2024年(令和6年) 12月7日(土)付紙面より
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鶴岡市立加茂水族館(奥泉和也館長)は地元の旅行会社とタイアップし、新たなインバウンドに対応した取り組みを始めている。外国人が求める観光目的が日本人とは大きく違うことに着目。同水族館の魚匠ダイニング沖海月の須田剛史料理長(49)の元には「魚の神経締めを教えてほしい」といった専門的な要望が寄せられている。須田料理長は「こうした外国人のコアな部分に応えていくのが私たちの役割。鶴岡、庄内に訪れた外国人が『ためになった』『また来たい』と思ってもらえるよう努力したい」と話している。
沖海月には年々、日本料理の本質を学びたいという外国人が増えている。今年に入りアメリカ、カナダ、フランス、ポーランドなどから個人と団体を合わせて約30人が訪問した。目的は神経締めのほかに鮮魚のさばき方、すしの握り方、だしの取り方などさまざま。ハワイ大学の女子学生(20)は「フグの調理技術を教わって免許の所得を目指したい」と高い目的意識を持って来鶴した。先月、アメリカから来た4人家族は母国では食べられないフグ料理を楽しんだ。特に毒を抜いて熟成させた卵巣を食べさせると「アメージング」と驚きの表情を見せたという。
須田料理長から直接日本料理を学ぶ体験ツアーは観光プロモーション旅行会社「The Hidden Japan」(本社・酒田市新橋二丁目、山科沙織代表)のデレック山下さんがコーディネートし、通訳も兼ねている。デレックさんは「外国人観光客は日本の奥深いところを知ろうという意識が高い。ごく普通のメニューを組んでも興味を示さない場合もある。年々、『深掘り』する傾向が濃くなっている」と分析する。
須田料理長は「訪日外国人から喜んでもらうことで鶴岡、庄内、山形のPRに結び付くと思う。これからもデレックさんたちと連携を取り合い、新しいインバウンドの形に適応していきたい」と語った。
2024年(令和6年) 12月7日(土)付紙面より
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今年も残りわずか―。鶴岡市の荘内神社(石原純一宮司)斎館で6日、新年に向けた縁起物作りが始まった。破魔矢や熊手、来年の干支(えと)「巳(み)」の張り子など約1万体、特別御朱印約3200枚を用意し、初詣に備える。
この日は石原宮司と神職、巫女合わせて4人が午前から縁起物作りを開始。破魔矢に絵馬とお守りを取り付けたほか、御朱印に筆で神社名を書き込む作業などに追われた。仕上げた縁起物は本殿で祈祷(きとう)し、家内安全や除災招福、諸願成就の願いが込められる。
石原宮司は「今年は元日の能登半島地震に始まり、大規模な自然災害が発生するなどいろいろあった。来年の干支は乙巳(きのとみ)。乙は草木がしなやかに伸びてゆく様を表しており、巳(蛇)は再生する。どんな逆境でも負けずに立ち上がるような、そんな良い一年となりますように心を込めて縁起物を作っている」と話していた。
同神社では、15日に初詣で奉仕する巫女たちの研修会が行われる。その後はすす払い(16日)、餅つき(28日)と新年に向けた行事が続く。
2024年(令和6年) 12月7日(土)付紙面より
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太平洋戦争が終結したのは1945年8月15日。以来「終戦の日」になり、来年は「戦後80年」に当たる。「終戦」というより「敗戦」との言い方が当たると思われるが、年月を経るごとに、戦争の実体験を記憶にとどめる人は減った。今、団塊の世代と呼ばれる人は、終戦後の47年以降生まれの後期高齢者。もちろん戦争を体験していない。
自衛隊は世界有数の軍事力を誇るが、憲法上「軍隊」ではない。さらに日本では軍事力より政治判断が優先する「文民統制」(シビリアンコントロール)が機能している。しかし、太平洋戦争開戦前は、軍部の力が政治判断に優越していて、間違った指導体制によって不幸な戦争へと突き進むことになった。
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歴史研究家で作家・半藤一利著の『歴史と戦争』で、鶴岡市出身の石原莞爾・陸軍中将の予言に触れている。石原氏は開戦直後、大学での国防学の講義で「この戦争は負ける。財布に1000円しかないのに1万円の買い物をしようとしている。米国は百万円持って1万円の買い物をしている。そのアメリカと戦って勝てるわけがない」と語ったと記述している。
41年12月8日、ハワイ・真珠湾の米海軍太平洋艦隊基地への奇襲攻撃で打撃を与えた。しかしその後は敗戦続き。軍部は「敗退」を「転戦」と言いつくろって国民の目をあざむいた。物資不足で台所の鍋や釜など「1戸1品献納運動」という金属供出令で生活必需品まで回収、耐乏生活を強いた。もとより勝ち目のない戦争だった。
戦況が悪化する中、アッツ島で全滅した日本軍の悲劇を、軍部は「玉砕」と美化し、日本人の美意識のように語って戦意を鼓舞した。開戦から2年後には雨の神宮外苑で学徒約2万5000人の壮行式があり、東條英機首相は学生を「国の宝」と呼んで有為な人材を戦地に送り出した。軍部には、人の命を尊ぶ意識など全くなかった。3年8カ月に及んだ太平洋戦争で、日本の犠牲者は軍人、民間人合わせて約310万人、東南アジア諸国では2000万人とも語られる。
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世界ではウクライナに侵攻するロシア、中東では国家間の紛争や内戦が続いている。ロシアは北朝鮮の兵士を前線に送っていると言われる。自国の兵士の死傷者が増えれば国内の反発を招く。政治批判から国民の目を反らすための作戦という。軍部の指導者は人を人とも思わない。戦争は人を鬼に変えてしまうということであろう。
臨時国会では防衛予算の論戦も交わされた。自民党は憲法改正で自衛隊明記を議論し、野党は反対の姿勢だ。しかし日本周辺では領海・領空侵入などの穏やかでない他国の動きが頻発している。専守防衛の力は保持しなければならないとしても、平和外交で争い・紛争のない世の中を目指すことこそが肝要ではないだろうか。
2024年(令和6年) 12月7日(土)付紙面より
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鶴岡市立図書館本館(五十嵐恭子館長)では恒例の「クリスマスえほんまつり」を開催しており、25日(水)までの期間中、クリスマス関連の絵本展示やラッピングブック、おはなし会など多彩なイベントを行う。
同館では読書推進事業の一環として「えほんまつり」を開催。クリスマスを前にツリーを飾るほか、絵本コーナーの窓際の本棚の上に関連本約50点を展示、折り紙で作ったサンタクロースやリースなどを飾ってクリスマス気分を盛り上げている。
ラッピングブックは、おはなしボランティアが選んだ絵本や児童書を2冊セットにして、中身が分からないように包んだもの。赤い包みは幼児向け、緑の包みは小学校低・中学年向き、青い包みは高学年向きで、合わせて140セット準備した。訪れた親子連れらが手に取って選んでいた。同館では「子どもたちにこれまで読んだことのない本に出会ってほしいとの願いから行っている。ドキドキ感を味わって」と話している。
また、いつものおはなし会をクリスマス仕様にバージョンアップした「ふゆのおはなし会」を7日(土)から25日まで7回開催する。時間などの問い合わせは鶴岡市立図書館=電0235(25)2525=へ。
2024年(令和6年) 12月7日(土)付紙面より
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県ベストアグリ賞の表彰式が4日、県庁で行われた。今回は8団体が受賞し、このうち庄内からは最優秀の農林水産大臣賞に鶴岡市寺田の株式会社治五左衛門(じござえもん)、ベストアグリ賞に農事組合法人ビーンズ本楯(酒田市本楯)がそれぞれ選ばれた。
治五左衛門は、庄内産の「だだちゃ豆」の良食味と高収量を両立するため、きめ細やかな栽培管理に取り組み、地域の平均を上回る高単収を挙げている。また、高い直接販売率と高単価を実現し、安定した利益を確保。将来的な規模拡大に対応するため、本年度から県の外国人材活用トライアル事業を活用し研修生を受け入れるなど、地域の多様な担い手育成に取り組んでいることなどが評価された。
一方、ビーンズ本楯は水田をフル活用しながら大豆生産に取り組み、収穫作業を請け負っている。大豆と飼料用米の輪作体系を確立し、肥料費の節減を図りながら多収を実現。また、高収量ほ場の地権者には加算精算する法人独自の制度を設けている。さらに啓翁桜やシャインマスカット栽培の周年農業で、収益性向上を図っている。
表彰式では、東北農政局の松原秀雄地方参事官が治五左衛門の石塚寛一代表取締役へ農林水産大臣賞を手渡した。また、石塚代表取締役とビーンズ本楯の飯塚将人代表が吉村美栄子知事から県ベストアグリ賞を受け取った。
石塚代表取締役は「23年間、だだちゃ豆を栽培してきて今回受賞したことは大きな励みになる。だだちゃ豆のブランド力を高め、日本だけでなく世界に発信していきたい」と喜びを語った。
県ベストアグリ賞は、県優秀農家発表会(1972年~81年)、県農業者実践成果発表会(82~91年)を拡大継承して92年に創設された。 地域の環境を生かし優れた経営を実践している先駆的な農業者を表彰し、その取り組みを県内に広く紹介し普及することで、本県農業の振興と発展を図っている。