2024年(令和6年) 12月10日(火)付紙面より
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高規格道路「新庄酒田道路」(延長約50キロ)の一部となる「新庄古口道路」(同10・6キロ)のうち、未開通だった新庄市升形―戸沢村津谷6キロ区間が、7日午後に開通した。これにより新庄古口道路は全線開通となり、新庄酒田道路全体では約5割強が供用済み区間となった。
今回の開通区間は当初、2022年度の供用開始を見込んでいたが、21年度に発生した地滑りの影響で開通時期を見直していた。事業を進める国土交通省山形河川国道事務所では工事の一部を中断して対策を施し、変状したトンネルの復旧、トンネル覆工コンクリートの再施工などを進めた。
新庄古口道路は08年度に着工。暫定2車線で道路幅員12メートル。総事業費は約570億円。新庄市の本合海―升形(同2・4キロ)は15年11月に、戸沢村の津谷―古口(同2・2キロ)は18年7月に開通した。
今回の全線開通によって、地域の観光振興や産業支援、災害時における代替路線の確保、県立新庄病院への搬送時間の短縮による救急医療活動支援などの効果が期待されている。
この日は県、新庄市、戸沢村、国交省東北地方整備局の4者共催による開通式が戸沢村中央公民館で行われ、関係者約130人が出席。高橋克法国土交通副大臣、吉村美栄子知事、加藤文明戸沢村長が主催者あいさつ。来賓を代表し遠藤利明、加藤鮎子、菊池大二郎の3衆院議員、舟山康江、芳賀道也、佐藤信秋の3参院議員がそれぞれ祝辞を述べた。高橋副大臣はあいさつで「開通を迎えることができたのも地元の人の協力のおかげ。本区間の開通により、災害に強い道路ネットワークが確保された。新庄酒田道路の全線開通を目指し全力で取り組んでいく」と話し、山科朝則新庄市長は「人口減少や災害など課題はあるが、この道路を起爆剤にしっかりと地方創生を進めていきたい」とお礼を述べた。
その後、場所を石清水トンネル(868メートル)内の新庄側出入り口に移し、主催者、来賓、沿線自治体の首長らがテープカットとくす玉開披を行った後、パトカーの先導で渡り初めし開通を祝った。
2024年(令和6年) 12月10日(火)付紙面より
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「大黒様のお歳夜(としや)」の9日、庄内の鮮魚店は大黒様にお供えするハタハタ焼きの作業に追われた。長く庶民の味として親しまれてきたが、近年は庄内浜の水揚げが減少し価格が高騰。今年は天候不順が続き漁船が漁に出られない日が続いているため、鮮魚店やスーパーでは地物ハタハタの仕入れに苦慮したという。
創業60年を超える老舗の坂尾鮮魚店(鶴岡市千石町)では、2代目店主の坂尾和彦さん(62)が午前2時からハタハタ焼きの作業に追われた。焼くのは地物と秋田県産が半々で、合わせて約300匹。午前中に全て焼き終え、午後からみそを付けて田楽にして客へ引き渡すという。
坂尾さんは「今年はいつもの3分の1ほどしか焼かない。天候が悪くて船が(漁に)出ておらず、ハタハタの仕入れがとにかく大変だった。お客さんからの注文に『仕入れの数によってはお断りすることもある』と説明するのが鮮魚店としてつらい」と話す。
同市内の他の鮮魚店からは「10~20匹ほどしか仕入れられなかった」「なじみのお客さんの分だけ確保して店頭では売らない」という声も聞かれた。近年の不漁に加えて天候不順による出漁できない状況が影響し、スーパーや鮮魚店では価格が高騰。ハタハタ焼きの大黒様へのお供えを取りやめる家庭もあるという。
2024年(令和6年) 12月10日(火)付紙面より
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ユネスコ食文化創造都市認定10周年を記念する「つるおかふうどフェスタ」が7日、鶴岡市のグランドエル・サンで開かれた。海外の認定都市から料理人を招き、料理のデモンストレーションや振る舞い、鶴岡の食文化にまつわる体験、鶴岡の食文化推進に取り組むさまざまな団体の出展によるマルシェなど多彩な催しが行われ、子どもから高齢者まで約2500人が来場し、ユネスコが認めた鶴岡の食文化の幅広さと奥深さを体感した。
同市は2014年12月、豊富な在来作物や出羽三山信仰と結び付いた精進料理、多様な伝統的行事食などが評価され、国内初のユネスコ食文化創造都市に世界で6番目に認定された。21年には大分県臼杵市が日本で2番目の認定を受け、23年11月現在で世界56都市が認定されている。
10周年の節目に合わせたフェスタは市と鶴岡食文化創造都市推進協議会が主催。鶴岡の食文化を支える人や担い手などによるトークが繰り広げられ、最年少で野菜ソムリエプロとなった特別ゲストの緒方湊さん(16)=横浜市=も登場。「民田ナスはどこから伝わったか」などクイズを交えた講演で人気を集めた。
米国やブラジル、メキシコ、ポルトガル、ノルウェーなど海外の認定7都市のシェフによる各都市ならではの料理の実演と振る舞いも注目を集め、外国からの来場者が英語で質問するなど国際色あふれたイベントになった。笹巻や鶴岡雛(ひな)菓子、とち餅、しょうゆの実などを作る体験コーナーには子どもたちも多く参加し、にぎわっていた。
鶴岡に住み始めて5年ほどという菅野響樹さん(29)と遥さん(29)夫妻は「鶴岡の食の素材の素晴らしさと豊かさは本当にすごいと実感している。それを長く守っている食文化、素材だけでなく料理も全国、海外にもっともっと発信してほしい」と話していた。
8日は、来日したシェフが腕を振るうディナーがグランドエル・サンで開かれ、首都圏など県内外から訪れた約100人が、ユネスコ食文化認定都市がつないだ世界の料理を堪能した。
2024年(令和6年) 12月10日(火)付紙面より
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今年7月の記録的大雨の影響で荒瀬川が決壊・氾濫し家屋に大量の土砂が流れ込み、避難中だった女性=当時(86)=が亡くなるなど特に被害が大きかった酒田市大沢地区。地区外に避難したり、引っ越しを余儀なくされ、離れ離れになった住民が一堂に集まる交流会「まだみんなだで、大沢さ集ばろぜ」が8日、大沢コミュニティセンターを会場に開かれ、改めて大沢に思いをはせた。
今夏の記録的大雨で酒田市では、川の氾濫や土砂災害などで793棟の住宅に被害が出た。特に被害が大きかった大沢地区では住民の流出が著しく、地域コミュニティの維持が課題となる中、大沢コミュニティ振興会(後藤正一会長)は今回、「みんなで集まれる機会をつくろう」と、地区の農村RMO「大沢わぐわぐ未来協議会」、復旧・復興とより良い未来をつくるために活動する若者で組織する団体「酒田やわた未来会議(仮称)」などと共に交流会を企画した。
この日は離れ離れになった住民100人余が参加。再会を喜び合いながら地区の女性グループ「大沢んめちゃんズ」(遠田恵美子代表、13人)が調理したカレーライスに舌鼓を打った後、地区で地域活性化に取り組む阿部彩人さん(44)=合同会社COCOSATO代表=が制作した被害の様子や復旧の状況を伝える映像が映し出されると真剣なまなざしで見入り、中には涙ぐむ人の姿も。この後、後藤会長、遠田代表らが被災の体験、これからの大沢などを語り合ったほか、酒田の歌姫・白崎映美さんらのステージショー、大沢清流太鼓の演奏も行われ、「つながり」を再確認し合った。
これまで支えてくれた人たちに向け、交流会の模様は動画共有サイト「YouTube」で配信。後藤会長は「大勢から集まってもらい、ありがたい。復興に向けて動く行政・建設関係者、応援してくれるボランティアにも感謝。復興に突き進むしかないと思っており、頑張っていきたい」と話した。
2024年(令和6年) 12月10日(火)付紙面より
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鶴岡市桂荒俣出身の横綱柏戸(本名・富樫剛)の少年時代から相撲の世界に入るまでを描いた朗読劇「柏戸少年紀」が7、8の両日、3公演が同市三千刈の横綱柏戸記念館で行われた。脚本は本年度の高山樗牛賞受賞者の池田はじめさんで、昨年の初演から脚本を手直ししての再演。2日間で約200人が“目で見るラジオドラマ”とも言える朗読劇を堪能した。
「柏戸少年紀」は、同市櫛引地域ゆかりの人物を舞台化し、次世代に語り継ぐ歴史バトンプロジェクトの第2弾として昨年12月に初演した。子どもの頃から相撲が強かったが相撲取りにはあまり興味がなかったことや祖父の手伝いで毎日リヤカーを引いて鶴岡まで果物を売りにいったこと、人助けをしたこと、親方の招待で東京見物して入門を決めたことなどのエピソードを7人の演者と松本健一さんのサックス演奏でつづった。
地元の神社で行われた梵天相撲の場面では、演者が代わる代わるせりふを語り、緊迫した一番だったことを表現。訪れた人からも「光景が浮かんでくる演出が素晴らしかった」「柏戸の偉大さが分かった」などの声が上がっていた。池田さんは「昨年も柏戸の命日(12月8日)に合わせて上演した。練ればもっと良くなると思い、再演を決めていた。楽しんでいただけてうれしい」と話していた。