2023年(令和5年) 9月5日(火)付紙面より
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「直木賞の受賞は到達点ではなく出発点―」。鶴岡市出身の作家・藤沢周平(1927―97)の直木賞受賞50周年を記念した企画展が1日、鶴岡市馬場町の藤沢周平記念館で始まった。1973(昭和48)年に「暗殺の年輪」で第69回直木賞を受賞した直筆原稿や正賞の腕時計(副賞は賞金30万円)などを展示している。
藤沢周平は小説を書き始めた昭和30年代後半から直木賞を意識していたという。新聞社に勤めながら小説を執筆。デビュー作の「溟(くら)い海」(オール讀物新人賞受賞作)が直木賞候補になってから4度目、45歳の時に受賞した。
企画展は「直木賞に対する藤沢周平の心情を伝えよう」と同記念館(沼沢紀恵館長)が約半年かけて準備を進めてきた。作家としてデビューした当時から直木賞を受けるまでの作品や、手帳につづられた内容を紹介している。
会場では受賞作「暗殺の年輪」の題名が最初は「眼」や「暗殺」と悩んだ足跡があること。さらに直して書き上げた時のタイトルは「手」だったことを草稿を元に伝えている。パネルには松本清張、柴田錬三郎といった選考委員の選評も取り上げた。藤沢は受賞してから12年後、直木賞の選考委員に就任し11年にわたって務めた。
同記念館の担当者は「藤沢周平の気持ちが伝わるような構成にした。文学ファンにとって興味深い企画展になっていると思う。ぜひ会場に足を運んでいただければ」と話している。
10月22日には荘内神社参集殿で文藝春秋・第二文藝部の川田未穂部長を講師に招いた記念講演会が開かれる。今月7日から申し込みを受け付ける。企画展は来年3月20日まで。時間は午前9時から午後4時半。入館料は大人320円、高校生・大学生200円、中学生以下無料。問い合わせは藤沢周平記念館=電0235(29)1880=へ。