2024年(令和6年) 7月24日(水)付紙面より
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東北公益文科大学(酒田市)の公立化と、機能強化による新学部設置が、2026年4月に実現する。22日の会議で、県と庄内5市町が財政負担割合で合意した。01年4月の開学から25年の節目の年に、新たなスタートを切ることになる。少子化が進む中で定員割れしている大学が全国で増えている。公立化による新機軸を打ち出すことで地域に根差し、国内外で活躍できる人材が育つことに期待を寄せたい。
公益大の公立化は、県と「庄内広域行政組合」(2市3町で構成)で組織する公立大学法人が運営を担い、財政負担割合も県と庄内2市3町間で合意した。公立化は地元経済団体の強い要望でもあり、目指すところは地元を支える有為な人材を輩出することである。
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公益大は01年、公設民営方式で創立し私立大学としてスタートした。「公益学」という全国の大学に先駆けた単一学部制は、将来の福祉政策の重要性と人材育成を見越したものだった。学部定員は235人。22年度まで 6年続けて定員を超えたが、23、24の両年度は定員に満たなかった。経営の安定と新学部設置による、より魅力ある大学づくりは以前から求められていた。
地方の小規模大学は経営基盤が弱い。新田嘉一理事長は09年、吉村美栄子知事に乞われて理事長に就いた。4年後、それまでの学長中心から理事長中心の大学運営へ方針転換。定員割れを解消した17年、「公立化」を県に要請した。大学の経営が苦しければ、教員の研究費や学生の人材育成にも影響することを心配し、吉村知事への要請だった。
大学は国公立、私学とも少子化による定員割れで経営が苦しい。進学率は高いものの、入学者の絶対数が減っている。国立大学であっても経営が苦しいのは、04年に独立行政法人化され、「運営費交付金」が減らされたためでもある。国の交付金に頼るだけでなく、経営努力による自主財源の確保を求められている。最近、東大が授業料の値上げを検討して波紋を広げたのには、そうした背景がある。
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公益大の公立化での財政負担は県55%、2市3町で45%。この割合は公設民営での開学時と同じ。2市3町の割合は酒田市26・9%、鶴岡市13・5%、庄内町1・8%、遊佐町1・5%、三川町1・2%。
高橋和雄元知事は『自伝的回想録』で、県内の高等教育機関の在り方について「大学が内陸に偏重している」と、バランスの取れた配置の必要性を語っている。今年春、新庄市に県立東北農林専門職大学が開学した。公益大の公立化によって、高橋元知事が指摘した、県内の国公立大学のバランスが取れるということになるが、公立化が終着点でなく、公益大をより魅力ある大学にしていくためのスタートとしたい。