2025年(令和7年) 4月2日(水)付紙面より
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俳優や製作スタッフなど映画に関わる人材を育成する「スタジオセディック・シネマスクール」が29、30の両日、鶴岡市泉町の市勤労者会館で開かれた。県内外の俳優経験者などが即興の演技を通して個性の出し方などを学んだ。
シネマスクールは、数々の映画が撮影されたロケ地の「スタジオセディック庄内オープンセット」(同市羽黒町川代)などを運営するM&N CO(同市末広町、丸山典由喜社長)の主催。俳優や脚本家、製作スタッフなど映画に必要な人材かつ全国に発信できる実力者を長期的に育てようと開催している。講師は庄内や本県にゆかりのある映画監督や俳優などが担当している。
今回の講師は映画監督の三原光尋さんが務めた。三原さんは「風の王国」(1992年)で監督デビュー。4人の料理部員がコンテスト優勝を目指して奮闘する「乙女のレシピ」(2013年)は鶴岡市の羽黒高校を舞台にした。昔ながらの豆腐店を経営する父娘の心温まるストーリーを描いた「高野豆腐店の春」(2024年)は第26回イタリア・ファーイースト国際映画祭で最高賞のゴールデンマルベリー賞など国内外合わせて10冠に輝いた。
受講者は地元庄内や山形市など内陸、宮城県や秋田県などから集まった30―60代の男女17人。いずれもキャストやエキストラで映画に出演経験があるか、シネマスクール受講の経験があるという。29日はシナリオに沿った演技について講義が行われた。2日目の30日は「理容店で怒る客と怒られる店スタッフ」というシチュエーションを基に、受講者が客とスタッフ役を入れ替わりながら即興でシナリオを組み立て、演技を披露した。
「短めの散髪を頼んだのに仕上がったら坊主」に怒号を上げる男性や、「これじゃデートに行けない!」とヒステリックに叫ぶ女性など、さまざまな“怒り”を表現。同一のシチュエーションのため設定が似通ってしまう中、それぞれ工夫しながら演技した。
全員が演技を終えた後、三原さんは「人は不測の事態に出合うと考える時間ができる。皆さんはシナリオを早く展開しようと怒り出すタイミングが早かった。リアルに考えた上でどう見せていくのかが大事。また、真剣に怒るほどリアルを感じる」とアドバイス。
さらに「自身の個性を出すことが大事。自分の魅力を引き出せる役者は、監督だけでなくいろいろな人の目に留まる。そういう人を使いたい、活躍させたいと感じる」と話した上で「監督も俳優も決定的に正しい方法論はなく、どんなことをやれば成功するなんて分からない。どんなに苦しんでも『0・1%でも表現が高みにいけたら』と考えながら私たちは映画を作っている」と語った。