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荘内日報ニュース


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2024年(令和6年) 8月30日(金)付紙面より

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住み続けたい、農業続けたいが… 酒田大沢地区住民 土地離れる決断の声も 自治会「復旧のほかに長期的課題考えないと」

 庄内・最上地域に甚大な被害をもたらした記録的大雨から1カ月が経ち、土砂の撤去作業が続く酒田市大沢地区では、「これから」について考える地区住民らの「地区を離れる」という決断の声も聞こえ始めた。

 大沢コミュニティ振興会(後藤正一会長)によると、大沢地区内の青沢3集落では被災前約120戸、約250人が在住していたが、今回被害を受けなかった住宅でも2次災害を恐れて引っ越しを検討・決定した家もあるという。大沢地区にある水田の約8割が被害を受け、再生には5年以上かかるとされる。

 北青沢の自宅で被災した遠田恵美子さん(66)は「元々足が悪いのだが、抽選で当たった公営アパートが3階だったため家族はアパート、自分は親戚の家で寝泊まりさせてもらっている。家族全員で住むための家を探していて、復旧を待てないので青沢には戻らないと思う。長年住み続けた土地に愛着はあるが、新しい生活基盤を考えると仕方ない。寂しいが、土地を離れても地域のためにできることがあれば活動したい」と。大蕨の自宅が床下浸水した後藤桂子さん(64)は「家は倒壊せずに済んだが固定電話も携帯もつながらない生活が続き、最近やっとテレビの地上波が映りニュースが見られるようになった。長年共に住んでいた人たちが離れていくのは悲しい。泥に埋まった水田を見ると胸が締め付けられる。催事や神事もどうなるか」と話した。

 北青沢で代々続く米農家の9代目という70代男性は「母が高齢なためアパートに住むことは考えられず、観音寺地区の借家に家族で引っ越した。今は片付けで手いっぱいだが、生活が落ち着いてももう戻って来られないかもしれない。農業を続けたい気持ちはあるが、水田もハウスも全滅し、行政の支援がどれほど受けられるか分からない。本当は住み続けたい。こんな形で土地を離れることになってご先祖様に申し訳ない」と悔しそうに話した。

 住民が次々と地域を離れることに、同振興会の遠田清之事務局長は「人口は今後さらに減ると考えられる。どのくらい住民が残るかは想像がつかない。土砂撤去や復旧工事といった純粋な復興課題のほかに、危険箇所の調査・把握、コミュニティーの維持、高齢住民の支援など、長期的な課題についても考えなければ」と寂しげに話した。

 被災当初から支援活動を続けている合同会社「COCOSATO」(同市大蕨)の阿部彩人代表は「固定電話とネット回線が使えないのが最大の問題。林業、建設業を中心に大沢地区の企業は全く仕事にならない状態が続いている。自分も仕事が止まったまま支援活動をしているので、収入がほとんどない状態。仕事と支援の両立をどうするかが悩み。地区をなくさないためにも、多岐にわたる支援の仕組みや復興の道筋を考えなければ」と語った。

土砂の撤去作業は進むが、土地を離れる決断をする住民も=26日、酒田市北青沢
土砂の撤去作業は進むが、土地を離れる決断をする住民も=26日、酒田市北青沢



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