもが祭りに参加して学校では得られない体験をした。併せて地域を見つめ直し、郷土愛も育まれたのではないか。
鶴岡天神祭では、新型コロナ感染症の影響で中止になっていた「化けもの」による見物客への酒などの振る舞いも復活。いつもながらの光景が戻ったことで「これがあってこそ本来の祭り」との声も聞かれた。いつの時代になっても、伝統は新鮮さを秘めているということになる。
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天神祭の前夜祭は高校生が太鼓や吹奏楽演奏で祭り気分を盛り上げた。小学校では祭りの歴史や化けもののいわれを学ぶ出前講座もあった。九州太宰府に配流された学問の神様・菅原道真公を、老若男女が編み笠で顔を隠し、長じゅばんを着て、誰であるか分からないように変装して別れを惜しんだとのいわれがある「みちのくの奇祭」と称されることを、初めて知った子どももいたことだろう。
酒田まつりでは、酒田の開祖とされる「徳尼公と酒田三十六人衆」に焦点を当てた、酒田時代行列があった。奥州平泉から逃れて来た徳尼公一行が、酒田のまちづくりの礎になり、京文化は酒田港から最上川をさかのぼって平泉に入ったとの説もある。そうした歴史の流れを時代行列を通じて視覚から学んだのは、祭りならではの演出効果であろう。大山の犬祭りは、あくまでも伝説だが、代々受け継がれてきたことを大事に守る。子どもたちも「犬みこし」を引き、「奴(やっこ)振り」を演じて参加した。
今年の天神祭では、羽越本線全線開通100周年(7月31日)などを記念、航空自衛隊のアクロバット飛行隊「ブルーインパルス」の展示飛行があった。酒田まつりでは子どもに大人気の、東京ディズニーリゾートスペシャルパレードで、ミッキーマウスらのキャラクターが愛嬌(あいきょう)を振りまき、大勢の目を楽しませた。
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祭りはその土地の神事などに由来する人々の心のよりどころであり、地域がまとまる絆にもなる。子どもたちは多彩なイベントや出店を見て回ることに心を弾ませる。祭りが世代を超えて受け継がれてきたのは、見て参加した記憶が子どもの心にいつまでも刻み込まれているからではないだろうか。
両方の手と指を駆使して楽しむゲーム全盛の時代である。言ってみれば“孤独の中での遊び”ということに。しかし、多勢の協力がなければ成り立たない祭りは、人の心を結び付ける好機であり、地域を見つめ直すことで、郷土愛も育まれる。学校を離れた場での体験を通じて、心の成長にもつながる。少子化という困った現象もあるが、いつまでも「祭りは地域の宝」としていかねばならない。