2024年(令和6年) 6月13日(木)付紙面より
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昨年夏の高温少雨でサクランボや枝豆の生育に影響が出ている。収穫を迎えたサクランボは「双子果」や「割れ果」が目立つ。在来枝豆は例年より発芽率が悪く「半分しか芽が出ない」という栽培農家が多い。温暖化が続く中、生産農家は「今後、どう対策を講じたらいいのか」と頭を悩ませている。
鶴岡市西荒屋の観光果樹園「フルーツハウス鈴木」では今月初めにサクランボの収穫が始まった。育てているのは「紅さやか」「紅ゆたか」「佐藤錦」「紅王」など8品種。園内は枝いっぱいに「赤いルビー」が実り出荷作業に慌ただしさが増している。
しかし今年は「双子果」や「割れ果」が例年より多い。オーナーの鈴木光秀さん(62)は「こうしたサクランボは『訳あり』として安く産直で販売できるが贈答用にはならない。(サクランボの)木にとって昨年の高温少雨が相当こたえたのだろう。一つの花にめしべが2つあるものもあり子孫を残そうという必死さが伝わる」と察する。
夏の高温少雨だけでなく春から冬にかけて一年中、気温が高い傾向が続き「木がストレスを受けている」と鈴木さんは指摘する。特に12月から2月の気温が高く、木がしっかり休めない年が続いている。「樹木にとって寒くなければならない『休眠打破』の時期が短くなっている。(温暖化傾向は)花芽をはじめ生育全般に与える影響が大きい」と心配する。
一方、鶴岡市羽黒町の細谷集落に伝わる在来枝豆「細谷だだちゃ」の今年の発芽率は2、3割程度と極端に悪い。そもそも「細谷だたちゃ」の発芽率は5割ほど。他の品種と比べて低く例年、種を採るときに優れたものを残すよう選別している。
細谷集落の住民が集まり在来作物を伝承している「チーム細谷」(明星正司会長)によると、今年は先月19日にポットと発泡スチロールに種をまき、露地栽培で発芽を見守ってきたが「これほどとは想定外。試験的に一昨年の種をまいてみたが、逆にこっちの方がいいみたいだ」という。
今月9日、小学生の子どもたちを含めた住民約20人が参加し集落内の畑に苗を植えた。活動には伝統野菜を守る大切さを学ぼうと広瀬小学校の教諭も初参加。8月第3週の日曜日に収穫し、集落の公民館で枝豆食べ放題の感謝祭を行う予定だ。
チーム細谷の明星会長(53)は「細谷だだちゃはここだけでしか作っていない希少な伝統作物の一つ。来年、再来年と受け継いでいかなければならない。温暖化が農作物全般に与える影響が今後どうなるのか。不安な気持ちは拭えない」と話した。