2025年(令和7年) 1月30日(木)付紙面より
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鶴岡市は28日、地元にある山形大学農学部や慶應義塾大先端生命科学研究所などと連携し、バイオ技術で変革をもたらし食産業・食文化に新たな価値の創造を目指す「鶴岡ガストロノミックイノベーション計画」が、国の事業採択を受けたと発表した。大学や参画企業による研究所を新たに設けるほか、両大学に連携科目を開設して食産業の開発分野で活躍できる人材育成にも取り組む。
国が2018年度から進める「地方大学・地域産業創生交付金事業」で、県内では初の採択。鶴岡の計画は25年度から10年間で、予定する最初の5年間の事業費は約22億円となり、国の交付金や特別交付税措置によって市の実質負担額は約1億6000万円と見込まれる。
計画では25年度内に鶴岡サイエンスパーク内に研究所を設け、専任の研究員や両大学の教員、国内外からの招聘(しょうへい)研究者ら30人規模で、バイオ技術を活用した食分野の研究開発を強化する。当面は、事業に参画する慶應先端研発バイオベンチャー「フェルメクテス」(鶴岡市)が開発し、安価で低環境負荷のタンパク質源として食品などへの応用が期待されている「納豆菌粉」を活用した新食材開発に取り組む。このほか、メタボローム解析技術を活用した高付加価値食品開発、畜産分野の新飼料開発などにも取り組む。他の企業にも今後、事業への参画を呼び掛けていく。
事業責任者は、慶應先端研と包括連携協定を結び、サイエンスパーク内に研究活動拠点を設けている、資生堂(東京)の佐藤潔みらい研究グループ上級研究員が担う。
2025年(令和7年) 1月30日(木)付紙面より
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鶴岡市温海地域の槙代地区で26日、「つながろう槙代“コロナ終息お礼”つな打ち」と銘打った奉納用のわらのしめ縄作り作業が行われた。地区内の20―80代の男性約20人が槙代公民館に集まり、分担作業で協力し合って鎮守の大鳥神社や皇太神社、樹齢400年を超えると言われる地元の「大ケヤキ」に飾るしめ縄5本を作り上げた。
槙代地区では以前、地区内を流れる小国川に架かる木製の橋が洪水で流されないようにと、橋桁をつなぎ留めるため、地区を挙げた共同作業でわら縄を編み大綱を作っていた。その後、丈夫なロープの普及で綱打ちは途絶えたが、世代を超えたつながりを持たせようと、40年ほど前に共同作業を復活させ、地区の男衆たちによる綱打ちを継続している。
この日は、事前に古くから使っている「わら打ち」の機械で柔らかくしたわらを10本ほど束ねて小さな束を作り、これを継ぎ足しながら長く太い綱に仕上げていった。天井からつるして4人一組で「よいしょ、よいしょ」と声を掛け合い、呼吸とリズムを合わせ、よりをかけていった。最大直径15センチで長さ9メートルの綱1本と、長さ4メートルを4本の計5本を3時間ほどで作り上げた。わらは稲束を杭(くい)掛けしている地元農家の庄司新助さん(76)が毎年提供している。庄司さんは「5反のうち、はえぬきの1反を杭掛けしている。均等に天日を当てて乾燥し、丈夫なわらにするため、毎年3回は掛け替えている。手間はかかるが地元のため、体力が続く限りやり遂げたい」と話した。
槙代自治会の板垣金一会長は「集落の各世帯が集まって共同作業をすること自体に大きな意味がある。細い1本1本のわらがつながって強固な1本の綱になる。この綱のように槙代集落のつながりを大切にして保っていきたい。本当は綱打ちは名目で、油揚げ(厚揚げ)と長ネギ、卵で作った特製のつまみでみんなが楽しむ、反省会の飲み会がメインです」と笑っていた。
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海にまつわる民話や伝承を後世に伝える、一般社団法人日本昔ばなし協会(沼田心之介代表理事)と日本財団「海と日本プロジェクト」の推進事業「海ノ民話のまちプロジェクト」で、遊佐町に伝わる民話「鮭の招く石」が「海ノ民話アニメーション」に選定され、昨年12月に動画が完成。監督を務めた沼田代表理事が23日、遊佐町を訪れ松永裕美町長を表敬訪問するとともに完成報告会を行った。
海ノ民話のまちプロジェクトは日本財団「海と日本プロジェクト」の一環で、全国各地の海にまつわる民話をアニメ化し、話に込められた警鐘や教訓を子どもたちに分かりやすく伝えようと2018年から取り組んでいる。前年度までに65自治体に伝わる67の民話のアニメ制作を行った。
今回、鶴岡市の「湯野浜の大亀」、酒田市の「トドの恩返し」に続き、県内3例目として同町の「鮭の招く石」を海ノ民話アニメーションに選定。鳥海山の麓にある永泉(ようせん)寺で、すみ着いたネコが毎日のように鮭を取ってくるのを不思議に思った和尚が、ネコを追いかけ近くの川に行くと、川の中にある不思議な石が鮭を呼び寄せ、鮭が川面を埋め尽くすほどあふれかえっていたというストーリー。江戸―明治期ごろまで生息していたと思われる、絶滅したニホンカワウソも登場する。沼田代表理事の取材・構想を基に、人気番組だった「日本昔ばなし」の制作陣らが作品を手掛け、約5分半のアニメに仕上げた。
完成報告会には町立図書館、町教育委員会、鳥海山・飛島ジオパーク推進協議会などで構成した実行委員会など計10人が出席。沼田代表理事がアニメDVDとともに、海ノ民話のまち認定証を松永町長に手渡した。アニメを見た松永町長は「永泉寺の風景や鮭の姿など、よく特徴を捉えて描写されていてありがたい。町オリジナルの教材として活用し、子どもたちに町の特色や誇りを伝えていけたら」と感想を述べた。
沼田代表理事は「海と川の恵みを象徴するような話で、石に鮭が集まるという不思議にも魅力を感じた。子どもたちにはもちろん、親世代にも地元の魅力を知るきっかけとして広がってくれたら」と話した。
町では今後、町教育委員会や観光協会などと相談しながらアニメの活用方法を模索していくという。海ノ民話アニメーションはユーチューブ、同プロジェクト公式サイトでも見ることができる。アドレスはhttps://uminominwa.jp/
DVDの購入や動画に関する問い合わせは同プロジェクト事務局=電080(9264)3366=へ。
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鶴岡市立櫛引中学校(佐藤大吾校長、生徒115人)で27、28の両日、庄内浜文化伝道師講座が行われた。伝道師たちが同校を訪れ、旬の寒ダラ(マダラ)の解体を披露するとともに、切り身やタラコを使った料理に中学生が挑戦した。
庄内浜で水揚げされる地魚や食文化、調理方法などを学び、古里の魅力を再発見してもらおうと同校が県庄内総合支庁水産振興課の協力を得て実施した。
2日目の28日は2年生26人が参加。庄内浜文化伝道師はブランブラン・ガストロパブ(鶴岡市末広町)オーナーシェフの五十嵐督敬さん、ゆらまちっく戦略会議(鶴岡市由良自治会)の齋藤勝三会長など4人が同校を訪問した。
調理は五十嵐さんが担当し、タラは地元由良漁港で水揚げされたばかりの8・7キロの雌が用意された。五十嵐さんがタラの腹に包丁を入れ、内臓を取り出すと女子生徒の間から悲鳴のような声が起こる一方、胃を開くとエビやイカが見つかり、目の当たりにした男子生徒が「おおっ、すごい」と歓声を上げていた。
身を三枚におろす間、五十嵐さんが「家で魚をさばくことはある?」と生徒たちに質問。生徒たちは「切り身を買ってくることが多いよね」と顔を見合わせながら答え、笑い声が上がるなど和気あいあいとした雰囲気で講座が進んだ。
その後、五十嵐さんが切り分けた身でソテー、タラコを使ったスパゲティを作り、「万能だしは日本酒が入っているので、しっかり火を入れよう」「切り身は皮の部分からしっかり焼くと香ばしくなる」など調理のポイントを生徒たちに伝えた。完成品を味見した生徒たちは「ホワイトソースがとても合う」「タラコの味がはっきり分かる」と“食レポ”した。
タラの解体を見学した前田奏翔さん(14)は「タラの骨を切る際に感じたことのないような音が聞こえて驚いた。普段料理しないのでソテーやスパゲティがうまくできるか不安」と話していた。