2025年(令和7年) 3月29日(土)付紙面より
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鶴岡タクシー(鶴岡市末広町、山田興也代表取締役)が4月1日から夜の営業をやめる。ドライバーの高齢化と人手不足、働き方改革(2024年問題)や燃料費の高騰が重なり営業時間を短縮する決断に迫られた。4月以降、鶴岡で24時間営業を継続するのは出羽ハイヤー1社(新形町)となり、少なからず市民の足に影響が出そうだ。
「本当に申し訳ない。全社的に話し合いを進めてきたが、苦渋の決断だった」―。取材に応じた山田社長が口を開いた。
同社のドライバーは20人ほど。一番若い運転手は30代半ばで、60代と70代が中心という。「市民の足を守る使命感」で24時間体制を敷いてきたが「これ以上、夜間営業を続けるのは困難」と判断。1日から営業時間を午前6時~午後5時までの時間帯に変更することにした。
鶴岡市にあるタクシー会社は同社と大和交通、出羽ハイヤー、庄交ハイヤーの4社。大和交通は2024年問題で昨年10月、これまでの24時間制から深夜帯(午前1時~同6時)をやめた。庄交ハイヤーは午後9時まで営業している。
鶴岡タクシーの山田社長は「募集しても若手の運転手がなかなか来てくれない。高齢ドライバーの後釜の確保が難しい」と実情を説明する。日中にシフトすることでドライバーの働き方改革を推し進める。
大和交通(鶴岡市日枝)の伊藤淳社長は「どの業種も頭を抱えている問題だと思うが、特にこの業界にとって人手不足は深刻。365日24時間制の中で働き方改革を求められても法令をクリアするため、どのようにドライバーを回したらいいのか。昨秋、稼働率が悪い深夜帯の営業をやめざるを得なかった理由は、それ(2024年問題)が大きかった」と話す。
一方、出羽ハイヤーの柿崎裕社長は「今のタクシー業界は高齢者を中心に病院やお医者さん、スーパーの送り迎えで夜より日中の方が忙しい。うちとしても採算が合わなければ夜の営業を考えなければならない。4月から夜間については飲食店経営者とお客さんにタクシーの待ち時間を極力なくすよう協力をお願いする」という。同社には『早朝のタクシーがないと新幹線で東京に行く特急いなほ(午前5時46分鶴岡発―新潟行き)に乗れなくて困る』といった市民の声が寄せられている。
各タクシー会社は「路線バスと同じタクシー(ハイヤー)も地域の公共交通。運行を維持するためには行政の協力が必要、補助金制度の検討をお願いしたい」と要望する。
鶴岡市は今年の夏(7月~9月)、70歳以上の高齢者と妊婦を対象にタクシー料金の1割を負担する「ピークシフト事業」(午前11時~午後4時ごろまでの利用)を試験的に行う。2種免許取得の助成も続ける予定だ。同市地域振興課は「まず4月以降どうなるか、状況を見てみたい」と話す。
隣県の秋田県大館市では今月末で深夜から早朝帯(午前2時~6時)に運行するタクシー会社がなくなる。先月21日には米沢タクシー(米沢市万世町・従業員22人)が山形地裁米沢支部に自己破産を申請した。台数が多く知名度は高かったが、2020年以降、新型コロナウイルスの影響を受けて業績が悪化。資金繰りに苦慮していたという。
地方で加速する少子高齢化。多くの業種で社員の高齢化と人手不足が続く中、タクシー業界にも波が押し寄せている。