2023年(令和5年) 05月28日(日)付紙面より
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公務員の傍ら40年にわたり陶芸を続けてきた鶴岡市道田町の菅原敏記さん(88)が、独学でこれまで作ってきた作品の数々を自宅で展示している。菅原さんは「多くの人から見に来てもらいたい。歓迎します」と話している。
菅原さんは元鶴岡市職員で、平凡社が発行している月刊誌に掲載された陶芸家の作品の数々に刺激を受け30代で陶芸を始めた。市中央公民館で焼き物のサークルを立ち上げ、仲間と共同で窯を購入し同公民館に置いて活動。師匠はおらず、本などから得た知識で試行錯誤を重ねてきた。
40代後半、個人用の窯を購入して新築した自宅に設置。休日になると午前2時ごろに起きて窯に向かい、12時間も窯入れと取り出しを繰り返した。陶芸に夢中になっていたため、「旅行などで家を離れることはほとんどなかった」(菅原さん)という。40年ほど続けてきたが、高齢になり70代後半で制作の手を止めた。
陶芸にのめり込んだ理由について「焼き物には自分の考えが表れる。それが一番楽しいところ。『こうしたら悪い』という制限がなく自由に表現できるのも良い」と話す。釉薬(ゆうやく)も木の灰やわら灰などを混ぜ、さまざまな色が出るよう考えた。
菅原さんが手掛けた焼き物は、小さいものはぐい飲みから大きいものだと一抱えほどになるオブジェやつぼがある。表現方法も多彩で、焼き物に別の素材を掘り込む「象嵌(しょうがん)」という技法を用い、暗色系の焼き物の表面に白い象形文字が浮き上がるよう施した作品も多く見られる。象形文字はやはり本などで調べたという。
このほか立体的なバラを窯で焼き上げて装飾に使ったつぼや、表面を何カ所もくりぬいたようにも見える網目状に焼き上げたオブジェなど、独創的な作品が並ぶ。作品の数は「多過ぎて途中から数えていない」(菅原さん)という。
「高齢になり、作品を置くスペースもなくなってきた。この機会に多くの人に作品を見てもらい、気に入ったものは安価で提供しようと考えた」として、今回の展示会を企画した。大小の作品160点余りがずらりと並んでおり、一部は非売品。鶴岡市へ寄贈予定の作品も展示している。
菅原さんは「どの焼き物も一生懸命作ったもの。手放すのはさみしい気持ちもあるが、大事に使ってもらえれば」と話す。妻の悦子さん(85)は「家に窯を置いた当時は火事にならないか心配した。40年間、愚痴一つ言わず作り続けてきたことは本当にすごい」と、夫に寄り添い続けた気持ちを語った。
展示はしばらく続ける。問い合わせは菅原さん=電0235(24)2419=へ。
2023年(令和5年) 05月27日(土)付紙面より
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天神祭・本祭のメインとなる「天神祭パレード」が25日、鶴岡市内で行われた。子どもたちの元気な踊りや親子連れの化けものが市街地を練り歩き、沿道に集まった市民を楽しませた。
パレードは午後2時にJR鶴岡駅前と市中央児童館の2コースでスタートし、合わせて1900人余りが参加。駅前コースの「にぎわい天神パレード」は約2・5キロ、児童館コースの「天神はんくねり」は約1・5キロの道のりを、いずれも鶴岡公園をゴールに市街地を練り歩いた。
両コースの「踊りフェスティバル」には、朝暘一小から朝暘六小まで市内のナンバースクールの小学4年生を中心に参加。この日に向けて練習してきた成果を披露した。菅原道真公の行列や鶴岡天満宮の神輿(みこし)担ぎ、藤間流鶴岡藤靜会と坂東流柏樹会による手踊り行列などがパレードに華を添えた。沿道では編み笠や長じゅばんを身に着けた化けものが行き交い、無言で振る舞う酒やジュースの代わりにアルコール液で見物客の手指消毒を行った。
この日は薫風が吹き抜けるさわやかな一日となり、午後1時過ぎの気温は23度まで上がった。鶴岡公園には露店が立ち並び、冷たい飲み物や食べ物を買い求める客でにぎわった。
天神祭実行委員会事務局(市観光物産課)はこの日、約15万人の人出があったと発表した。
2023年(令和5年) 05月27日(土)付紙面より
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衆議院の早期解散論が飛び交っている。自民党内では、G7広島サミットの成功で内閣支持率が上昇、株価も高値であることから解散の好機と捉える見方もあるという。一方の野党は内閣不信任決議案を出す構えでいるが、遠藤利明総務会長(県1区)は「不信任決議案が提出されれば、国民に信を問うことはある」と、解散の大義に触れている。衆院の任期はまだ2年以上も残している。
国会議員はよく「常在戦場」を言葉にする。いつ解散があってもいいように、選挙態勢を整えていようとのことだ。解散には国民が納得できる大義が要るが、「勝てる時に」などという党利や議員の保身の思惑を絡めるような解散は許されない。そう考えるのは国民の本心ではないか。
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不信任決議案提出は内閣にとって不名誉な事だ。遠藤総務会長の、不信任決議案提出は解散の大義になるとの発言は、本音である一方、野党に提出を思いとどまらせようというけん制にも聞こえる。過去には「大義」よりも、勝てる時にという思惑が透けて見える解散もあった。
消費増税を巡り(1)増税を延期する(2)再延期する(3)増税分の使い道を変更する―などと、半ば首相にとって都合のいい時期に解散したこともある。要するに「勝てる時」の解散総選挙で、政権の延命を図ろうとしたものだ。
国会は防衛予算の大幅増額、加速する人口減少、子育て支援問題などで過去最大の予算を組んだことでの財源確保、膨らむ一方の国の借金返済を、将来世代の負担任せにしていいのかなどとの問題が山積している。現在の衆院議員の任期は2025年10月まで。まだ任期の折り返し点まで達していない。任期を残しての解散より、任期ぎりぎりまで問題解決に当たるのが、国会議員の努めであろうとの考え方もある。
解散は首相の「専権事項」で、政権に一番都合のいい時期にするものだと語られる。岸田文雄首相は解散を問われ「一切考えていない」と述べている。しかし、過去にはそう明言した直後に解散したケースは多くある。それも国民が納得できる大義であったかどうかは、疑問視される中で。
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全国紙などの世論調査では、解散の時期は「できるだけ早く」「来年9月の自民党総裁選までに」などとのほか「任期満了までに」とする意見もある。内閣不信任決議案を出す構えの立憲民主党の代表は「150議席取らなければ代表を辞任する」と、早期解散に追い込みたい考えだ。
国会は国内問題に限らず国際問題も多く抱えている。2050年の二酸化炭素排出量実質ゼロに向けたエネルギー政策、ウクライナ紛争、中国や北朝鮮対策など避けて通れない問題が多い。解散風に浮足立っている前に、多岐にわたる問題解決の糸口を探るのが国会の務めではないだろうか。