2023年(令和5年) 09月23日(土)付紙面より
ツイート
地域内の流通を安価でサポートする日本郵便(本社・東京都千代田区)の新たな配送サービス「ぽすちょこ便」が21日、全国に先駆けて鶴岡市内でスタートした。最寄りの郵便局に物品を持ち込み、郵便車両が郵便局間を輸送。指定された郵便局で相手が物品を受け取る形。郵便車両の空きスペースを利用するため今のところ利用者は限定的だが、ニーズや運搬上の課題などを踏まえた上で、今後サービスの利用者拡大を図るという。
ぽすちょこ便の開設は、櫛引地域産業振興プロジェクト推進協議会が取り組む「くしびきフルーツWeeks」がきっかけ。櫛引地域の果樹生産者と同市内の飲食店による連携企画で、生産者が規格外品を含むフルーツを飲食店に販売し、各店がオリジナルメニューを開発し顧客に提供する。
取り組みの課題の一つが生産者と飲食店間での果物の運搬方法。生産者が各店に配送するのは時間がかかるため、昨年度は試験的に市櫛引庁舎が配送を試みたところ庁舎の負担が大きく、市役所本所に届いた果物を店側が受け取りに出向くのも時間効率が悪かった。
同庁舎の依頼を受けて日本郵便が企画したのが「ぽすちょこ便」。地域内で「ちょこっと運んでほしい」という需要に応えられるようなサービス名にした。現時点で櫛引地域の生産者5人が利用者として登録しており、鶴岡市内の15郵便局が発送・受け取りの拠点となっている。
21日に山添郵便局(鶴岡市上山添)で行われた記者会見で、日本郵便県西部地区連絡会地区副統括局長の堀弘八幡郵便局長がサービス名の「ぽすちょこ便」を発表。同社ロジスティクス事業部の御手洗正夫部長が「運搬・配送に幅広いネットワークを持つ本社が『気軽に使ってもらえるサービス』として開発した。ゆうパックとの差別化のため、個人宅への配送はできないが思い切った料金設定をした」と解説した。
ぽすちょこ便の利用は、日本郵便の専用ウェブサイトで差出人または受取人がアカウントを作成し、配送コースと日時を指定して予約する。差出人が発送場所として予約した郵便局に品物を持ち込み、郵便車両が集配局の鶴岡郵便局を経由して指定された郵便局へ配送する。受取人が予約した時間に来局し、品物を受け取るシステム。
配送に使用するケースは横47センチ、高さ22・5センチ、奥行29センチで、1ケース当たりの価格は290円(税込み)。
同日、リンゴや和ナシなどを発送するため山添郵便局を訪れた生産者の斎藤司さん(60)=三千刈=は「ウェブで手続きが済むのでかなり簡単。個人で配送すると時間がかかり過ぎるので、ありがたいサービス」と話していた。
ぽすちょこ便は郵便車両の空きスペースを利用して配送するため、利用客が急増すると郵便物を運ぶ本来の業務に支障をきたしかねないため、今のところ利用客は櫛引地域の生産者や取引先の飲食店などに限定されている。一方、生産者と飲食店間の配送に係る同様のケースが全国各地にあり、日本郵便は今後、各地域でぽすちょこ便の展開を拡大する方針。
2023年(令和5年) 09月23日(土)付紙面より
ツイート
鶴岡市櫛引地域の果樹生産者と同市内の飲食店などが連携し、和ナシやリンゴ、ブドウなど“櫛引フルーツ”を広くPRする「くしびきフルーツWeeks(ウイークス)」が23日にスタートする。20日には市櫛引庁舎で試食会が行われ、期間中に参加協力店で提供されるスイーツがお披露目された。
同企画は、櫛引地域産業振興プロジェクト推進協議会(鈴木光秀会長)が取り組む「くしびきフルーツ振興プロジェクト」の一環。果樹生産者が規格外品を含むフルーツを飲食店に販売し、各店はそれを使ってオリジナルの商品やメニューを開発し顧客に提供する。生産者と飲食店のつながりを強め、生産者側は販路拡大や規格外品の有効利用、飲食店側は地産地消やSDGsの取り組み推進を図る。
20日に行われた試食会には果樹生産者と参加飲食店、消費者など7人が出席。今回企画に参加した11店のうち6店が櫛引地域産のシャインマスカットや和ナシ、リンゴを使ったタルト、チーズパイ、サンドイッチ、マカロン、大福、ジャムなど約20品を披露した。
デジタルクリエーター・インスタグラマーで「庄内暮らしツタエタイ」の一員として庄内地域の日常、風景などをSNSで発信しているはるたまさん(本名・非公開)は消費者として出席。「同じフルーツを使っているのに店によって果物が主役だったり、さっぱりした生クリームとの組み合わせが抜群だったり。1カ所だけでなく何店か回って食べ比べるのも楽しそう」と話していた。
くしびきフルーツWeeksは12月8日まで、毎月約1週間の“4ウイーク”で開催。期間と取り扱う品目は▽Week1=9月23~29日、和ナシ、ブドウ▽Week2=10月14~20日、ブドウ、リンゴ▽Week3=11月11~17日、西洋ナシ、リンゴ▽Week4=12月2~8日、リンゴ。
参加店舗と商品・メニューの提供予定期間は次の通り。飲食店のうちレコルトはコース料理(ランチ、ディナー)のデザートとして提供する。
▽飲食店=ブラックバードマーケット(鶴岡市切添町)Week1~4、イタリアンフレンチ「レコルト」(同市大塚町)Week1~4、東京第一ホテル鶴岡レストラン「モナミ」(同市錦町)Week1~4▽和洋菓子店=遠州屋(同市本町三丁目)Week1~4、いづみや(同市川尻)Week1~3▽洋菓子店=ル・メランジュ(同市みどり町)Week1~4
▽パン屋=パン工房「ヴァンベール」(鶴岡市湯温海)Week2~4、S―MALL「パントーネ」(同市錦町)Week1~3、aonosora(同市丸岡)Week2~4▽キッチンカー販売(カレー)=合同会社COCOSATO(酒田市大蕨)Week2~3▽弁当・総菜屋=ごちそうカイトン(鶴岡市板井川)Week4
企画・店舗情報はX(旧ツイッター)やインスタグラムなどSNSで発信している。問い合わせは櫛引地域産業振興プロジェクト推進協議会=電0235(57)2114=へ。
2023年(令和5年) 09月23日(土)付紙面より
ツイート
地球温暖化を止める切り札の再生可能エネルギー。中でも柱になるのは洋上風力発電。日本のエネルギー事情から政府も導入に積極的だ。一方、導入に難色を示す動きもある。生態系や環境保護の立場だ。吉村美栄子知事も「推進の立場」を述べる一方、「イヌワシや自然災害発生が心配、地元のさまざまな事情がある」と慎重姿勢だ。
県内では遊佐町沖の洋上風力発電計画が、経済産業省と国土交通省の事業者の公募に移る「促進区域」に指定される見通しで、酒田港沖もこれに続く。しかし鶴岡市加茂地区の山地への計画、最上地域、置賜地域の風力発電計画は、生態系問題などから反対の声があり、先行きは不透明だ。
◇ ◇
今年、世界の気温は史上最高を記録、国連のグテーレス事務総長は「地球温暖化の時代から、地球沸騰化の時代が到来した」と、気候危機対策の強化を各国に警告した。地球の気候がおかしくなったというより“地球の健康”が害されている。先ごろ、米・ニューヨークや東京で脱化石燃料を訴える大規模集会があり、東京では「再エネ100%社会実現」を求めた。
地球温暖化防止を目指すパリ協定が2015年に採択され、世界各国は脱炭素化に向けて再エネ導入を進めている。原発大国のフランスも洋上風力発電導入にかじを切った。世界の8割は依然として化石燃料に頼っているが、石油の埋蔵量には限りがあり、エネルギーを輸入に頼る日本の状況は厳しい。50年まで温室効果ガス排出実質ゼロを目指す政府は、当面40年までに3000~4500万キロワット、原発30~45基分に相当の再エネ導入を目指す。しかし再エネだけでは達成が厳しく、危険が伴う原発にも目が向けられている。
一方、県のエネルギー戦略では、再エネを30年度に原発1基分の101・5万キロワットの導入を目指し、そのうち風力発電で45・8万キロワットを賄う。22年度までの導入量は稼働分と計画決定分を合わせて約70万キロワット。今後7年余で目標を達成するにはややハードルの高さも予想される。
◇ ◇
県内では遊佐沖のほか、酒田商工会議所などが酒田沖の推進を望んでいる。一方、加茂地区での最大7基の計画はラムサール条約登録地の大山上池などに近接し、鶴岡市が事業中止を求め、民間団体も生態系への影響を理由に反対している。米沢市の栗子山で最大10基、尾花沢、最上、舟形にまたがる地域で40基程度の計画も、イヌワシの生息環境への影響を懸念する声が強い。
自然の中に巨大な風車を建設する。電力は社会活動の維持に必須の「社会的な利益」がある。一方、生態系や景観に影響を与える「環境的損失」にも配慮が求められる。県のエネルギー戦略は積極的に取り組むと同時に、反対意見も尊重しなければならない。導入への懸念材料は少なくない。