2023年(令和5年) 09月03日(日)付紙面より
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全国各地から集まった大学生ボランティアが2日までの5日間、酒田市から遊佐町にかけての日本海沿岸で漂着ごみを回収する交流活動を繰り広げた。
首都圏、関西圏を中心に全国約80大学の学生約2500人が加盟しているNPO法人・国際ボランティア学生協会(略称・IVUSA、本部・東京都、奥山泰成学生代表)が、山形県内の産学官民でつくる「美しいやまがたの海プラットフォーム」(代表・小谷卓鶴岡高専名誉教授)、東北公益文科大学(神田直弥学長)と連携して2016年から実施している。10回目。今回は関西、関東在住の学生と共に、県内から公益大、山形大、米沢栄養大などから76人が参加。酒田市のNPO法人・パートナーシップオフィスの関係者4人と県職員2人らと共に、8月29日から5日間で酒田市飛島の田下海岸、遊佐町吹浦の西浜海岸、同町菅里の十里塚海岸一帯で行った。
3日目の31日は十里塚海岸で活動。強い日差しが降り注ぐ中、学生たちは「元気出していこう!」と声を掛け合いながら、砂浜に散乱したプラスチック類の破片を拾い集めたり、砂に埋まった漁網やロープを力を合わせて引き抜くなど、清掃活動に汗を流した。
IVUSAロジスティックマネージャーの内藤綾(あや)さん(21)=東京女子大4年=は「海岸清掃後に再来すると、また海ごみがたまっていたり、場所によっては増えている気がする。今後も現地の学生たちと共に継続した活動を続けていきたい」と。IVUSAの大規模活動に初めて参加したといういずれも公益大1年の大貫凜さん(18)と後藤めいさん(19)は「普段酒田に住んでいるが、海ごみの多さを知らず、現状を知るきっかけになった。全国の学生と関わりを持つことで多くの気付きや感動があり、IVUSAの活動はとても楽しい」と話した。
2023年(令和5年) 09月02日(土)付紙面より
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月が地球に近づき、一年で最も明るく見える満月「スーパームーン」の観望会が30日夜、酒田市の東北公益文科大学(神田直弥学長)で開かれ、参加者たちが希少な天体ショーを楽しんだ。
酒田市デジタル人材育成委託事業として、公益大地域共創センターが主催。素粒子理論や天文教育を研究している公益大の山本裕樹教授を講師に、月についての講話と望遠鏡での観望を行った。
この日はオンラインを含め天体に興味のある学生や市民ら約50人が参加。山本教授は天体の公転運動や月の満ち欠けについて説明した後、「月と地球の距離は最も遠いと約40万6000キロ、最も近くて約35万7000キロで、視直径で約14%大きさが違う。今回の最も近い満月の瞬間は8月31日の午前10時36分のため日本では確認できないが、条件が近い今夜、一緒に観察してみましょう」と解説した。
その後、中庭に移動し南東の空を観望。あいにくの曇り空だったが、晴れ間に月の全体が見えた瞬間、参加者たちは「きれい」「大きく見える」と感嘆しながら望遠鏡をのぞいていた。
親子で参加した亀ケ崎小2年の齊藤和玖(わく)君(8)は「宇宙に興味があって参加した。望遠鏡で月を見たら、クレーターがきれいに見えてすごいと思った」と話した。
2023年(令和5年) 09月02日(土)付紙面より
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2446段の石段参道の両脇に立ち並ぶ、国の天然記念物「羽黒山のスキ並木」を守る取り組みが始まった。杉並木には樹齢350―400年のスギが558本ある。その1本ずつの健康状態を調査し、倒木の危険性などを確かめて保全策を策定する。現在、確認されている枯れたスギは18本。杉並木参道の安全を確保することによって、景観が将来に伝えられる。
杉並木の保全に向けた調査と計画策定は、羽黒町手向の住民組織「羽黒山スギ並木保全まちづくり協議会」と、北海道大学観光学高等研究センターが当たる。出羽三山信仰の入り口に当たるのが羽黒山であり、参拝道のシンボルの杉並木を、しっかり保全していきたい。
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出羽三山は開山から1400年余。日本有数の修験道の聖地。羽黒山(現在)、月山(過去)、湯殿山(未来)を巡る「生まれかわりの旅」の信仰が息づき、三山巡りは人が再生するお参りとして考えられている。参道入り口の随神門をくぐると杉並木が下り坂になるのは、一度地獄に落ちるところからお参りが始まるためとされる。五重塔を過ぎると一の坂・二の坂・三の坂の急坂の表参道杉並木が続く。
参道には、五重塔近くに樹齢1000年の「爺杉」もある。羽黒山にはスギを“長寿”にさせる環境があるとしても、長い年月を経れば樹勢が衰えることは避けられない。出羽三山神社の森林技師を務めた鈴木栄作さんは「国の天然記念物であり、腐食して倒れそうになっても枯死しなければ伐採できない決まりがある。ワイヤを取り付けて参道側に倒れない処置を施すことが必要」と語っている。
2019年、国内最大級の外国人向け日本情報サイトが公表した、「外国人が訪れるべき日本の観光地ランキングトップ10」で鶴岡市が8位に入った。出羽三山信仰の精神性と神秘性などが評価された。即身仏、山伏修行、精進料理などを取り上げ「鶴岡には不思議がたくさんある」と紹介している。随神門から三神合祭殿へと続く日光を遮るような杉並木の景観も圧巻だ。
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岩手県盛岡市が今年1月、米国のニューヨーク・タイムズに、23年に行ってみるべき世界の52カ所に英国・ロンドンに次いで2番目の場所として紹介されて話題になった。今年8月の夏祭り「さんさ踊り」は例年にない人出があったという。街の歴史性や景観などが人々を引き寄せたのだろう。
出羽三山は信仰の山であると同時に貴重な観光資源。参道の石段には天狗の面、ひょうたん、山伏の姿などさまざまな彫り物がある。難所の二の坂には、弁慶が神様にささげる油を持って登る途中、急坂に疲れ果て油をこぼしてしまった「油こぼし」の異称がある。どれもが羽黒山が誇る杉並木参道があればこそ。杉並木を後世に残す最良の保全策が練られることを期待したい。