2024年(令和6年) 11月16日(土)付紙面より
ツイート
年貢米を巡って明治期の庄内で起こった事件の歴史的経緯をたどる「ワッパ騒動150年特別展」が15日、鶴岡市の致道博物館で始まった。庄内に伝わる多くの古文書を展示した同館は「騒動が起こってから150年ほどが経過した。民衆側と旧藩士族側それぞれの主張を整理し、『ワッパ騒動とは何だったのか』と考えてほしい」と話している。
ワッパ騒動は自由民権運動の先駆けとして知られる。当時の明治政府は1872(明治5)年に年貢米や雑税を米の代わりに金で納める「石代納」を許可したが、酒田県(第2次)は布告を農民に知らせず米納させた。当時、米価は高騰しており一部の特権商人が売却した年貢米から県は大きな利潤を得て、政府への上納金や松ケ岡開墾の費用に充てた。
これを知った農民たちは石代納許可や余分に納めていた年貢分の返還を要求し、騒動の指導者が東京に上って訴訟し法廷闘争を繰り広げた。「過納金を取り返せばワッパ(弁当箱、曲げわっぱ)いっぱいの金が返ってくる」と言われたことからワッパ騒動の名が付いたとされる。
会場には庄内地方に残された江戸後期~明治期の古文書を中心に54点を展示。「幕末の庄内藩と戊辰戦争」や「酒井家と旧藩士族」「第1次酒田県と大泉藩」など、近代における庄内の情勢や政治体制の移り変わりなど歴史的な背景ごとに当時の通達書や絵巻、日誌などが飾られた。メインのワッパ騒動に関する資料は、生活に困窮する反主流士族の移住訴えや農民の石代納要求など、騒動の発端となった出来事、森藤右衛門たちによる訴訟とその結末などをパネルで説明するとともに、県の布告や騒動に関わった人たちの訴状、嘆願書などが展示された。
展示は来年1月20日(月)まで。11月は無休で12月は毎週水曜と年末年始(28日~1月4日)が休館日。今月30日(土)午後2時から同館学芸員によるギャラリートークが行われるほか、12月8日(日)午後1時半と同22日(日)午後2時からワッパ騒動に関する講演会が行われる。講演会は申し込みが必要(人数制限あり)。問い合わせは同館=電0235(22)1199=へ。
呉服屋など「和もの」 ドールハウス展示
このほか旧西田川郡役所で常設展示されているドールハウス作家の故礒貝吉紀さんのシリーズとして、旧応接室を開放し「ドールハウス『和もの』」の常設展示を15日から開始した。礒貝さんの常設展示コーナーは愛好家や観光客から高い評価を得ている。