2023年(令和5年) 05月13日(土)付紙面より
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慶應義塾大先端生命科学研究所バイオラボ棟などが立地する鶴岡市の鶴岡サイエンスパークを、より身近に感じてもらうイベントの開催に向けた実行委員会の設立総会が11日、同パーク内にある市先端研究産業支援センターで開かれた。入居する企業や研究機関、地元企業などが連携し「鶴岡サイエンスパークまつり」と題した初のイベントを11月4日(土)に開催する日程を決めた。小中学生にも分かりやすく入居団体の事業を紹介する展示コーナーや、各種体験ブースなどを設ける。
鶴岡商工会議所青年部メンバーと先端研の関係者の話し合いの中で昨年、小中学生とその親世代向けのイベント開催によるサイエンスパークへの理解増進と、人的交流による地元企業との連携強化が話題となり、「まつり」の開催案が持ち上がった。
設立総会には、先端研発ベンチャー企業や入居団体、先端研との協定で派遣されている大手企業の社員、同青年部の会員事業所、鶴岡市などから約40人が出席した。
まつりはサイエンスパークの敷地内で開催する。入居団体の事業を紹介する企画展や地元企業と連携した各種体験コーナーの設置、サイエンスパークの関係企業・機関との連携実績がある地元の食産業や食文化を紹介・販売するブースの展開、子ども向けのトークセッションなどを予定。今後、各ワーキンググループで具体的な内容を詰めていく。
出席した入居団体からは「サイエンスパークの企業はどんな事業をやっているのかと、よく聞かれる」「市民にどう伝えるか、悩んでいた」「市民への浸透、地元企業との連携の面ではまだまだ不足している」「市民にサイエンスパークを知ってもらういい機会だ」とイベント実施を歓迎する声が相次いだ。
実行委員長の前先端研所長で一般社団法人鶴岡サイエンスパーク代表理事の冨田勝さんは「来場者から楽しんでもらうためにも、まずわれわれが楽しんで企画を進めることが大事。これを2年目、3年目へとつなげよう。イベントをきっかけにそれぞれの枠を取り払い、今後のワクワクする話が多く生まれるようにしていこう」と呼び掛けた。
鶴岡サイエンスパーク(21・5ヘクタール)は、2001年の先端研立地後、市のレンタルラボ開設、バイオベンチャー企業の創業、研究開発施設や宿泊滞在・子育て支援施設の整備が進み、約600人が就労している。
2023年(令和5年) 05月13日(土)付紙面より
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竜巻の卵といわれる「ろうと雲」が11日、庄内浜上空に現れたのを植物調査団体「フロラ山形」の会員(鶴岡市在住)が見つけ写真撮影した。
竜巻は発達した積乱雲で上昇気流を伴う高速の渦巻きができ、それが地上まで伸びたものをいう。「ろうと雲」は竜巻になる前の状態のことを指す。液体を移し替えるときに使う道具「漏斗(ろうと)」の形に似ていることから名付けられた。
フロラ山形の会員が「ろうと雲」を見つけたのは午前8時55分ごろ。鶴岡市湯野浜方面に出ているのを望遠レンズでカメラに収めた。10分ほど見ることができたという。
会員は「大気の状態が不安定になって出現する。庄内では例年10月から11月の秋に見られるが、個人的にこの時期に見たのは初めて」と話していた。
2023年(令和5年) 05月13日(土)付紙面より
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庄内三大祭りが迫った。20日は港町文化とにぎわいを伝える「酒田まつり」、25日は奇祭「化けものまつり」で有名な鶴岡市の天神祭、来月5日は神社の裏山に住む化け物を退治した「めっけ犬」が主役の同市の大山犬祭りがある。新型コロナウイルス感染症が完全に収束していないが、行動制限は解かれた。三大祭りがにぎわい、経済が活力を取り戻し、人々の心に元気をもたらしてほしい。
庄内三大祭りの季節は、庄内がひと際華やぐ。この3年間、三大祭りはコロナ禍のため規模縮小や呼び物のパレードなどの中止を余儀なくされた。今年は例年の伝統行事に加えて、「酒田歴史まつり」という、新しいイベントも用意された。3年分の“辛抱”を取り戻す祭りになりそうだ。
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祭りは各神社に伝わる神事。同時に人々の娯楽であり、経済活動そのものとも言える。住民にとっての心のよりどころになり、子どもたちも、親世代が昔からの伝統を受け継いでいる様子を見ることで、郷土愛を育む機会になる。見るだけでなく、子どもが実際に参加することで成り立つのも祭り。学校では得られない体験の機会になる。
酒田まつりは慶長14(1609)年の日枝神社の例大祭「山王祭り」が始まり。1976年の酒田大火後、街の復興を願って「酒田まつり」に改められ、厄除けのシンボル・獅子頭が登場した。化けものまつりは学問の神様・菅原道真公(845?903)が、京都から九州の太宰府に配流される際、道真公を慕う人々が顔を隠し、酒を酌み交わして別れを惜しんだという言い伝えが残る。大山犬祭りも300年の歴史がある。椙尾神社の裏山の化け物のムジナ(タヌキとも)をメッケ犬が退治し、村人を助けたという伝説に由来する。
祭りは地域の伝統行事として代々受け継がれてきた。娯楽が少なかった昔、子どもたちは祭りばやしに心を躍らせ、小遣い銭を握りしめて道沿いに並ぶ露店の品々を見て回った。現代の大型商業施設では、そのような素朴さは得られない、心に焼き付く祭りでの体験を通し、郷土愛を育んだ。
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今年の酒田まつりは、鳥海山の高さに見立てた高さ22・36メートルの「立て山鉾」が老朽化のため解体され、代わって北前船時代の料亭文化を伝える「花魁(おいらん)道中」で祭りを盛り上げる。化けものまつりの「天神パレード」では、親子化けもの、子供みこし、高校生のマーチングパレードなど、多くの小中高校生が参加する。
少子化の中、首都圏への人口の偏りに歯止めがかからない。政府は若い世代をターゲットに地方移住政策を打ち出している。Uターンであってもいい。首都圏で暮らす人たちの心に祭りばやしが届き、「田舎に戻ろうか」という気持ちが湧いてくれることを願いたい。祭りには、そうした力もあることを信じたい。