2024年(令和6年) 11月29日(金)付紙面より
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酒田市名誉市民で世界的写真家・故土門拳さん(1909―90)の写真作品の中から、「質感」に焦点を当てた「土門拳のマチエール!」展が、同市飯森山の土門拳記念館(佐藤時啓館長)で開かれている。
フランス語の「マチエール」とは英語の「material(マテリアル)」と同じ意味で、作品の材質や質感を表す絵画的な言葉。土門さんは青年期、画家に憧れていた時期があり、写真家として大成後も雑誌の取材などで「マチエールの問題こそ近代油絵の重要な課題であると同時に、油絵とは全く違った意味で近代写真の重要な課題だと思う」と話すなど、絵画的な視点から写真について語っている。被写体の質感や触感に焦点を当て、仏像写真をクローズアップした「古寺巡礼」や1948年に発表した連作「肉体に関する八章」などから厳選した計161点を展示した。
皮膚の質感が伝わりそうなほど1匹のカエルを画面いっぱいに大きく撮影した「肉体は地に伏せど、神これを召し給(たま)わず」、傘、足袋、筆などさまざまな職人の「手つき」をクローズアップして写した連作「職人の手」、土門さんが「まるまるとふくらんだ下腹、指を突込んでくすぐりたくなるような大々としたお臍(へそ)」と、仏像の形から伝わる魅力や質感を語ったという「薬師寺金堂日光菩薩立像腹部」など、見る人の触覚に訴えるような作品が並ぶ。
展示は来年1月19日(日)まで。第43回土門拳賞を受賞した石川真生さん(沖縄県)の作品展「石川真生私に何ができるか」も同時に開催している。