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荘内日報ニュース


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2023年(令和5年) 05月24日(水)付紙面より

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日本海中部地震から40年になる

 1983年5月26日に発生した日本海中部地震から40年を迎える。秋田県能代市沖のマグニチュード(M)7・7の地震による死者104人のうち100人が津波の犠牲者。秋田、青森両県に被害が集中した。庄内では人的被害はなかったが、酒田港では津波による大きな潮位の変動で係留中の小型漁船が転覆した。津波の怖さであるが、そうした事実を知る人も少数派になりつつある。

 このところ全国各地で震度5強?5弱という大きな地震が多発し、緊急地震速報の音が不気味に流れる。石川県能登半島では家屋倒壊などの被害も出ているのに、発生時に具体的な避難行動を起こさなかった人が多かったとの調査報告もある。海辺では「揺れたら逃げる」が鉄則なのだが。

◇      ◇

 調査は同志社大学が、地震の直後の住民の行動状況を調べた。それによれば、緊急地震速報を受信しながら、最初に何をしたかで最も多いのは「携帯電話を見る」、次に「揺れを身構えて待つ、ただ静観してる」などで、身の安全を守るための具体的な行動をとらなかった人が大多数だった。同大学は揺れの到達前に警報が住民に届く防災システムは画期的だ。だが、揺れが到達するまでの時間はわずか。その貴重な時間に避難行動を起こすべきだと指摘している。

 似た事態は庄内でもあった。2019年6月、鶴岡市で震度6弱を記録した山形県沖地震の震源地は海岸から近かった。幸い同市鼠ケ関で約11センチの潮位の変化があっただけで、津波は起きなかった。しかし、避難を呼び掛けられても逃げなかった人が約7割いた。揺れの程度から「自分は大丈夫だろう」と思い込んたケースが多かった。

 体調障害を理由に逃げなかった人もいた。庄内沿岸地域の、住民の高齢化率が高いことを考えれば、いち早く避難行動を起こすことが肝心。近隣同士での助け合いも求められ、同志社大の指摘にある「静観している」余裕はない。庄内沖には発生の可能性が指摘される地震空白域がある。日本海では日本海中部地震の30年前、1993年7月に北海道南西沖地震(死者202人)が発生している。

◇      ◇

 鶴岡市自治振興会連絡協議会は山形県沖地震後、「避難情報後に避難行動を起こし、近隣の人にも促す」という、早期避難宣言を申し合わせた。東日本大震災の津波は、万里の長城のような「防潮堤」を乗り越え、住宅をのみ込みながら山際まで押し寄せた。庄内の沿岸には、山の斜面が海に迫る地形が多い。避難が容易でない場所もある。いち早い行動が身を守ることになる。

 庄内沖の地震空白域は、津波を引き起こすと想定されている。全国で多発している地震をわが事として捉え、いつでも避難行動を起こせる心構えをしていたい。市自治振興会の「近隣の人にも声を掛けて早期避難」の申し合わせの通りに。

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2023年(令和5年) 05月24日(水)付紙面より

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心の癒やしと笑顔届けたい ホースセラピーに取り組む佐藤夫妻 鶴岡市由良 牧場を開設

 鶴岡市由良の国道7号沿いの高台に牧場を開設している佐藤久一さん(74)と節子さん(62)夫妻が、ボランティアで人の心を癒やす「ホースセラピー」に取り組んでいる。馬やヤギ合わせて15頭を飼育。中でもトラックに馬を乗せて市内の保育園を訪問する「移動動物園」が人気だ。これまで複雑な家庭環境で心を閉ざした女の子が2年間、佐藤さん方の馬と触れ合ったことで活発に会話するようになった例も。佐藤さんは「動物には不思議な力がある。これからも体の動く限り馬との触れ合いを通して子どもたちに笑顔を届けたい」と話している。

 動物好きの佐藤さんが馬を飼育するようになったのは20年近く前。大病を患った舟形町の馬主からポニー2頭を購入してかわいがった。その後、三川町恒例の「菜の花まつり」で馬との触れ合いイベントを行ったところ、体を動かすことができない病気で車椅子生活を送る少年が、ポニーに餌を与えようと一生懸命に手を差し出して家族を驚かせた。少年の家族は「これだけ手を動かせたことはない」と感動し、涙したことが佐藤さんの脳裏に深く刻み込まれた。「子どもたちや障害者のために何かしてやりたい」―。本格的にホースセラピーを始めるきっかけとなった。

 佐藤さん方の牧場では小さくてかわいらしいミニチュアホースに餌を与えたり首に綱を付けて場内を散歩する体験が無料で楽しめる。大人気の「移動動物園」もすべて無償のボランティア。老人福祉施設への慰問もしている。

 佐藤さんは「正直、馬を飼うだけでも大変」と胸の内を明かしながら「友人と企業から野菜くずを提供してもらって助かっている。鶴岡市内の食品加工会社からは豆腐のおからを頂いているが馬が喜んで食べる」と話す。

 今月15日に牧場で子馬1頭が生まれた。母親にぴたりとくっついて歩く姿が愛らしいと人気だ。

 「動物も人も同じ生き物。触れ合うことで心が癒やされる。これからもホースセラピーの良さを多くの人に伝えたい。老体にむち打って頑張りますよ」。佐藤さんが笑顔を見せた。

 佐藤さん方の牧場「馬の里森林牧場」の無料体験は前日までの要予約。午前の部が9時から11時半、午後の部は2時から4時。移動動物園は予約・応相談。食品ロスの軽減につながる野菜くずなどがあれば馬の餌にするため提供を求めている。問い合わせは牧場の代表を務める節子さん=電080(6040)9131=へ。

「馬と出会うだけで子どもたちの目が輝く」―。ホースセラピーを続けている佐藤夫妻
「馬と出会うだけで子どもたちの目が輝く」―。ホースセラピーを続けている佐藤夫妻


2023年(令和5年) 05月23日(火)付紙面より

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155年ぶり「御戸開」が復活 羽黒山荒澤寺正善院「地蔵堂」 3本尊を安置 来月公開へ

 鶴岡市羽黒町手向の月山ビジターセンター近くにある羽黒山荒澤寺正善院(島津弘海住職)の地蔵堂で21日、明治の神仏分離令以来、途絶えていた「御戸開(おとびらき)」が155年ぶりに復活した。月山のご本尊「阿弥陀如来像(あみだにょらいぞう)」と、かつて月山(1984メートル)山頂に安置されていた「御裏三宝荒神像(おうらさんぽうこうじんぞう)」、地蔵堂のご本尊「荒澤延命地蔵大菩薩像(あらさわえんめいじぞうだいぼさつぞう)」の3像を前に島津住職がお経を唱え、人々の安寧と平和を願った。来月から地蔵堂を公開し、普段は見ることができない3像を目の前にして拝むことができる。

 月山の入り口にある地蔵堂は1116(永久4)年に建立された。「宝形造(ほうぎょうづくり)」で平将門の娘が父母成仏を供養し、石の地蔵尊を安置したという説がある。明治元年の神仏分離令で荒澤寺は寺として残り、法器具や法燈を継承した。例年、8月24日から9月1日までの9日間、地蔵堂と峰中(ぶちゅう)堂を拠点に山伏修行「羽黒修験秋の峰」が行われている。

 これまで「阿弥陀如来像」と「荒澤延命地蔵大菩薩像」は羽黒町手向の正善院に置かれていたが、月山の卯歳(うどし)御縁年と月山開山1430年の節目を記念し3像をそろえて地蔵堂に安置した。

 「阿弥陀如来像」は慈悲深い仏様。「御裏三宝荒神像」は人々の心が良い方向に向かっていれば福を、反対に悪い方に向かえば災いをもたらし知らせてくれるといわれる。「荒澤延命地蔵大菩薩像」は人々の苦しみを救い極楽浄土へ導いてくれるという。6月の特別拝観では3像と5色の「結縁綱」で縁を結ぶ。

 この日は、地蔵堂の大きな扉を開いて島津住職や長南弘道副住職らが入場し約1時間にわたってお経を唱える「御戸開法要」を行った。法要を終えた島津住職は「日々の暮らしに明るさと平和、にぎわいがもたらされ、お互いが思いやりを持って家庭環境と地域社会がより良いものになるよう願った」とあいさつした。

 地蔵堂の特別拝観は6月9、10、11、16、17、18日の2週続けて金・土・日に行われる。時間はいずれも午前の部が10時から正午、午後の部は1時から3時。拝観料は500円。手すき和紙の御朱印(1枚500円)も頒布する。問い合わせは正善院=電0235(62)2380=へ。

6月9日から「特別拝観」が始まる荒澤寺の地蔵堂
6月9日から「特別拝観」が始まる荒澤寺の地蔵堂

3像を前に「御戸開法要」を行う島津住職(手前)
3像を前に「御戸開法要」を行う島津住職(手前)



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