2023年(令和5年) 09月30日(土)付紙面より
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おいしいもの満載の実りの秋は行楽の季節。そして、飲酒の機会も増えてくる時期だ。しかし「飲んだら乗るな」の鉄則を守れない飲酒運転が一向になくならない。県警の調べによると今年8月末時点の、県内の飲酒運転検挙者は120人。昨年同期と比べて1・3倍に増えた。検挙された83%が運転免許証の取り消し処分を受けた。生活が一変したはずだ。
飲酒と酔い方には個人差がある。たいがいはビール1本、日本酒1合で陽気になる。しかし、その量のアルコールが体から抜けるまで約5時間。「これぐらいなら大丈夫」といってハンドルを握るのは、既に正常な判断力を失っている証し。酒の怖さである。
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検挙された120人が酒を飲んだ場所は「居酒屋」が半数の46%を占める。「自宅」が26%、「車の中」でが11%もある。車の中でとは、帰宅するまで我慢ができなかったということだろうか。「警察に捕まらないと思った」「事故を起こさないと思った」が合わせて84%。飲酒運転することを、いかに自分に都合よく考えているかということを、数字が示している。
鶴岡市内で週末に運転代行車の予約が困難な状態が続いているという。新型コロナの5類移行後、飲食する人の動きが活発になったものの、コロナ禍の間に運転代行のドライバーだけでなく、代行車の台数も減った。この影響で週末になると2時間から3時間待ちが当たり前になった。飲酒運転につながる事だけは避けてもらいたい。
8月末現在の、庄内の飲酒運転摘発数は、鶴岡市が前年同期比1・6倍の17人、酒田市は1・4倍の8人と増えている。検挙者は土曜日と日曜日に多く、20代から60代まで平均している。一方、遊佐町は2018年に免許人口1万人当たりの検挙者が、県内の市町村で2番目に多い6人いたが今年8月時点で0人。交通安全意識の高まりの結果であろう。ただ、飲酒運転の検挙者は氷山の一角と思われる。たまたま見つからなかっただけで、常習者がいることも考えられる。
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飲酒運転のペナルティーは大きい。酒酔い運転は5年以下の懲役か100万円以下の罰金、酒気帯びでもそれぞれ3年以下か50万円以下。免許取り消しか長期停止処分もあり、事故を起こせば多額の損害賠償を負う。家族だけでなく、近隣住民からの視線にさらされるだろうことを考えれば、答えは「飲んだら乗らない」に尽きる。
鶴岡市内の若いグループで、酒を飲まずに送迎役となる「ハンドルキーパー」を決めているケースもあるという。都市部のように公共交通機関が整備されていない地方は、車に頼らざるを得ない。だが飲酒運転で検挙された後の、運転できない期間の自身の生活の“損失”を考えれば飲酒運転は厳禁。後悔先に立たずを肝に銘じたい。
2023年(令和5年) 09月30日(土)付紙面より
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がんにおけるエピジェネティクス(遺伝子周辺の環境変化)研究分野で国際的に活躍している研究者が集まり、最新の研究成果を発表する「鶴岡カンファレンス(会議)2023」が28日、鶴岡市覚岸寺の市先端研究産業支援センターレクチャーホールで始まった。30日まで3日間にわたり、国内外の研究者23人が発表し、それぞれの内容について意見を交わす。
庄内地域産業振興センター主催、国立がん研究センター、慶應義塾大先端生命科学研究所共催。研究者たちによる学術的な議論を通し、がん代謝研究をはじめ抗がん剤や免疫などがん研究のさらなる発展、研究ネットワークの構築などを目的に開催した。
今回のテーマは「Roles of epigenetic factors in cancer」(がんにおけるエピジェネティクスの法則)。本来、遺伝子の構造変化ががんを引き起こすものと理解されている。しかし近年の研究では、遺伝子周辺のタンパク質などによる環境変化ががんの発生に関わっていることが判明している。このタンパク質に多く含まれる酵素の働きを阻害することで、がんの治療の一助となる可能性が指摘されており、エピジェネティクス関連因子の役割を明らかにすることで新たな治療薬開発につながることが期待されている。
初日の28日は現地参加の約20人のほか、オンライン参加もあった。セッションは全て英語で進められ、会議全体の世話人を務める国立がん研究センター鶴岡連携研究拠点チームリーダーの横山明彦さんをはじめ、国内の研究者5人と米国の研究者3人がそれぞれの研究成果を発表した。
各発表の後は質疑応答が行われ、参加者と発表者が盛んに意見を交わし合った。3日間で総参加数は約100人になるという。
2023年(令和5年) 09月29日(金)付紙面より
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酒田市こがね町二丁目に昨秋開所した就労継続支援B型事業施設「すこやかワクワーク」(板垣卓渡所長)の利用者が、女性に人気の「スイスチャード」やレタスの仲間「キトニア」といった珍しい野菜の水耕栽培を手掛けている。土耕と違って病害虫の被害がなく、天候に左右されずに安定収穫できるのがメリット。直接契約を結んで仕入れている飲食店の店主は「どの野菜も品質が良い。農薬を一切使っていないので安心してお客さんに出せる」と高く評価している。
すこやかワクワークは東京でコンサルティング業などを手掛ける「Blue Border」(瀬川武男代表取締役)が運営する。同社は2020年、酒田市の不動産業「東洋開発」の櫛引柳一代表取締役と共に設立した。倉庫だった建物を改装、水耕栽培の専用棚を設置した。板垣所長を含めて支援スタッフは7人。現在、知的、精神、身体障害者合わせて約15人が平日午前10時から午後3時(昼休み休憩含む)まで作業をこなしている。
育てているのはレタスの仲間「オテリー」やベビーリーフの一種「ウエバー」のほかニラ、ルッコラ、水菜、サンチュなどローテーションを組んで作っている。室温は21~22度に設定。種を発芽させて水と養分、発光ダイオードのライトを当てて成長を促す。野菜の品種にもよるが約1カ月程度で収穫期を迎える。農薬を使っていないためそのまま食べられる。
昨年10月7日に開所式をして間もなく1年を迎えるが運営は順調だ。焼き肉店や割烹(かっぽう)、ホテルなど約20件と直接契約を結び、定期的に出荷する。山形県のB型事業所平均工賃は全国平均より低い月1万1000円。同所の平均工賃は現在2万4000円で開所当時に掲げた目標の2万円をクリアした。販売の売上額が直接、障害者の工賃支払いに相当するため今後も付加価値の高い野菜生産を目指す。
現場チーフの二木明希さん(40)は「種まきから収穫、出荷まで一貫して行っているが、みんな的確にこなしてくれる。これからも施設利用者と一緒に品質のいい野菜を作っていきたい」と話す。三川町の県庄内総合支庁1階食堂で今月下旬に行った農業と福祉の連携「ノウフクランチ」に参加。ホウレンソウの仲間「スイスチャード」を収穫して納入した。
板垣所長(41)は「近く焙煎(ばいせん)コーヒーのほかにニンニクスプラウト(新芽)の水耕栽培も始めようと準備を進めている。特に庄内は障害者の働き場所と職種の選択肢が少ない課題を抱えている。今後も施設利用者がやりがいを持って働ける職場環境の向上を目指し、平均工賃が3万円、3万5000円と上げられるよう努力していきたい」と語った。