2023年(令和5年) 09月27日(水)付紙面より
ツイート
鶴岡市の国指定史跡・松ケ岡開墾場に新たな魅力を創出するライトアップイベント「サムライシルクナイト」が23日、期間限定で始まった。約150年前の明治時代初めに建てられた大蚕室10棟のうち現存する5棟が夕闇に浮かび上がり、来場者は普段とは異なる情景を楽しみ、夜の開墾場の雰囲気に浸っていた。
日本遺産「サムライゆかりのシルク」の構成文化財の中核となっている同開墾場を市内外に発信しようと、インバウンドの地方誘客や消費拡大に向けた観光庁の支援事業の採択を得て、史跡松ケ岡開墾場管理運営協議会(堀誠会長)が企画、実施。ANAあきんど庄内支店が事務局を担った。
ライトアップは、1棟当たり全長38メートルあり、解体された鶴ケ岡城の瓦を使用して建築された木造の大蚕室5棟をLEDの照明灯18基で照らしたほか、蚕室が並ぶ中心部の通路と、隣接するピノ・コッリーナ・ファームガーデン&ワイナリー松ケ岡と結ぶ通路に赤ワインで染めたシルク生地を使ったランタンなども設置した。
イベント初日の23日夜には、5番蚕室を活用したワインディナーショーが開かれた。在日外国人ら市内外から訪れた約70人が、鶴岡市出身の歌舞伎役者・中村橋吾さんらによる演舞を堪能した。
ライトアップは入場無料で、今後は30日と10月1日、7―9日の午後5時―同9時に実施され、30日と8日の午後5時半からは、ガイドが案内する「サムライシルクナイトウォーク」(参加費1000円)が予定されている。
2023年(令和5年) 09月27日(水)付紙面より
ツイート
県が公表した基準地価で、庄内の住宅地、商業地、工業地を合わせた平均変動率は25年連続の下落だった。ただ、県内で上昇率が高い上位5地点のうち、酒田市相生町一丁目のプラス1・4%が2位、駅に近接する同市ゆたか一丁目が同1・2%で3位だった。県不動産鑑定士協会は「酒田駅前の再開発事業と、日本海沿岸東北自動道(日沿道)延伸の効果」を挙げている。交通のアクセス向上が優れているということであろう。
地価は景気を計る指標の一つとされ、「地の利」ともいえる。北海道では8割の市町村で下落しているのに、札幌市周辺は住宅地、商業地とも大幅に上昇しており、2030年の北海道新幹線開業を見越した動きが背景にあるとみられている。
◇ ◇
山形県は高速鉄道の整備から後れを取っている。県内では山形新幹線が走っているが、新庄―福島間は在来線を改良したミニ新幹線で、部分的だが最高速度は130キロ。高速鉄道整備の悲願はフル規格による「奥羽新幹線・羽越新幹線」が走ること。1973年に政府の基本計画に位置付けられたが、依然として整備新幹線に格上げされていない。同時に基本計画になった北海道・北陸・九州の各新幹線は、ほぼ完成に近づいている。
先ごろ、フル規格新幹線の実現を目指す「県奥羽・羽越新幹線整備実現同盟」(会長・吉村美栄子知事)の促進大会が開かれた。同同盟会は16年に設立された。今度の大会では奥羽新幹線整備の当面の課題となる「米沢トンネル(仮称)」の早期実現の大会決議を採択、併せてPRのロゴマークも披露した。しかし、「山形県の未来を拓く希望のトンネル 山形新幹線 米沢トンネル」のキャッチフレーズから、羽越新幹線の“姿”があまり感じられない。
北陸新幹線は来年3月、金沢―敦賀間の延伸開業が決まり、23日から試験走行が始まった。将来は大阪までつながる、東京―北陸新幹線―東海道新幹線―東京を乗り継ぐ“環状新幹線”となる。あまりにも人口集中圏重視の、政府の鉄道政策である。
◇ ◇
地価公示で、酒田市の中心市街地の一部でようやく地価がプラスに転じた。高速交通網の整備が少なからず地方の土地の付加価値を高めるという、専門家の指摘もある。庄内空港があり、日沿道の未接続区間の整備も進んでいる。残すは羽越新幹線の整備あるのみ。
札幌市周辺の地価の変動率はプラス30%も上昇、企業進出も相次いでいる。大都市圏という好条件があるとしても、新幹線の開業効果を見越した動きが背景にある。奥羽・羽越新幹線が国の基本計画に位置付けられてから、手付かずのまま50年が過ぎた。その中で、羽越新幹線は奥羽新幹線にも後れを取っている感さえある。庄内挙げて県や国への働きかけを強めたい。
2023年(令和5年) 09月27日(水)付紙面より
ツイート
酒田市の観光地域づくり法人・酒田DMO(荒井朋之理事長)と、庄内地域の料亭・飲食店で組織する県調理師組合「調桜会」(阿部秀志会長)による、料亭で調理した料理を社員食堂で提供する「料亭コラボランチ」が22日昼、同市のプレステージ・インターナショナル山形BPOパークで行われ、社員が料亭の味に舌鼓を打った。
酒田には昔ながらの伝統を守りつつ、おいしい料理を提供する料亭が多くあるものの、支えているのは年配の常連客が中心。同法人が、調桜会の会員店に対しヒアリング調査したところ、若い世代のファン開拓、コロナ禍に伴う利用客の減少が課題となっていることが分かった。
同法人と調桜会は、「未来の常連客」となる若い世代から酒田の食文化の素晴らしさを広く知ってもらうとともに、敷居が高いと思われている料亭を身近に感じてもらい、積極的に足を運んでもらおうと、市の助成、同社の協力を得て「美酒美食の街さかた事業」の一環として今年6月にコラボランチを開始。初回は料亭「香梅咲」(日和町一丁目)が担当した。
2回目の今回は、くつろぎ割烹「志幡」(山居町一丁目)が調理。かつて日和山の割烹小幡で提供していたという庄内豚を使ったしょうゆ仕立てのいも煮、ごま豆腐に、文化庁「100年フード」に認定された「むきそば」を添え、1食450円(税込み)で提供。午前11時ごろから社員が食堂を訪れ早速、味わった。
共に酒田市出身・在住の中條香音さん(27)と富樫ふくさん(40)は「おいしい」と第一声。中條さんは「前回のコラボランチで提供されたむきそばがおいしく、また食べたいと思っていた」、富樫さんは「しょうゆ仕立てのいも煮は新鮮な感じ」と話した。限定80食のうち半分ほどは予約で埋まったという。
同法人の小林和也さんによると、次回は11月の予定。「料亭同様、すし店も若い世代のファン獲得が急務と聞く。酒田DMOとしてつなぐ役目を果たしていきたい」(小林さん)という。