2023年(令和5年) 10月12日(木)付紙面より
ツイート
幕末から明治期を生きた旧庄内藩の漢学者・中台元(なかだいはじめ)(1838~88年)や弟子が残した「華陽洞文集」を基に、時代の変遷を体験した中台が後世に伝えようとしたことを学ぶ講演会が6日、鶴岡市の新茶屋で行われた。
中台は直矢、君道、華陽、永建、安節など多くの呼称を持つ。庄内藩侍医中台元倫(直益)の長子として与力町に生まれ、1852(嘉永5)年から藩校致道館で学ぶ一方、早田知元のもとで漢学を修めた。維新後の73(明治6)年に上京し、東京の師範学校で1年学んだ。77(明治10)年12月に鶴岡変則中学が設立されると教員として招かれ、86(明治19)年に廃止されるまで在任した。
特に漢詩文に優れ、多くの門人を指導した。晩年は鶴岡の北郊播磨村(現在の鶴岡市播磨)に隠せいし庄内の歴史を深く研究した。著書に「大泉地名考」「大泉古録」「荘内人物誌」などがある。
中台の遠い親戚で鶴岡市出身の五十嵐米子さん(青森県十和田市在住)が、知人で北海道教育大名誉教授の潟沼誠二さんに中台家の家系図解読を依頼したことをきっかけに、弟子たちが中台の教えをまとめた「華陽洞文集」を潟沼さんが現代語訳し刊行した。
今回の講演会は潟沼さんを講師に招き、中台家の親類や一般聴講者など約40人が聴講。華陽洞文集刊行を祝う会も兼ねており、講演に先立ち中台家の供養も行われた。
潟沼さんは「地方儒者中台直矢が見た幕末・維新」と題して講演。「『華陽洞文集』は中台の文章を、弟子たちが注釈を付けて表した本」と説明し、「幕末は尊王攘夷運動が盛んで、特に水戸藩の天狗党と呼ばれる一派は筑波山挙兵で有名。一派は攘夷を口実に、近隣の町村の役人や商人らを脅して金品を徴発し、少しでも抵抗すれば放火して殺害した」と解説。
さらに「中台は焼け落ちた村の様子を弟子たちに伝えており、都合の良いことばかり教えるのではなく時代の動きから目をそらさなかった彼の人となりを伝えている。面白いことに洞文集の最後で『この文集が後世で何か役に立つなら、戦争ばかりの世の中ではなく農耕を中心とした国に作り替えてほしい』と記されている」と話した。
聴講者たちは時代の変遷を見た漢学者の生きざまに耳を傾け、文集に込められた思いなどを読み取ろうとしていた。
2023年(令和5年) 10月12日(木)付紙面より
ツイート
世界で活躍するクリエーティブディレクター、マンジョット・ペディさん(54)を招いた講演会が10日、酒田市の酒田光陵高校(藤田雅彦校長)で開かれ、マンジョットさんが生徒たちにこれから求められる能力や考え方について自身の経験などを伝えた。
マンジョットさんはインド・ニューデリー出身。1997年広告会社のTYOに入社。トヨタ自動車をはじめとしたプロモーション戦略、伊勢神宮式年遷宮のPRなどに携わった。現在、プロモーション会社「just on time」と「next is east」(米沢市)の社長を務める。一般社団法人「KAiGO PRiDE」代表理事。
この日の講演会は県教委が取り組んでいる「県魅力ある県立高校づくり推進事業」の一環として、同校スポーツ・文化後援会との協同事業で企画。全校生徒のほか、教職員、関係者ら約800人が聴講した。
「Designing the NEXT Japan」と題して講演したマンジョットさんはこれまでの仕事の経験などを紹介し「成功にはルールはないが、しかし、失敗から多くを学ぶことができる。東日本大震災以降の日本は右肩下がりだったが、これがずっとは続かない。皆さんたちが右肩上がりにしていく時代になる」と激励。
また、「五感を使い、365日一日一つ感動したものなどに気付くことができれば、1年後には大きく変わっているはず。気付きで大切なのは好奇心と観察力。そして、伝えることで初めて自分のものになる。自分の考えを友達や仲間に積極的に伝えてほしい。世界とコミュニケーションを取る上で大事にしているのは他の人との共感。共感は時間とともに深まっていくもの」などと生徒たちに訴えた。生徒会長の後藤颯太(そうた)さん(17)=ビジネス会計科=は「今日聞いた話を参考に多くの生徒たちに自分の意見を伝えられるようにしていきたい」と話していた。
講演会終了後は、同校写真部など約50人に「カメラセミナー」を開催。見栄えのする写真の撮り方などについて解説した。
2023年(令和5年) 10月12日(木)付紙面より
ツイート
庄内町の南口集落に伝わる大釜を使った芋煮会が8日、南口公民館前広場で開かれ、住民たちが熱々の芋煮を味わいながら交流を深めた。
同集落では、10年前に皇大神社の社殿の屋根を改築した際、床下からかつて住民がみそ造りに使った鉄製の大釜(幅約1メートル、深さ約60センチ)が見つかった。以来、南口部落会(大井雄一会長)らが中心となって、毎年この時期に大釜を使った芋煮会を催している。今年で10回目。
この日は付近住民ら約40人が参加。午前9時から準備を進め、子どもたちが集落の畑に植えた里芋などの材料をふんだんに使った庄内風のみそ仕立ての芋煮を大釜で約150食分仕上げた。地区住民らは、湯気の上がる熱々の芋煮と新米のおにぎりを味わいながら、お代わりをしたり、子どもや孫の話をしたりと思い思いに楽しんでいた。大井会長は「この催しは住民の集いの場となっており、今後も続けていきたい」と話していた。