2024年(令和6年) 11月15日(金)付紙面より
ツイート
「ANAホールディングス旅と学びの協議会」は読書と旅をテーマにした新しいツアーづくりを進めている。旅を通して本と触れ合い、人と語り合うことで質の高い旅行商品を生み出すことが目的。その最初のプロジェクトツアーが庄内を舞台に行われ、協議会のメンバーや首都圏に住む一般合わせて14人が参加、読書体験を組み込んだ旅のスタイルを検証した。
同協議会は2020年に結成した。メンバーは東京学藝大大学院の准教授でスタディサプリ教育AI研究所所長の小宮山利恵子さん(代表理事)、駒沢女子大観光文化学類教授の鮫島卓さん(理事)、慶應義塾大大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授の前野隆司さん(アドバイザー)、ANAホールディングス執行役員で未来創造室長の津田佳明さん(理事)を中心に一般個人や企業、各自治体で構成。「教育工学」「観光学」「幸福学」の視点から旅を科学的に検証している。
プロジェクトツアーのタイトルは「本と旅する やまがた庄内」。今月8日から10日までの2泊3日の日程で、湯野浜100年キッチン―善寳寺―ショウナイホテルスイデンテラス―土門拳記念館―山居倉庫―ミライニ酒田市立図書館―ピノコッリーナファームガーデン&ワイナリー松ケ岡を巡るコースを組んだ。今回は読書環境が充実した酒田市と鶴岡市を候補地に選んだ。
宿泊客用に約2000冊の本を用意している鶴岡市のスイデンテラスでは、ツアー客がそれぞれお気に入りの本をチョイス。田園が広がる景色を背景にゆったりとした時間が流れる時を過ごした。最終日に訪れたワイナリー松ケ岡ではワインの試飲やテラスランチ、「野外読書」を楽しんだ。
ツアー参加者は「スマホを使わない時間帯が増えデジタルデトックスにつながった」「子育てに忙しく読書する時間が取れなかったが今回のツアーを通して自分と向き合い自己肯定感が高まった気がする」「藤沢周平の小説に登場したみそが実際に売られていて本の内容とリンクして良かった。リアル感もより一層強くなった」と好評だった。
協議会メンバーの一人で丸善雄松堂(東京都中央区)の岩田千穂さんは「庄内は読書の旅にマッチしている地域の一つだと思う。これからも『本』という共通のキーワードで集まった参加者同士の出会いの機会となり交流が生まれる旅を探っていきたい」と話した。
協議会ではこの後、ツアー参加者のアンケート結果を集約しながら来年春をめどに「本」と「旅」をテーマにした具体的な商品開発(ツアー)を目指す。