2024年(令和6年) 6月8日(土)付紙面より
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春蚕飼育キットの配布が始まった鶴岡市羽黒町の国指定史跡「松ケ岡開墾場」三番蚕室で6日、鶴岡工業高校の3年生5人が、AI(人工知能)を用いて蚕の仕分け作業の省力化を図る実践を行った。
同校では3年生が年間を通して課題研究に取り組んでおり、週1回5時間の授業を行っている。このうち、今春の卒業生1グループが養蚕を通して地域の産業や歴史を理解しようと、AIを用いて蚕を認識するオリジナル学習モデルを作成。本年度、「AIの顔認証システムを用いた出席確認」の研究に取り組んでいる情報通信科3年の1グループがその学習モデルを使い、まずは蚕の頭数を正確に数えることができるかなどを実践し、課題を探った。同科ではグループが7つあるが、AIを使った研究をしているのは、この5人のグループだけだという。
三番蚕室「おカイコさまの蔵」に事務所を持つ松ケ岡産業では、毎年6月と9月に蚕の飼育の様子を一般公開するとともに、市内外の学校や幼稚園などに春蚕の飼育キットを配布している。本年度は52施設が体験する。同校も8ケース譲り受けて飼育することにしており、この日は受け取りを兼ねて、ウェブカメラとシングルボードコンピューターなどからなる学習モデルを作動させた。
仕分けでは、蚕室で2―3センチほどに育った4齢の蚕を、桑の葉ごとに発泡スチロールの箱に30頭ずつ入れ、ウェブカメラで画像を読み込んだところ、ピントが合わないと正確に数が読み取れなかったり、読める範囲が狭いため、分割して取り込まなければならないことが分かった。また、読み取りの精度も60%ほどだった。指導した同科の日向洋伸教諭(40)によると、昨年度は4回脱皮した7センチほどになる5齢の蚕で設定したため、誤差が生じたのではないかという。グループのリーダーの大滝空さん(18)は「機械の使い方を知ることができて重要な学びになった。これからはAI関連がないと生きていけないので、さらに研究していきたい」と話した。
今後は、カメラをより精度の高いものにするなど学習モデルに改良を加え、秋蚕の時期に蚕室を訪れて再度読み込みに挑戦するという。さらに、画像から蚕の成長度合いやふんを捨てるタイミングなどを読み取れるようになることを目指し、最終的にクラスの仲間の顔認証に結び付けることにしている。