2024年(令和6年) 11月26日(火)付紙面より
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鶴岡市山五十川地区に伝わる民俗芸能「山戸能」と「山五十川歌舞伎」が23日、地区公民館で上演された。
山戸能の演目は明治30年ごろまで120番あったが、現在は9番までが伝承されている。例年、春と秋に地元で、8月下旬には道の駅あつみ「しゃりん」で「夕日能」として日本海を沈む夕日を背景に上演している。1964年に県指定無形民俗文化財に指定された。
山五十川歌舞伎の由来は定かではないが、約250年以上前、疫病をはらい村を救った鉄門海上人へのお礼として地元の若者たちが芝居を演じたのが始まりとされる。地区に鎮座する河内神社に奉納する神事歌舞伎として地区保存会のメンバーが伝統を受け継いでいる。山五十川歌舞伎は1986年に県指定無形民俗文化財の指定を受けた。
この日は山戸能で幕開け。舞台を清める「座揃」、全国でも珍しい稚児舞「恋慕の舞」、能の最初に演じる「式三番」、能の中でも人気が高い「羽衣」を舞った。引き続き上演された山五十川歌舞伎の演目は「仮名手本忠臣蔵」の7段目「祇園一力茶屋」の場面。役者が地区に脈々と伝わる伝統芸能を披露し会場に集まったファンを楽しませた。
一つの地域に能と歌舞伎が受け継がれているのは全国的に珍しい。いずれも「山五十川古典芸能保存会」が伝承している。山五十川自治会の本間秀志会長は「少子高齢化に伴い全国的に貴重な伝統文化が簡素化されたり失われているが、山五十川の古典芸能は一度も絶えることなく受け継がれてきた。地域コミュニティーを維持することが課題だがこれからも地区の大切な財産の保存伝承に努めていきたい」とあいさつした。