2024年(令和6年) 7月21日(日)付紙面より
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国の文化審議会は19日、鶴岡市新海町にある絹織物の精練会社「羽前絹練」の工場など7棟を国の登録有形文化財(建造物)にするよう文部科学大臣に答申した。登録されれば、県内の建造物の登録有形文化財は215件、鶴岡市内では26件になる。
羽前絹練は1906(明治39)年創業。絹の精練は、特有の気品ある光沢と滑らかな風合いなどを生み出すため、製糸や製織された織物を煮てタンパク質などの不純物を取り除く工程で、絹織物産地として栄えた鶴岡の産業の近代化を支え、市街地にある工場は古くから「練り場」と呼ばれ、市民に親しまれてきた。
登録されるのは、大正から昭和初めにかけて建てられ、現在も使用されている▽事務所・仕立棟▽精練棟▽染色棟▽第一仕上棟▽第二仕上棟▽検査棟▽土蔵―の7棟。中心となる精練棟(建築面積約370平方メートル)は大正後期の建築。絹織物を煮る工程で発生する高熱の蒸気を屋外に効率よく排出するため、屋根から上に設けた越屋根(こしやね)と屋根の斜面に突き出た洋風建築様式の屋根窓(ドーマーウインドー)が設けられているのが特徴。屋根を支える三角形を組み合わせたトラス構造が採用されている。
絹織物の加工における洋装分野では国内トップの加工高と生産量を誇り、洋装分野では国内唯一の精練工場として稼働し、現在は25人の社員が作業に従事している。2017年に認定された日本遺産「サムライゆかりのシルク」で構成文化財の一つとなった。今回の国の答申では、西洋建築様式を取り入れた建物群の構造とともに「鶴岡の近代化を伝える現役の工場」として評価された。
羽前絹練の上野康成社長(62)は「精練工場が少なくなっている中、昔ながらの工程と技術を全国的に知ってもらえる機会にもなる。将来的には施設の一般公開も考え、建物とともに鶴岡で育まれた精練の歴史を後世に伝えていきたい」と話している。