2024年(令和6年) 11月14日(木)付紙面より
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県漁業協同組合(本間昭志代表理事組合長)と県水難救済会は12日、酒田市の酒田港で、漁業無線機を持たない小型漁船員の救助要請のため、GPS(衛星利用測位システム)を活用した携帯端末で位置情報を特定する海難救助支援システムの実証実験を行った。西村盛県漁協専務理事は「普及すれば小型船舶事故や海中転落事故での死亡率減少につながる」と期待を寄せた。
これまで事故漁船からの救助要請の多くは携帯・船舶電話、漁業無線などが主な方法だったが、海中転落時や漁業無線機のない小型磯見漁船などからは救助要請ができないことが課題だった。今年8月にも酒田・鶴岡両市の沖合で高齢漁業者の海中転落事故で2人が死亡している。
システム開発事業の「M・S・K」(本社・埼玉県所沢市、水野尚淑社長)が開発したシステムは、パソコンと受信機で基地局を構成。漁業者が端末を身に着けることで、基地局から半径約10キロ圏内の位置情報を把握。緊急時はワンタッチで救助要請を発信でき、救助到着時間などを端末で受信できる。実証実験には多くの漁業関係者らが立ち会い、水野社長がシステムについて説明。その後、県漁協本所屋上に基地局を仮設し、約3キロ離れた港内の漁船に要救助者がいるとの想定で実証実験を開始した。海上でイカ釣り船に乗った遭難者役の進藤優一県小型いか釣漁業協議会副会長が「SOS信号」を発信すると、受信した基地局ではアラートが鳴り、緊急事態と位置情報を知らせた。
端末が大きくライフジャケットに入らないことや、障害物があると通信が途切れることがあり、実験に参加した進藤副会長は「まだ課題は多いが、複雑な操作がないのでこれまでの遭難信号より役立つと思う」と話した。西村専務理事は「漁業無線もスマートフォンもない状態で漁に出る高齢漁業者が多い。死亡事故を減らし、安全操業に向け、今後前向きな導入と普及を検討したい」と述べた。
2024年(令和6年) 11月14日(木)付紙面より
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鶴岡市の「いこいの村公園」チューリップ園で6日から10日にわたり、チューリップの球根植え付け作業が行われた。市民を中心にボランティア延べ100人ほどが参加し、来春に向けて丁寧に約100品種2万球の球根を植えた。
チューリップ園は庄内の春の風物詩として長く親しまれてきたが、2016年度に旧いこいの村庄内の閉鎖に伴い植え付けを休止。その後、市民有志でつくる「庄内チューリップ倶楽部」(中村恵二代表)を中心とする市民ボランティアの協力で、20年に一般公開を再開した。今春は2ヘクタールの園内で約3万球の色とりどりのチューリップが咲き誇り、多くの来園者を楽しませた。
公開再開当初は同倶楽部のメンバー約30人が作業を担ってきたが、会員の減少や高齢化で作業や園の維持が困難となった。そこで、いこいの村公園を管理する鶴岡市を通じて、チューリップ園の維持に協力してくれる団体や個人を募集。さまざまな方面からボランティア参加の応募があった。
園の維持には初夏の球根掘り上げと天日干し、夏にかけての球根の皮むきと根切り、秋の畝(うね)立てと植え付けの穴開け、植え付けなどの作業が必要。今年6月の球根掘り上げ作業にはボランティア約40人が参加した。
球根の植え付け作業は6、9、10日の3日間に分けて行われ、県庄内郵便局長会・夫人会や地元企業、JA鶴岡、鶴岡高等養護学校などのほか、一般は市民のほか東根市など内陸からも参加があった。
最終日の10日は市民や市職員など15人が参加。いこいの村公園西側のチューリップ園に続く小道沿いへ約5000個を植えた。中村代表がくいで開けた穴に1つずつ球根を入れ、「きれいに咲いてね」と声を掛けながら土をかぶせた。球根植えに初めて参加したという市内の金内千津さん(65)は「たくさんの知識を教わり、みんなと一緒に作業したので楽しかった。毎年チューリップを見に来ており、来春が楽しみ」と話していた。
チューリップは来年の雪解けごろに発芽し、早生品種は4月半ばに咲き始める。シーズンになると色とりどりのチューリップが回廊となって来園者を出迎える。
2024年(令和6年) 11月14日(木)付紙面より
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三川町の東郷小学校(大山浩司校長、児童141人)で12日、「防災朝会」が行われた。酒田河川国道事務所の職員が体育館に集まった全校児童に多発する豪雨災害から命を守る適切な行動を伝えた。
防災朝会は、授業が始まる前に自然災害の知識や心構えについて認識を深めてもらおうと同事務所が2018年に始めた。文部科学省の「防災教育」の一環で、これまで13小学校、合わせて約2000人の児童が参加した。
この日は流域治水課の職員が同校を訪れ、三川町内を流れる赤川が氾濫したらどうなるか、洪水ハザードマップを示して浸水するエリアや水の深さについて説明した。
職員は「今年7月、酒田と最上地区で死者が出る豪雨災害が起きた。温暖化による気候変動が進み、各地で水害が多発している。いつどこで起きるか分からないので、早めに避難する意識を身に付けましょう」と子どもたちに呼び掛けた。
2024年(令和6年) 11月14日(木)付紙面より
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新聞や本など活字文化推進のための事業を手掛ける文化通信社(東京、山口健代表取締役)は11日、全国の地域紙の優れた記事を表彰する「第4回ふるさと新聞アワード」の授賞記事を発表した。日本の女性科学者の草分けとして知られる、三川町出身の加藤セチ博士(1893―1989年)の功績を紹介した荘内日報の今年5月11日付の記事が、準優秀賞に選ばれた。贈呈式は29日、都内で行われる。
2021年から実施している表彰で、今回は全国70の地域紙について、メディアを研究する大学教授ら6人による有識者専門委員会が1人11、12紙の記事(今年1月1日―6月30日付)を閲覧。「地域を越えてより多くの人に読んでもらいたい」記事を約300本抽出。これを基に各委員による評価でポイントが高かった上位30本を1次審査通過とし、日本総合研究所理事長・政府税制調査会会長の翁百合氏、歴史家・作家の加来耕三氏、放送作家・脚本家の小山薫堂氏ら5人の審査員が最終審査を行い、授賞記事を決定した。
準優秀賞10本の一つに選ばれた荘内日報の記事は、25年度版の中学3年生向け道徳教科書に、学ぶことへの強い意志を持って困難を乗り越えて研究活動を続けた加藤博士の功績が掲載されたことを紹介したもの。後進の女性研究者育成にも尽くした博士について近年、再評価の動きが強まっていることも記事で併せて紹介した。
最優秀賞には丹波新聞(兵庫県丹波市)のシリーズ「能登半島ルポ―激震の爪痕の中で」が選ばれたほか、優秀賞には3本の記事を選考した。