2024年(令和6年) 11月28日(木)付紙面より
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貸しオフィスとシェアハウス、飲食店が同居する複合シェア施設「ブランニュースペースなかまち」が26日、酒田市中町一丁目にオープンした。空き店舗を活用して建築材料卸売などを手掛ける仮設機材工業(同市こがね町一丁目、西村修社長)を中心に取り組んだもので、西村社長は「空き店舗をリノベーションし、にぎわい創出を図る事業の第1弾。2つ目、3つ目と展開して中心部の活性化につなげたい」と話している。
同社は、同市千石町一丁目の移住者向け住宅・地域交流拠点形成事業「TOCHiTO(トチト)プロジェクト」の事業グループ代表。移住希望者への情報発信など行う業務委託契約を市と結ぶ生活クラブ事業連合生活協同組合連合会(生活クラブ生協、東京都)の協力もあり、トチト内の住宅16室、貸しオフィス9室とも満杯。本町三丁目に独自に開設した移住者向けサテライト居住棟も満室の状態という。
移住者らの新たな受け皿として西村社長が目を付けたのは、市役所に近く、酒田産業会館前という絶好の立地で空き店舗となっていた旧五郎兵衛食堂。今年5月以降、リノベーションに取り組んだ。貸しオフィスは4タイプ5室で床面積は8―70平方メートル。女性専用のシェアハウスは3室を整備し、リビング、トイレ、ダイニングキッチン、システムバスなど共有部分を設置した。シェアハウスに関するノウハウを持つ首都圏からトチトに移り住んだ女性、生活クラブ生協が全面協力した。1階の店舗には、2019年まで旧酒田産業会館地階で営業していたフランス料理店「欅」がリニューアルして入居。合同会社ブランディング欅(冨樫忍代表)が運営する。店舗前は共同テラスとして屋外カフェ、ビアガーデンでの使用を見込む。
現地で行われたオープンセレモニーでは関係者約20人が出席。西村社長が「徒歩で暮らせるコンパクトシティやにぎわいの創出に寄与したい」とあいさつ、矢口明子酒田市長らと共にテープカットした。「欅」のオープンは12月1日(日)。シェアハウスや貸しオフィスは、既に入居希望者から問い合わせもあるという。
2024年(令和6年) 11月28日(木)付紙面より
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サケの溯上(そじょう)数が本州でトップクラスを誇る遊佐町の月光川水系で、水揚げがようやく本格化した。同町直世(すぐせ)の箕輪鮭漁業生産組合採捕場では24日、清流で知られる牛渡(うしわたり)川に仕掛けた鉄製のわなに入ったサケ500匹近くを捕獲、人工ふ化のためすぐに採卵、受精作業を行った。
同水系での平年遡上数は10万匹を超える。しかし近年は不漁続き。今季も平年の3分の1弱にとどまっているが、日によっては400匹ほどが上がるようになり、ようやく活気づいてきたという。
採捕場が月光川河口から約1・5キロと近いため、体力をあまり消耗することなくさかのぼってきたサケは元気いっぱい。組合員らは、跳ね回るサケの頭部を縄文人も使ったとされる木製のこん棒でたたき気絶させた。
続いて採卵作業。捕獲したばかりの雌サケの腹を鋭利な刃物で割くと、鮮やかなオレンジ色をした宝石のようなイクラがどっとあふれ出た。同組合の佐藤仁組合長は、7月25日の大雨で牛渡川も氾濫したものの早期に土砂のしゅんせつを終えたため、「サケの溯上には影響していないと思う」とし、今後の漁に期待をかけた。
2024年(令和6年) 11月28日(木)付紙面より
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県庄内地区羽越新幹線整備実現同盟会(会長・皆川治鶴岡市長)と庄内開発協議会(会長・矢口明子酒田市長)主催の「羽越本線風景写真コンテスト」の表彰式が26日、鶴岡市役所で行われた。酒田市若宮町二丁目の佐々木吉治さん(75)の「落ち鮎漁」が最高賞の同盟会長賞に輝き、同盟会長の皆川市長から賞状と記念品が手渡された。
羽越本線全線開通100周年を記念したコンテストで、県内外の17―96歳の48人から114点の応募があった。鉄道写真家の中井精也さん、土門拳記念館学芸員の王憶冰さんらが審査を行い、受賞作品3点、入選作品13点を決めた。
佐々木さんの作品は、2019年10月に酒田市本楯の日向川に架かる鉄橋で撮影した。鳥海山と投網の落ち鮎漁、鉄橋を通過する特急いなほ号を配し、これらの風景を映す日向川の水鏡など、多くの要素がありつつも、違和感なく一枚の写真に収めている点が高く評価された。
表彰を受け佐々木さんは「40年以上の写真歴で鉄道写真は10年ぐらいでまだまだ浅い方。記念のコンテストで最高賞を頂き、とてもうれしい」と話した。このほか中井精也賞に小林丈士さん(52)=鶴岡市、審査員特別賞に河野禎さん(66)=同=の作品が選ばれた。受賞・入選作品は30日―12月1日、三川町のイオンモールで展示され、その後は庄内地域5市町で巡回展示される。
2024年(令和6年) 11月28日(木)付紙面より
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地域をより良くするためのプロジェクトを実施したい人と、それを支援したい人をつなぐ「コミュニティ財団」設立に向けた動きが酒田市でスタート。キックオフを兼ねて23日、酒田を舞台にした新たなプロジェクトを発表するイベント「サカタ・プロジェクト・デザイナーズ」が酒田駅前交流拠点施設「ミライニ」で開かれ、高校生・大学生の熱のこもったプレゼンに市民らが聴き入った。
コミュニティ財団は、プロジェクトの実施者と支援者をつなぐとともに、寄付金など資金仲介・提供を行う団体。その歴史は古く1914年に米国で誕生した「クリーブランド財団」が起こりとされている。日本では1990年代後半以降、各地で設立。2014年にはコミュニティ財団の健全な発展を通じ、市民社会のより一層の成熟と主体的に取り組む地域社会の課題解決を促して持続可能性を高め、公共の利益を増進することを目的に「全国コミュニティ財団協会」(京都市伏見区)が設立された。
酒田での設立に向け今回、コミュニティ財団の意義を共有することで機運醸成を図るとともに、酒田を舞台にした若者による新たな挑戦を広く知ってもらおうと、県「若者がつなぐ・つながる地域おこし推進事業」の助成を受けて酒田青年会議所や市産業振興まちづくりセンター「サンロク」の若手利用者らが実行委員会(委員長・松本友哉合同会社とびしま代表社員)を組織し、キックオフイベントとして「―デザイナーズ」を開催した。
この日は2部構成で行われ、第1部は「コミュニティ財団ってなに?」をテーマに、滋賀県のコミュニティ財団「東近江三方よし基金」の山口美知子常務理事が先行事例を紹介するなどした。
第2部は地元高校生・大学生らが構築した、酒田を良くするための新たなプロジェクトをポスター・ステージで発表。このうちステージでは市内4高校、東北公益文科大、大正大、東北芸術工科大の生徒・学生が市内に点在する空き家を活用したゲストハウスの実践、市内での映画上映会の実施、飛島での芸術祭・文化行事の開催、バイオマスプラスチック「ライスレジン」を使った米梱包(こんぽう)袋の商品化など、これからの酒田を見通しながら報告した。
閉会後は交流会が行われ、集まった市民とプロジェクト発表者が意見を交わした。今後はコミュニティ財団に関する周知活動を行いながら賛同者を集め、来年度以降の事業開始を目指す。
2024年(令和6年) 11月28日(木)付紙面より
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怪獣映画「ゴジラ」の第1作を作った鶴岡市朝日地域出身の故本多猪四郎監督の作品を通し、鶴岡の風土を考える「本多猪四郎映画を語るフォーラム」が23日、同市山王町の鶴岡まちなかキネマで開かれた。
同キネマを学びと交流の場として活用している山王キネまち大学主催。怪獣映画というジャンルを切り開き、映像芸術の向上に多大な貢献をした本多監督を顕彰し、作品に込められたメッセージのルーツや背景について考えた。
フォーラムは本多監督の作品の一つ「空の大怪獣ラドン」上映後に行われ、約40人が参加した。同キネマを運営する山王まちづくりの三浦新社長が司会を務め、民俗学者の森繁哉さん、特撮映画愛好家で郷土史研究家の早坂優宏さん、映画評論家で明治学院大名誉教授の水谷史男さんの3人がパネリストとなった。
この中で森さんは「ラドンのラストシーンから、本多作品は『救済』が大きなテーマとして感じられる。旧朝日村大網で育った本多監督は子どもの頃から出羽三山の山岳信仰に触れる機会があり、その精神文化が根っこにあるのでは」と語った。
また、早坂さんは「ラドンが撮影された当時、日本のエネルギーが石炭から石油に替わりつつあり、その時の社会を色濃く投影している。さらに劇中に登場するせりふや、命に対するリアリティーから戦争を体験した本多監督の平和への願いが強く感じられる」と映画に込められた本多監督のメッセージについて解説。
水谷さんは「映画の最後にヒロインが助かって笑顔になるハリウッド作品と違い、『ラドン』ではヒロインがずっと泣いている。ラドンの最期にも涙を流すのも、本多監督が命に対して敬意を払い、リアリティーを追求していたからでは」と述べた。
「空の大怪獣ラドン」は12月1日(日)まで同キネマで上映される(火曜定休)。曜日によって変わる上映時間は同キネマのホームページで確認できる。アドレスはhttps://www.machikine.net/