2024年11月26日 火曜日

文字サイズ変更



  • プリント用表示
  • 通常画面表示

荘内日報ニュース


日付の新しい記事へページを移動する日付の古い記事へ
  • ニューストップ
  • 最新記事
  • 戻る

2024年(令和6年) 11月16日(土)付紙面より

ツイート

クロマツ林を未来に伝えたい

 マツが紅葉するはずがないのに、海岸線に近い県道沿いのクロマツが赤くなっている。庄内砂丘を象徴する景観の「白砂青松」を担うクロマツが「松くい虫」(マツノマダラカミキリとマツノザイセンチュウの総称)の感染被害を受けているためだ。被害を受けたクロマツは、感染拡大を防ぐため伐採されている。それも被害木が多過ぎて伐採が追い付かないのが現状のようだ。

 クロマツを枯らす松くい虫による感染被害は全国的に広がっている。感染木を助ける有効な対策がないとも言われる厄介な病気だ。だが、何としても次の時代に庄内のクロマツ林を伝え残さなければならない。

     ◇       ◇

 県庄内総合支庁によると庄内では1979(昭和54)年に松くい虫の被害が出始めた。2008年ごろに一時減少したが13年から再び増加に転じた。これまでの調査で、前年の夏、高温少雨となると、翌年に被害木が急増する傾向が見られるという。ここにも地球温暖化による気候変動が影響しているのだろうか。マツ枯れが全国的に発生している背景でもあるようだ。

 今ある庄内の海岸林は、かつて荒涼とした砂丘地だった。江戸中期、製塩の燃料にするなどのため砂丘地の樹木が伐採されたことで荒廃した。このため、西風に吹き飛ばされた砂は田畑を埋め、家屋の中まで入り込んで人々の暮らしを苦しめた。今月10日、遊佐町の西遊佐まちづくりセンターで「佐藤藤蔵祭」があった。佐藤翁はクロマツの植林を始めたことで知られ、今あるクロマツ林は佐藤翁らから植林活動が長年受け継がれたことで築かれた砂防林だ。

 庄内砂丘の海岸林は地域の共有財産であり、歴史的遺産を未来に残さなければならない。人工林や里山は人が手を加えないと荒廃すると言われ、「庄内海岸のクロマツ林をたたえる会」など多くの団体がクロマツ林の保全活動に携わっている。県森林研究研修センターでは害虫に強い「抵抗性クロマツ」の苗木を育てている。クロマツは10年で約3メートルに成長する。いずれ植栽されるだろう事が待たれる。

     ◇       ◇

 庄内砂丘は鶴岡市から遊佐町まで南北33キロ、幅1・5~3キロ。約7000ヘクタールに500万本のクロマツがあるという。防風・砂防林だから密林状態でいいというものではなく、間伐で通気性を良くし、林全体に日差しを届かせることで丈夫な木が育つ。

 今進められている松くい虫からクロマツを守る研究と保全活動は、風と飛砂に負けずに植林に挑んだ先人たちの闘いにも通じる。害虫に強いクロマツを育てて植林し、元気なクロマツ林を取り戻すという取り組みは気が遠くなる年月を要するに違いない。庄内海岸のクロマツ林は300年近い年月を経て築かれた。この遺産をぜひ子孫に引き継いでいかなければならない。先人の苦労に報いるためにも。

画像(JPEG)



日付の新しい記事へページを移動する日付の古い記事へ

記事の検索

■ 発行月による検索
年  月 

※年・月を指定し移動ボタンをクリックしてください。
※2005年4月分より検索可能です。

  ■ キーワードによる検索
   

※お探しのキーワードを入力し「検索」ボタンをクリックしてください。
※複数のキーワードを指定する場合は半角スペースを空けてください。

  • ニューストップ
  • 最新記事
  • 戻る
ページの先頭へ

ニッポー広場メニュー
お口の健康そこが知りたい
気になるお口の健康について、歯科医の先生方が分かりやすく解説します
鶴岡・致道博物館 記念特別展 徳川四天王筆頭 酒井忠次
酒井家庄内入部400年を記念し、徳川家康の重臣として活躍した酒井家初代・忠次公の逸話を交え事績をたどる。
致道博物館 記念特別展 第2部 中興の祖 酒井忠徳と庄内藩校致道館
酒井家庄内入部400年を記念し、庄内藩中興の祖と称された酒井家9代・忠徳公の業績と生涯をたどる。
致道博物館 記念特別展 第3部 民衆のチカラ 三方領知替え阻止運動
江戸幕府が3大名に命じた転封令。幕命撤回に至る、庄内全域で巻き起こった阻止運動をたどる。
致道博物館 記念特別展 第4部 藩祖 酒井 忠勝
酒井家3代で初代藩主として、庄内と酒井家400年の基盤を整えた忠勝公の事績をたどる。
致道博物館 記念特別展 第5部 「酒井家の明治維新 戊辰戦争と松ケ岡開墾」
幕末~明治・大正の激動期の庄内藩と明治維新後も鶴岡に住み続けた酒井家の事績をたどる。
酒井家庄内入部400年
酒井家が藩主として庄内に入部し400年を迎えます。東北公益文科大学の門松秀樹さんがその歴史を紹介します。
続教育の本質
教育現場に身を置く筆者による提言の続編です。
教育の本質
子どもたちを取り巻く環境は日々変化しています。長らく教育現場に身を置く筆者が教育をテーマに提言しています。
柏戸の真実
鶴岡市櫛引地域出身の大相撲の元横綱・柏戸の土俵人生に迫ります。本人の歩み、努力を温かく見守った家族・親族や関係者の視点も多く交えて振り返ります。
藤沢周平の魅力 海坂かわら版
藤沢周平作品の魅力を研究者などの視点から紹介しています
郷土の先人・先覚
世界あるいは全国で活躍し、各分野で礎を築いた庄内出身の先人・先覚たちを紹介しています
美食同元
旬の食べ物を使った、おいしくて簡単、栄養満点の食事のポイントを学んでいきましょう
庄内海の幸山の幸
庄内の「うまいもの」を関係者のお話などを交えながら解説しています

株式会社 荘内日報社   本社:〒997-0035 山形県鶴岡市馬場町8-29  (私書箱専用〒997-8691) TEL 0235-22-1480
System construction by S-Field