2024年(令和6年) 12月3日(火)付紙面より
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病気や加齢などの影響で食べ物が飲み込みづらくなる「嚥下(えんげ)障害」を持つ人にも、酒田市のソウルフード「酒田のラーメン」を楽しんでもらおうと、市麺類食堂組合(石垣洋平組合長)と、嚥下食の研究などに取り組む「北庄内食援隊」(大沼寛隊長)は、とろみや形態を調整した嚥下調整食「やわとろ酒田のラーメン」を共同開発。同市亀ケ崎五丁目の「めん工房さらしな」で30日、関係者らを集めたお披露目会が開かれた。
人生の最期まで口から料理を食べる「食のバリアフリー」を目指し、医師や作業療法士、調理師などで結成している北庄内食援隊が、市内の高齢者施設の利用者らから「懐かしい酒田のラーメンをもう一度味わいたい」などの声を受け、「嚥下 酒田のラーメンプロジェクト」として企画。昨年10月から開発を進め、今年に入ってからは同組合の協力で完成させた。
「きざみ食」などが食べられる人を対象に、小麦「ゆきちから」を使用した伸びないが柔らかさを追求した麺、飲み込みやすいよう薄とろみを付けたスープとともに、舌でつぶせるようミキシングで繊維をなくし形成したメンマ、包み方などを工夫したワンタンといった具材にもこだわった。
この日のお披露目会には矢口明子酒田市長はじめ関係者22人が出席。「やわとろ酒田のラーメン」が振る舞われると、出席者からは「おいしい」「柔らかい」と驚きの声が上がり、次々に舌鼓を打っていた。
矢口市長は「スープのとろみや具の柔らかさから食べやすさを感じるが、味はまさに酒田のラーメン。伸びてしまった麺の柔らかさとは全然別物で本当においしい」と感想。同隊によると、将来市内の飲食店での提供や福祉施設のイベント食として提供することを目標に、高齢者施設などでの試食や巡回を繰り返し、開発や研修を進めていく予定。
石垣組合長は「『すすらずに食べられる麺』と聞いて、柔らかさと細さを両立する麺作りに苦労した。今後も改良を重ね、高齢者にもおいしく食べてもらう機会をつくれたら」と話した。