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2023年(令和5年) 11月15日(水)付紙面より

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羽黒山スギ並木の保全策に期待

 「空洞率66%」とは驚きの数値だ。羽黒山スギ並木の保全に向けた調査で、どっしりとして見えるスギの内部が傷んでいて、いつ倒れてもおかしくない危険木があることが分かった。表参道のスギ並木は、信仰の山・出羽三山を代表する歴史と観光資産。将来とも樹勢を維持し、信仰の山のシンボルでいてもらうためにも、調査を通して最善の保全策が見つかることを願いたい。

 調査は「羽黒山スギ並木保全とまちづくり協議会」などが実施した。先端技術の精密診断機器を駆使し、音波で幹内部の状態を知る。目視に比べてはるかに精度は高く、一本ごとの健康状態を把握することで、スギ並木の保全につなげていく。

     ◇       ◇

 随神門から始まる表参道スギ並木は全長約1・7キロ、2446段の石段を登って三神合祭殿に着く。参道の両側に立ち並ぶ樹齢350~400年のスギ558本は国の特別天然記念物。ただ、これまでの調査で18本が枯れていることが分かっている。五重塔近くの天然記念物「爺杉」は樹齢1000年とも言われ、昔は「婆杉」もあったが1902(明治35)年に台風で倒れてしまった。木が傷んでいたためであろう。

 スギ並木には歴史・文化・信仰が詰まっている。随神門をくぐると参道唯一の下り坂があり、「神橋」を渡って「祓川」で身を清める。「須賀の滝」は羽黒山中興の祖・天宥別当が月山から約8キロの水路を開いて水を引いたという。

 参道途中の「南谷史跡」にはかつて寺院があった。松尾芭蕉が7泊8日も滞在し、「奥の細道」で最も重要な場所だったとされ、〈ありがたや雲をかほらす南谷〉〈雲の峰幾つ崩れて月の山〉などの句を残した。今、三神合祭殿までは車に乗って容易に参拝できる。しかし、石段参道の「弁慶の油こぼしの坂」の異名がある一番の急坂、二の坂などを経て約1時間かけて登ってこそ、参拝の御利益があるというもの。息を切らして登る時、心身を落ち着かせてくれるのは、スギの木が発する「気」ではないだろうか。

     ◇       ◇

 今回の調査で、全部のスギの幹内部の密度などを測定してカルテを作る。保全には北海道大学観光学高等研究センターが協力、当面は参拝者への危険防止のため、枯れた木の伐採が検討されている。重機を使用できず、1本当たりの伐採費用は約25万円。地元の宝を守ろうと、羽黒高校の生徒がクラウドファンディング(CF)で伐採費用を募ったこともあるのは、地元愛の表れ。

 出羽三山は「自然と信仰が息づく日本遺産」。スギ並木は神域で、石段を一歩一歩を上ることで参拝のありがたさが伝わってくる。そうした風致の保存は、日本遺産を守る事にもなる。スギ並木が荒れた状態の参道の姿は考えられない。将来とも今の姿のままで守られる対策を期待したい。

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