2024年(令和6年) 7月20日(土)付紙面より
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「海をきれいに漂着ごみ調査」「きれいな海で海水浴楽しく」「外国人技能実習生ごみ拾いに汗」「緩衝緑地整備で癒やし空間提供」―。最近本紙に載ったボランティアを伝える記事の一部。つい読み流してしまいそうだが、活動の一つ一つに大事な「心」が込められている。小さな活動に思えるが、そうした積み重ねが社会に根付いていくことを見守りたい。
ボランティアとは「奉仕活動」。社会貢献につながる取り組み。自発的に、意識して活動に参加することもあれば、道端に落ちているごみをさりげなく拾うことも、それに当たるだろう。ボランティアの精神としてあるのは「困った時はお互いさま」の心のようだ。
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「捨てた人は環境のことをよく分かっていないと思う。みんなで協力し、少しだけ環境美化に役立てたのでうれしい」―は、鶴岡市湯野浜の海岸清掃に参加した小学生の話。この言葉は「大勢が環境のことを考えていれば、ごみは増えない」ということを意味する。清掃活動に参加したことで、初めて「ボランティアとは」を知る子どももいるだろう。
自らの意思で行動する自発性、行政などの手が届かない部分を見つけて活動する先駆性と開拓性、そして社会貢献につながり、対価が発生しない無償性が、ボランティアの原点、精神という。もちろん集団活動になれば連帯性と協調性も求められる。どの項目をとっても、社会のために活動することが自身の成長にもつながる事柄ばかりだ。
内閣府が公表した「市民の社会貢献に関する実態調査」では、2021年の1年間にボランティア活動に参加した人の割合は約17%。60歳以上の年齢層では20%超え。参加した理由は「社会の役に立ちたいと思ったから」。自己啓発を理由にした人も比較的多い。人は自分のためにだけでなく、他者のために何かをすることに幸福感を得られるものだと言われる。心の充実感であろうか。「自分さえ良ければ」という風潮がある中で、考えさせられることだ。
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ボランティアは、1995年1月の阪神・淡路大震災を機に広がり、「ボランティア元年」と呼ばれた。人の難儀をわが事として捉える。冷静に物事を見つめて対処できるボランティアの存在は大きな力になった。
文部科学省の諮問機関「中央教育審議会」が、青少年の奉仕活動などの推進策をまとめた事があった。社会性や思いやりの心の豊かな人間性を育むため、学校内外でのボランティア活動を推奨した。「奉仕による新しい公共」を求めたものだが“お仕着せの公共”との声も聞かれた。それは別として「ボランティアって何」「どんなことをするの」「自分にもできる事はあるだろうか」などと考えてみる。小中学生には夏休みの自分なりの宿題になるかもしれない。